完全な夏休みに入って数日後、やることなくて家でだらだらとした時間を過ごしていると坂上から連絡が入る。
何だろうと首を傾げつつも電話に出る。
『あ、今、ヒマ?』
数日前の怒っていた様子なんてなんのその。
いつもの飄々とした口調で話す坂上。
「ヒマですけど…」
『じゃ、今から大学出てきてよ』
「は?2時間以上かかりますよ」
『いい、いい。待ってる。じゃ、大学の近くの駅ついたらまた連絡して』
一方的に言うだけ言うとプッと通話が切れる。
切れた携帯電話を見つめていた深岬だったが、仕方ない行くかと仕度を始めて、数分後に家を出た。
坂上の言葉通りに、駅についたと連絡するとまた、一方的にそこで待っててと言われる。
その数分後に2台の見慣れた車が現れる。
一台は、坂上のものでもう一台は、小島のものだった。
きょとんとする深岬の前に車から出てきたのは、麻美と望、そして4年生の野坂と院生の福田だった。
「何の集まりですか?コレ…」
と聞かずにはいられない。
というよりも、まず驚いたのが、麻美と望の取り合わせ。
見た瞬間にできれば、遠慮したいと思ったのは致し方ないことだろう。
「花火行こう花火」
「はぁ」
「どっちの車でもいいや適当に乗って」
選んだのは、坂上の車だったが、行く前からすでに深岬の気分は重かった。
案の定、深岬を介して行われる会話。
間に挟まれた深岬は、居心地悪いことと言ったらこの上ない。
最初は、周りに悟らせまいと顔を無理やり作っていたものの、次第に疲れによって表面上に作った仮面はいとも簡単に剥がれてきてしまう。
3人で並んで土手に座って、花火が上がるのを待っているのだが、とうとう耐え切れなくなった深岬は、「トイレ」と言って2人の場から離れていく。
望と麻美の声が背後に聞こえていたが、振り返らなかった。
逃げるようにして、トイレに入り、少し時間が経ってから外に出る。
また、あの場所に戻るのかと思いながら、溜息をついて歩いていると声をかけられて振り返ると坂上が立っていた。
「悪い。無理やり誘ったみたいで」
最初にそう言われて、もうバレバレだなと悟る。
済まなさそうな顔をする坂上に対して、深岬は首を横に振る。
「坂上さんは悪くないですよ。気にしないでください。私がもっと上手くやれば良かったんですけどね…」
苦笑を浮べながら言う深岬に、坂上は、伺うような目で深岬を見ながら問う。
「もしかしてずっと悩んでたのコレ?」
「いや、全部が全部そうっていうわけじゃないんですけど…。何となく言いづらくって」
そこは、もう取り繕っても仕様がない部分だったので、正直に答える。
「俺に気遣ってたんだよな?」
「全然そういうんじゃないんですから気にしないでくださいね」
「ゴメン」
「謝らないでくださいよ…あ、それなら…また、相談乗ってくれます?」
別に深岬とて謝って欲しいわけではない。
悪いのは、坂上ではないのだから。
だが、丁度いいとばかりに声の調子をあげて深岬は、坂上との接点を増やそうとしてみる。
すぐに快諾の返事が返って来て深岬は、にっこりと嬉しそうな笑みを浮べて返した。
「いいよ」
「やった。ありがとうございます。あ、それと…雪子の件どうなりました」
ずっと気になってはいたものの、他の人間の目があって聞けなかったことだった。
一応、雪子から話したということだけは聞いていたが、結果としてどうなったかまでは聞いてなかった。
「それも大丈夫。なんか、ごめんねー。色々と迷惑かけて」
「イエイエ」
一緒にきた他のメンバーの待つ場所へと向かいながら取り留めのない話をしながら歩いていく2人だった。
少し、ほんの少しだけだが、距離が縮まったような気がして、深岬の先ほどまでのどんよりした気分などどこかへ飛んでいってしまったかのように高揚する気分に浸っていた。
花火を見終わって大学近辺まで帰ると飲みに行くはもうすでに彼らの間では、決まりきったこと。
どこに行くと話をしていた坂上たちに麻美が、望といることに耐えられなくなったのか、「帰る」と言うとさっさと帰ってしまった。
望は、最初行くつもりだったのだろうが、母親から帰ってこいと言われて帰ってしまった。
深岬はと言えば、とっくに終電の時間なんて過ぎていて、帰れるわけもなかった。
麻美のところに泊めて貰えばいいかと思っていた深岬だっただけにどうしようと考えているとそれに坂上が気づいたのか。
「大丈夫。大丈夫。朝まで飲んでりゃいいんじゃねぇか」
それは、切実に遠慮したいものがあるのだが、深岬が訴えたところで聞いてもらえるわけもない。
「麻美も望もいなくなったことだし、深岬のお疲れ様会とでもしておくか」
何の?とは、誰も聞いてこないということは、皆知っているということだろうか。
小島は、雪子のことがあるから何とも思わないだろうが、福田と野坂はどうなんだろうと2人の顔を確認してみる深岬だったが、笑いながら頷いてるだけだった。
「もしかして…」
「知ってるよ。雪子のことだろ?」
とりあえずそれだけかと思ってほっとする深岬だったが、もうひとつのこともあっさりと坂上が暴露してしまう。
「麻美と望のことも迷惑かけてたんすよ」
「何?」
「あー!坂上さん。余計なこと言わなくて!!」
「余計じゃないって。麻美と望が今、仲悪いんすよ」
「だったら、お前考えて呼べよ」
「いや、気づかなくって」
上級生の苦言に苦笑を浮べながら答える坂上。
深岬は、坂上を止めるのを断念した。
「2人とも深岬を間に挟んで険悪そのもので」
「ハハ…そりゃ最悪だわ」
「おつかれさーん」
「んじゃ、飲むか。今日は、深岬ちゃん潰しで決定」
「止めて下さい!」
楽しそうな声をあげて口々に言う上級生に必死に食い下がった深岬だったが、勝てるわけもなく――。
翌朝には、深岬の生ける屍が坂上の家に転がっていた。
ぱっと目を見開いた瞬間に、ここはどこだと周りを確認する深岬。
近くに坂上と小島が転がってるのを見つけて、思わずやってしまったと思った。
ついでに言えば、記憶も全くない。
起き上がった瞬間にガタンと物音を立ててしまい、坂上が目を覚ます。
「ごめんなさ…」
「ん?いい、いい…」
と言いながら体を起こす坂上。
「ここどこでしょう」
頭がはっきりすればするほど気持ち悪さを自覚する。
不快感を感じながらもまずは、居場所を確認とばかりに聞いた深岬に坂上が「俺ん家」と答えた。
そういえば、入るのは初めてだと俄かに頭痛のする頭で考える。
そして、横に転がっている小島を見て思う。
「記憶がないんですけど…」
「だろーね」
「あの…私、何かしましたか?」
聞きたくない気もするが、取り合えず気になる。
変なことしていないだろうかと不安を覚える。
深岬が、恐る恐る尋ねると坂上は実に楽しそうににやりと笑いながら答える。
坂上の様子からこれは、碌なことしてないと悟った深岬だが、とりあえず大人しく答えを待つ。
「んー?とりあえず、野坂さんと福田さんに泣きついて」
「はっ!?」
「俺とリョウちゃんには、キレてたなぁ」
「ごめんなさーい」
恐れ多い。
平謝りする深岬を楽しそうに見ていた坂上だったが、来客を告げるドアベルが鳴って坂上は、立ち上がると玄関へと向かう。
「悪い、リョウちゃんと後輩がいるんだよ」
「いいよ~」
ワンルームのアパートだからどうしても玄関先の声が聞こえてくる。
深岬は、気持ち悪さと格闘しながら、その会話を聞いていたのだが、坂上の言葉に返ってきたのが、可愛らしい高い声であると気づいてドキリとする。
あんまり考えたくはないが、もしかしてもしかすると…かもしれない。
ドクドクと脈打つ心臓を抱えながら、坂上とその声の持ち主が入ってくるのを待っていると2人が深岬のすぐ傍にくる。
「ほらな…すげぇだろ」
「ハハ…いつものことだけどねー。あ、コンニチワ」
「こん…にちわ」
深岬に気づいて挨拶してきたのは、小さくてふわふわの可愛い女の子だった。
立っている彼女を見上げたまま、ぽかんとした顔でまじまじと顔を拝見する深岬。
その姿は、さぞかし間抜けだったに違いない。さらに大間抜けなことに、「可愛い…」と呟いていた。
深岬の言葉にくすぐったそうに笑う彼女だったが、坂上が嬉しそうに話すのを深岬は、どこか遠くで聞いていた。
坂上の言葉を聞きながら、深岬は思った。坂上は、こういう女の子が好きなのか…と。
同時に自分とは、掛け離れているとも思った。
更新日記と小説(18禁)とたまに嘆き.
嫌いな方・興味のない方・間違っちゃった方はバックバック
2008
喧騒と熱気が漂う。
深岬もその中の1人だった。
誰が企画したのかは、深岬は興味も湧かなかったので気にしていなかったのだが、部活の1年生だけが、集まっていた。
全員とまでは、いかないものの練習に頻繁に訪れる者は、大体揃っていた。
勿論、険悪な雰囲気が続いている麻美と望もいる。
どちらも引くことを知らないから当然こうなる。
深岬の所属するバドミントン部の1年生だけが、大学周辺の居酒屋に集まっていた。
名目は、親睦を深めるため。
それなりに会話をすることは、あっても1年生だけで集まったりするということがなかったので、企画したのだ。
発案者は、一番練習に参加している望だった。
当初、麻美は嫌そうな顔をしていたのだが、全員が集まっている。
もうめっきり顔を見せなくなった者もいれば、そこそこ顔を出している者もいる。
最初は、気まずい雰囲気で、練習に高確率で参加している者同士は、話題もそれなりにあるので違和感なく溶け込むことができるのだが、練習に参加していない者たちはどうも疎外感を感じずにはいられなかった。
しかし、時間の経過とともにアルコールの助けも借りてか自然と両者の間にあった壁は取り払われていた。
時折、かかる一気のコールの中で徐々にペースも激しくなっていき、既に上級生に引けを取らない飲みっぷりになってきていることに気づいて深岬は、自然と笑いが零れてきた。
当然、急に笑い出した深岬に周りは、怪訝な目付きで深岬を見る。
「深岬ちゃんどうしたの?」
「…ん?何でもない…ハハッ」
「やっぱ変だよ」
「酔っ払いがここにいる~」
などと囃し立てられながら、また自分にコールが掛かるのであまり深く考えずに深岬はコップに入った焼酎を一気に飲み干す。
「あ、そういえば…」
と何かを思い出したような口調で望が言葉を発したので、全員の視線が彼女に向く。
「望ちゃんどうかしたの?」
「深岬ってば、花火行った後、小島さんや坂上と飲んだんでしょ?」
「うん」
「それで醜態晒したって話、坂上から聞いたよ~」
望の言葉を受けて、今度は深岬に視線が集まる。
別にこの場で話すような内容でもない気がした深岬だったが、一度出た話を途中で無理やり終わらせても場が白けるような気がして、深岬は適当に相槌を打った。
とはいってもその時の記憶は、深岬には全くないので何をしたかと問われれば覚えてないと答えるしかない。
一部分を坂上や小島が話をしていたのを聞いたのだが、最後まで聞くのは恥ずかしさのあまり途中で2人に「忘れてください…」と小さな声で訴えて断念した。
「チョー面白ぇって坂上がやたら言ってたし。小島さんは、何かにやにや笑ってたし」
「一体何したの?」
「あ…いや、記憶がなくって…何したかまでは」
「一体、どんだけ飲んだの?」
「いや、それも覚えてない…」
「マジで?」
「やっちゃったね~」
などと言われながら、深岬は誰かが新しく注いでくれた酒の入ったコップを傾ける。
内輪ネタは、聞く人によっては不快感を与えかねない。
誘ってもらえなかったと思う子もいるかもしれない…。
もし、自分がそっちの立場だったら、少なからずショックだっただろう。
深岬は、ちらりと周囲の顔色を確認した。
明らかに麻美が不快な顔付きをしていた。
話題を変えてもらうためにも、否、変わることを期待しつつトイレに行くために席を立った。
深岬がトイレから戻ってくると彼女の願いが通じたのか、話題は変わっていた。
主に中心になって話すのは、女子で。きゃあきゃあいいながら話をしている。
自分の席に座りながら、横に座っている子に「何々、何の話?」と尋ねてみる。
「あのね、小島さんと坂上さんだったらどっちがいいかだって?」
「2人だけなの?」
「うん。深岬ちゃんは?」
「…えー…」
間違いなく深岬の答えは決まっているのだが、即答することは、躊躇われた。
考える振りをしながら、正直に言うべきかと迷っていると…。
「麻美ちゃん以外、皆小島さんだって」
「え?そうなの」
殊のほか深岬の声は大きくなってしまった。
深岬からしてみれば、意外な答えだった。
ぐるりと皆の顔を確認する。
「ど…して?」
「ということは、深岬も坂上?」
麻美の言葉に頷く。
ここで、取り繕っても仕方ないし、麻美も坂上と答えているのだから怪しまれることもないだろう。
望を横目で確認すると意味ありげに笑う。
「ねぇねぇ、何で2人は、坂上がいいの?」
「え…何でって言われても…。坂上さんの方が、下の学年まで目を向けてくれてる気がするし…」
戸惑いながらも尤もらしいことを口にする深岬。
結構、冷静だったかもしれない。
「何で、望は小島さんなの?一番可愛がってもらってるじゃん」
そう尋ねたのは、麻美だった。
それが深岬には、少し剣のある声に聞こえたのは、気のせいだろうか。
「だって、あいつ浮気性だし。それに短気だしー。ちょっと付き合うのは、無理かも」
望の言い分を聞いて、深岬はまさに開いた口が塞がらないと言った状態だった。
自分が嫉妬という醜い感情を覚えるほどに可愛がってもらってるのに、その言い草はないだろうと思った。
そんな風に思うのなら、その立場を譲ってくれとさえ思う深岬だった。
深岬のそんな心情に気づかない望は、きゃっきゃっと笑いながら続ける。
「その点、小島さんって何か一途っぽいし…格好いいし」
机の下で思わず手をぎゅっと握り、軽く唇を噛む。
あれこれと並べていた望だったが、急に深岬の顔を凝視したので、一瞬顔に出ていたかと焦る深岬。
「あ、それよりも、深岬この間、坂上に何か聞かれたときになんでもないって断ったでしょ?教えてくれなかったって怒ってたよー」
くすりと笑いながら望が言う。
それは、既に花火の日に解決済みの話だ。
今更、望に言われることでもないし、あんたと麻美のことでしょ。と口に出すこともできなかった。
悩んでた時間を返せと言いたくもなる深岬だった。
会が終わり、帰り際。
上機嫌で2次会と言っている者達も居たが、深岬はとてもじゃないがそんな気にはなれなかった。
真っ直ぐ駅に向かって歩く。
集団に小さく「お疲れ」と声を掛けて背を向けた深岬に気づいたのは、望で。
「深岬。帰るの?」
という問いに、何とか引き攣った笑いで頷くことで精一杯だった。
暗闇が上手く深岬の顔を誤魔化してくれたようで、望もさして不審がる様子もなく、また、引き止められることもなく帰ることができた。
ひどく疲れている自分がいる。
電車に揺られながら、アルコールの所為もあってかうとうととしているとカバンの中に閉まってある携帯電話のバイブがぶるぶると震えだす。
目を擦りながら携帯の画面を確認すると一件のメールが届いていた。
坂上からだった。
それは、気づかれしてないかということを問うメールで…。
自分のことを気にしてくれているということに嬉しさを感じて、それまで少し沈んでいた気持ちが一気に浮上していくのを深岬は感じずには、いられなかった。
深岬もその中の1人だった。
誰が企画したのかは、深岬は興味も湧かなかったので気にしていなかったのだが、部活の1年生だけが、集まっていた。
全員とまでは、いかないものの練習に頻繁に訪れる者は、大体揃っていた。
勿論、険悪な雰囲気が続いている麻美と望もいる。
どちらも引くことを知らないから当然こうなる。
深岬の所属するバドミントン部の1年生だけが、大学周辺の居酒屋に集まっていた。
名目は、親睦を深めるため。
それなりに会話をすることは、あっても1年生だけで集まったりするということがなかったので、企画したのだ。
発案者は、一番練習に参加している望だった。
当初、麻美は嫌そうな顔をしていたのだが、全員が集まっている。
もうめっきり顔を見せなくなった者もいれば、そこそこ顔を出している者もいる。
最初は、気まずい雰囲気で、練習に高確率で参加している者同士は、話題もそれなりにあるので違和感なく溶け込むことができるのだが、練習に参加していない者たちはどうも疎外感を感じずにはいられなかった。
しかし、時間の経過とともにアルコールの助けも借りてか自然と両者の間にあった壁は取り払われていた。
時折、かかる一気のコールの中で徐々にペースも激しくなっていき、既に上級生に引けを取らない飲みっぷりになってきていることに気づいて深岬は、自然と笑いが零れてきた。
当然、急に笑い出した深岬に周りは、怪訝な目付きで深岬を見る。
「深岬ちゃんどうしたの?」
「…ん?何でもない…ハハッ」
「やっぱ変だよ」
「酔っ払いがここにいる~」
などと囃し立てられながら、また自分にコールが掛かるのであまり深く考えずに深岬はコップに入った焼酎を一気に飲み干す。
「あ、そういえば…」
と何かを思い出したような口調で望が言葉を発したので、全員の視線が彼女に向く。
「望ちゃんどうかしたの?」
「深岬ってば、花火行った後、小島さんや坂上と飲んだんでしょ?」
「うん」
「それで醜態晒したって話、坂上から聞いたよ~」
望の言葉を受けて、今度は深岬に視線が集まる。
別にこの場で話すような内容でもない気がした深岬だったが、一度出た話を途中で無理やり終わらせても場が白けるような気がして、深岬は適当に相槌を打った。
とはいってもその時の記憶は、深岬には全くないので何をしたかと問われれば覚えてないと答えるしかない。
一部分を坂上や小島が話をしていたのを聞いたのだが、最後まで聞くのは恥ずかしさのあまり途中で2人に「忘れてください…」と小さな声で訴えて断念した。
「チョー面白ぇって坂上がやたら言ってたし。小島さんは、何かにやにや笑ってたし」
「一体何したの?」
「あ…いや、記憶がなくって…何したかまでは」
「一体、どんだけ飲んだの?」
「いや、それも覚えてない…」
「マジで?」
「やっちゃったね~」
などと言われながら、深岬は誰かが新しく注いでくれた酒の入ったコップを傾ける。
内輪ネタは、聞く人によっては不快感を与えかねない。
誘ってもらえなかったと思う子もいるかもしれない…。
もし、自分がそっちの立場だったら、少なからずショックだっただろう。
深岬は、ちらりと周囲の顔色を確認した。
明らかに麻美が不快な顔付きをしていた。
話題を変えてもらうためにも、否、変わることを期待しつつトイレに行くために席を立った。
深岬がトイレから戻ってくると彼女の願いが通じたのか、話題は変わっていた。
主に中心になって話すのは、女子で。きゃあきゃあいいながら話をしている。
自分の席に座りながら、横に座っている子に「何々、何の話?」と尋ねてみる。
「あのね、小島さんと坂上さんだったらどっちがいいかだって?」
「2人だけなの?」
「うん。深岬ちゃんは?」
「…えー…」
間違いなく深岬の答えは決まっているのだが、即答することは、躊躇われた。
考える振りをしながら、正直に言うべきかと迷っていると…。
「麻美ちゃん以外、皆小島さんだって」
「え?そうなの」
殊のほか深岬の声は大きくなってしまった。
深岬からしてみれば、意外な答えだった。
ぐるりと皆の顔を確認する。
「ど…して?」
「ということは、深岬も坂上?」
麻美の言葉に頷く。
ここで、取り繕っても仕方ないし、麻美も坂上と答えているのだから怪しまれることもないだろう。
望を横目で確認すると意味ありげに笑う。
「ねぇねぇ、何で2人は、坂上がいいの?」
「え…何でって言われても…。坂上さんの方が、下の学年まで目を向けてくれてる気がするし…」
戸惑いながらも尤もらしいことを口にする深岬。
結構、冷静だったかもしれない。
「何で、望は小島さんなの?一番可愛がってもらってるじゃん」
そう尋ねたのは、麻美だった。
それが深岬には、少し剣のある声に聞こえたのは、気のせいだろうか。
「だって、あいつ浮気性だし。それに短気だしー。ちょっと付き合うのは、無理かも」
望の言い分を聞いて、深岬はまさに開いた口が塞がらないと言った状態だった。
自分が嫉妬という醜い感情を覚えるほどに可愛がってもらってるのに、その言い草はないだろうと思った。
そんな風に思うのなら、その立場を譲ってくれとさえ思う深岬だった。
深岬のそんな心情に気づかない望は、きゃっきゃっと笑いながら続ける。
「その点、小島さんって何か一途っぽいし…格好いいし」
机の下で思わず手をぎゅっと握り、軽く唇を噛む。
あれこれと並べていた望だったが、急に深岬の顔を凝視したので、一瞬顔に出ていたかと焦る深岬。
「あ、それよりも、深岬この間、坂上に何か聞かれたときになんでもないって断ったでしょ?教えてくれなかったって怒ってたよー」
くすりと笑いながら望が言う。
それは、既に花火の日に解決済みの話だ。
今更、望に言われることでもないし、あんたと麻美のことでしょ。と口に出すこともできなかった。
悩んでた時間を返せと言いたくもなる深岬だった。
会が終わり、帰り際。
上機嫌で2次会と言っている者達も居たが、深岬はとてもじゃないがそんな気にはなれなかった。
真っ直ぐ駅に向かって歩く。
集団に小さく「お疲れ」と声を掛けて背を向けた深岬に気づいたのは、望で。
「深岬。帰るの?」
という問いに、何とか引き攣った笑いで頷くことで精一杯だった。
暗闇が上手く深岬の顔を誤魔化してくれたようで、望もさして不審がる様子もなく、また、引き止められることもなく帰ることができた。
ひどく疲れている自分がいる。
電車に揺られながら、アルコールの所為もあってかうとうととしているとカバンの中に閉まってある携帯電話のバイブがぶるぶると震えだす。
目を擦りながら携帯の画面を確認すると一件のメールが届いていた。
坂上からだった。
それは、気づかれしてないかということを問うメールで…。
自分のことを気にしてくれているということに嬉しさを感じて、それまで少し沈んでいた気持ちが一気に浮上していくのを深岬は感じずには、いられなかった。
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2008
ついに身体にガタがきはじめた管理人です。
まずは、腹からです。
一時間仮眠して風呂入ろうとしたらめちゃめちゃ腹が痛くなってくるという。
このお陰で予定が2時間ばかし遅れましたよ…。
そして、何故かトイレで足を攣ったという…奇特な人です。
洋式便座から立った瞬間にぴきっと―。どんだけ運動不足やねんという話ですよ。
何故か歯も痛い。
結局、修論はできずに中途半端なまま先生の手元に行きました。
別に怒ってはらへんかったし。いいやろ…。
今から頑張る。
今後の更新予定ですが…。
後2日くらい(?)SalvationをUPした後、Vizardに戻ります。
Vizardは2部は、全17話になります。
読み返して、そーいえばこんな話書いたなと思い出している次第です。2部は、ちょっと急ぎ足で話は進んでいってますのでいつもよりは展開が早く感じるかもしれません。
その後、2月10日までSalvationをUPしていきます。
11日からは、サイト正常化ということで、3月終わりの引越しまでの間は勝負か旅か檻かまだ考え中ですがどれかUPしていきますので、気長におまちください。あ、twinsもあったわ…。
四神も書きたい講座も書きたいVizradも終わらせたい裏の話2つも書きたい。Salvationとliarliarも書きたい。
檻と旅はまぁしばらく置いておいてもええかな…。
卒業旅行も行きたいのにねぇ。まぁ、そっちは雑務で無理だろうということで、卒業要件が揃ったらがしがし話を書きたいと思います。
後一月の辛抱だ。
まずは、腹からです。
一時間仮眠して風呂入ろうとしたらめちゃめちゃ腹が痛くなってくるという。
このお陰で予定が2時間ばかし遅れましたよ…。
そして、何故かトイレで足を攣ったという…奇特な人です。
洋式便座から立った瞬間にぴきっと―。どんだけ運動不足やねんという話ですよ。
何故か歯も痛い。
結局、修論はできずに中途半端なまま先生の手元に行きました。
別に怒ってはらへんかったし。いいやろ…。
今から頑張る。
今後の更新予定ですが…。
後2日くらい(?)SalvationをUPした後、Vizardに戻ります。
Vizardは2部は、全17話になります。
読み返して、そーいえばこんな話書いたなと思い出している次第です。2部は、ちょっと急ぎ足で話は進んでいってますのでいつもよりは展開が早く感じるかもしれません。
その後、2月10日までSalvationをUPしていきます。
11日からは、サイト正常化ということで、3月終わりの引越しまでの間は勝負か旅か檻かまだ考え中ですがどれかUPしていきますので、気長におまちください。あ、twinsもあったわ…。
四神も書きたい講座も書きたいVizradも終わらせたい裏の話2つも書きたい。Salvationとliarliarも書きたい。
檻と旅はまぁしばらく置いておいてもええかな…。
卒業旅行も行きたいのにねぇ。まぁ、そっちは雑務で無理だろうということで、卒業要件が揃ったらがしがし話を書きたいと思います。
後一月の辛抱だ。
2008
「最後の難関は、雪子だな」
「最近、あからさまだよね…」
「あれじゃ、小島が可愛そうだよ…」
「慶子も完全なとばっちりだよね」
「ま、でも…しばらく休み入るから放っておけばいんじゃね?」
聞こえ始めた声。
完全に雪子が悪者になっているように聞こえるそれに深岬は、我慢ならなかった。
「深岬ちゃん。聞いた?」
夏休み最後の練習を終えて帰ろうとしていた深岬の元に絵里が寄ってくる。
「何を?」
「雪子さんがね…」
雪子の名前が出た時点で、またかと思った深岬だったが、その後に続く絵里の言葉を聞いて、深岬は自分の耳を疑った。
「小島さんに、慶子さんと付き合う気ならもう遊んだりはしないよ…って、部活の運営には差し支えないようにするけど、それ以外は口も利きたくないって」
「は?何それ。本当に?」
「本当みたいだけど?望が、小島さん本人から聞いたって言ってたし」
それだけ聞くと深岬の耳には、それ以上の絵里の言葉は入ってこなかった。
信じられないというのが、第一の感想と次に、お前は子供かという罵倒。
そんなことしたところで何の意味も持たないというのは、雪子とてわかっているだろうに…。
余計苦しむのは、雪子自身なのに。
着替え終わって荷物を片付けながら、そんなことをずっと考えていた。
荷物を持って挨拶をして更衣室を出て行く。
向かった先は、まだ体育館に残っている雪子のところだった。
「あ、深岬ちゃん…明後日ね…」
と途中すれ違った望が何か言っていたのだが、ほとんど聞いていなかった。
上級生と何やら楽しそうに話をしていた雪子に近づくと、雪子の体を引っ張る。
「ちょっと、雪子借りますね」
「あ…ああ」
深岬の拒否を許さない態度に目を剥いていた上級生達だが、頷く。
それを確認することなく深岬は、雪子の体を引っ張って体育館の外へ連れ出す。
「どうしたんだ?」
途中ですれ違った坂上も驚いたような表情で尋ねてくるが、それにも返事をしなかった。
「み、深岬どうしたのよ」
「あんたね…そりゃ卑怯でしょうが!」
「は?」
突然、怒り出した深岬に雪子は状況が掴めなくてきょとんとした顔で、深岬の顔を見返すだけ。
「小島さんに…慶子さんと付き合うなら絶交って言ったんでしょ」
「…誰から聞いたの?」
事を理解した雪子が眉間に皺を寄せて深岬に聞き返す。
「誰でもいいじゃない。皆知ってると思うよ」
「…絶交とまでは、言ってないわよ…」
「どっちも同じでしょ。何考えてんの?卑怯じゃない」
「…分かってるよ…それは、分かってるんだけど……素直に認めてあげらんないんだもん」
弱弱しく言葉を口にする雪子だが、深岬はそんな雪子に対して完全に呆れたような顔をしてみせる。
「なぁ、今の話、マジかよ?」
不機嫌さを隠しもしない低い声が聞こえてきて、雪子だけでなく、深岬も体を竦めて驚きを表現した。
恐る恐る顔を背後に向けると顔を顰めて雪子を睨みつけている坂上が立っている。
すれ違った深岬と雪子の様子を見て、不審に思って追いかけてきていた。
確りと深岬と雪子の会話も聞いてしまっていた。
近づいてくる坂上の迫力に思わず道を開ける深岬。
「お前、部のことそっちのけでやっていいことと悪いことがあんだろっ!ざけんなよっ。お前ら2人の問題に周りを巻き込むんじゃねぇよ」
「部活には迷惑かけないようにするつもりだったもん」
「そういう問題じゃねぇだろ!」
大きな怒鳴り声は、下手をすれば遠くの人間にも聞こえそうな声だった。
人に見つかったら危ないと思った深岬は、坂上を宥めにかかる。
「さ、坂上さん。落ち着いて…。雪子も本心じゃないと思うし…」
「だったら、尚更タチ悪ぃよ」
「寂しかったんだって、雪子は、小島さんのこと好きだったんだし、好きな人と友達同時に取られちゃったみたいに感じたんだって…きちんと撤回させるから」
「……お前、最悪だな。好きな男の恋愛ジャマして楽しいかよ」
深岬の言葉を聞き入れてくれたのか、坂上は怒りは抑えているが、殊の外冷たい声で雪子に向かってそう言うと大袈裟な動きで深岬と雪子の前から去っていく。
坂上がいなくなるのと同時に雪子がずるずるとしゃがみこむ。
慌てて深岬が近寄ると小さくしゃくりあげる声が聞こえてくる。
「分かってるんだもん…自分のやってることが、リョウちゃんに…」
「分かってるならやっぱ取り消した方がいいよ。友達まで無くしちゃうよ」
「もう…言っちゃった後だもん…無理だよ……。坂上も呆れてたじゃん…リョウちゃんだけじゃなくて、坂上まで…」
「今なら間に合うと思うよ。そういうことは、間を空ければ空けるほど、関係の修復が難しくなるでしょ?小島さんだって、雪子が離れていっちゃうのは寂しいと思うし」
「どうやって…接したらいいかわかんないよ…」
「じゃあ、素直に言えばいいじゃん。きっと分かってくれるよ。だって、小島さんも坂上さんも雪子の友達でしょ?」
下を向いたままじっと深岬の言葉に耳を傾けていた雪子だったが、しばらく微動だにしなかったものの最後に小さく頷いた。
それを見て、深岬はほっとした。
泣き止んだ雪子を連れて戻るともうほとんど人は、残ってなかった。
着替えをさせるために雪子を更衣室の中に放り込むと待っていたのだろう坂上が声を掛けてきた。
「…どうなった」
まだ、少し不機嫌な声だったが、それは仕方ないだろう。
「何とかなると思います…。坂上さんにの雪子から話あるかもしれないので、きちんと聞いてあげてくださいね。あまり、怒らないであげて欲しいんですけど…」
「努力はしてみる……」
ぶすっと言った坂上に苦笑を浮べた。
その日の夜、深岬の携帯に雪子からのメールが届いた。
内容は、話した――という簡潔なものだったが、深岬は敢えて聞かなかった。
「最近、あからさまだよね…」
「あれじゃ、小島が可愛そうだよ…」
「慶子も完全なとばっちりだよね」
「ま、でも…しばらく休み入るから放っておけばいんじゃね?」
聞こえ始めた声。
完全に雪子が悪者になっているように聞こえるそれに深岬は、我慢ならなかった。
「深岬ちゃん。聞いた?」
夏休み最後の練習を終えて帰ろうとしていた深岬の元に絵里が寄ってくる。
「何を?」
「雪子さんがね…」
雪子の名前が出た時点で、またかと思った深岬だったが、その後に続く絵里の言葉を聞いて、深岬は自分の耳を疑った。
「小島さんに、慶子さんと付き合う気ならもう遊んだりはしないよ…って、部活の運営には差し支えないようにするけど、それ以外は口も利きたくないって」
「は?何それ。本当に?」
「本当みたいだけど?望が、小島さん本人から聞いたって言ってたし」
それだけ聞くと深岬の耳には、それ以上の絵里の言葉は入ってこなかった。
信じられないというのが、第一の感想と次に、お前は子供かという罵倒。
そんなことしたところで何の意味も持たないというのは、雪子とてわかっているだろうに…。
余計苦しむのは、雪子自身なのに。
着替え終わって荷物を片付けながら、そんなことをずっと考えていた。
荷物を持って挨拶をして更衣室を出て行く。
向かった先は、まだ体育館に残っている雪子のところだった。
「あ、深岬ちゃん…明後日ね…」
と途中すれ違った望が何か言っていたのだが、ほとんど聞いていなかった。
上級生と何やら楽しそうに話をしていた雪子に近づくと、雪子の体を引っ張る。
「ちょっと、雪子借りますね」
「あ…ああ」
深岬の拒否を許さない態度に目を剥いていた上級生達だが、頷く。
それを確認することなく深岬は、雪子の体を引っ張って体育館の外へ連れ出す。
「どうしたんだ?」
途中ですれ違った坂上も驚いたような表情で尋ねてくるが、それにも返事をしなかった。
「み、深岬どうしたのよ」
「あんたね…そりゃ卑怯でしょうが!」
「は?」
突然、怒り出した深岬に雪子は状況が掴めなくてきょとんとした顔で、深岬の顔を見返すだけ。
「小島さんに…慶子さんと付き合うなら絶交って言ったんでしょ」
「…誰から聞いたの?」
事を理解した雪子が眉間に皺を寄せて深岬に聞き返す。
「誰でもいいじゃない。皆知ってると思うよ」
「…絶交とまでは、言ってないわよ…」
「どっちも同じでしょ。何考えてんの?卑怯じゃない」
「…分かってるよ…それは、分かってるんだけど……素直に認めてあげらんないんだもん」
弱弱しく言葉を口にする雪子だが、深岬はそんな雪子に対して完全に呆れたような顔をしてみせる。
「なぁ、今の話、マジかよ?」
不機嫌さを隠しもしない低い声が聞こえてきて、雪子だけでなく、深岬も体を竦めて驚きを表現した。
恐る恐る顔を背後に向けると顔を顰めて雪子を睨みつけている坂上が立っている。
すれ違った深岬と雪子の様子を見て、不審に思って追いかけてきていた。
確りと深岬と雪子の会話も聞いてしまっていた。
近づいてくる坂上の迫力に思わず道を開ける深岬。
「お前、部のことそっちのけでやっていいことと悪いことがあんだろっ!ざけんなよっ。お前ら2人の問題に周りを巻き込むんじゃねぇよ」
「部活には迷惑かけないようにするつもりだったもん」
「そういう問題じゃねぇだろ!」
大きな怒鳴り声は、下手をすれば遠くの人間にも聞こえそうな声だった。
人に見つかったら危ないと思った深岬は、坂上を宥めにかかる。
「さ、坂上さん。落ち着いて…。雪子も本心じゃないと思うし…」
「だったら、尚更タチ悪ぃよ」
「寂しかったんだって、雪子は、小島さんのこと好きだったんだし、好きな人と友達同時に取られちゃったみたいに感じたんだって…きちんと撤回させるから」
「……お前、最悪だな。好きな男の恋愛ジャマして楽しいかよ」
深岬の言葉を聞き入れてくれたのか、坂上は怒りは抑えているが、殊の外冷たい声で雪子に向かってそう言うと大袈裟な動きで深岬と雪子の前から去っていく。
坂上がいなくなるのと同時に雪子がずるずるとしゃがみこむ。
慌てて深岬が近寄ると小さくしゃくりあげる声が聞こえてくる。
「分かってるんだもん…自分のやってることが、リョウちゃんに…」
「分かってるならやっぱ取り消した方がいいよ。友達まで無くしちゃうよ」
「もう…言っちゃった後だもん…無理だよ……。坂上も呆れてたじゃん…リョウちゃんだけじゃなくて、坂上まで…」
「今なら間に合うと思うよ。そういうことは、間を空ければ空けるほど、関係の修復が難しくなるでしょ?小島さんだって、雪子が離れていっちゃうのは寂しいと思うし」
「どうやって…接したらいいかわかんないよ…」
「じゃあ、素直に言えばいいじゃん。きっと分かってくれるよ。だって、小島さんも坂上さんも雪子の友達でしょ?」
下を向いたままじっと深岬の言葉に耳を傾けていた雪子だったが、しばらく微動だにしなかったものの最後に小さく頷いた。
それを見て、深岬はほっとした。
泣き止んだ雪子を連れて戻るともうほとんど人は、残ってなかった。
着替えをさせるために雪子を更衣室の中に放り込むと待っていたのだろう坂上が声を掛けてきた。
「…どうなった」
まだ、少し不機嫌な声だったが、それは仕方ないだろう。
「何とかなると思います…。坂上さんにの雪子から話あるかもしれないので、きちんと聞いてあげてくださいね。あまり、怒らないであげて欲しいんですけど…」
「努力はしてみる……」
ぶすっと言った坂上に苦笑を浮べた。
その日の夜、深岬の携帯に雪子からのメールが届いた。
内容は、話した――という簡潔なものだったが、深岬は敢えて聞かなかった。
2008
一次締め切りが今日の夜。
無理!!終わらない!
書けない。
何がって修論が。
実験がまとまらない。
いや、まともに論文書いた覚えがないから書けないッス。
卒論チョーテキトーだったからな。
先生もテキトーでいいよって感じだったし…。
この時間で話を書いていたらどれだけ書けただろうかと考えてる私の頭は腐ってる。
っつーか正直きもい…。
途中で、檻の2部を読み返してる場合じゃねぇっつーの。
アブストは書いたことあっても真面目に何十ページもある論文書いたことねぇよ…。
難しい。
現実逃避してる場合じゃないってばぁ!!
きっと真っ赤かになって帰ってくるに違いない。
ああ、億劫。
とりあえず後半日粘ってみます。
眠たいよー。