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更新日記と小説(18禁)とたまに嘆き. 嫌いな方・興味のない方・間違っちゃった方はバックバック

2026

0211
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2008

0509

Vizard (40)




言葉はなかった。
ただ、熱に浮かされたような浮遊感と互いの熱さだけがあった。
忘れないために、肌に覚え込ませるために触れ合う。
我武者羅に――

望んだことなのに――
何故、こんなにも苦しいのか…。

後悔はしないと決めて、来たのに――
もう既に後悔し始めている。
こんなことをしても、彼は自分のものにはならないと分かっているのに…。

触れ合ってしまえば、離せなくなる気はしていた。
それでも、彼女の手を振り切ることができなかったのは何より、己自身だというのに――
彼女は言った。
そんな顔しなくていいと…。
自分は聞いた。
後悔しないか。と。
聞いておきながら、後悔しているのは自分の方だった。
しかし、既に、彼女を振り切ることもできない。
こんな行為に意味を見出したことなどなかった。
ただ、快楽を求めるだけの行為だったはずがこんなにも苦しいものなのだろうかと。
気を抜けば、彼女を見失いそうになるのを必死に繋ぎとめ、触れる。

一度湧き上がった情欲は、若い2人には、毒ともいえる代物だった。

ただ、一心不乱に互いを求める。
これでもかというほど、肌と肌を密着させて――

求め。
乱れ。
狂う。

この時間だけは、残る。
そう思いながら――



まるで、所有者の印を残すかのように強く柔肌に歯を立てる。

「ああっ!…」

耳をくすぐる高い悲鳴にさらに気分が高揚する。
どちらのものともつかない体液で、2人の身体はどろどろ。
汗の匂い、互いの体臭、何もかも忘れずに記憶に残すかのように、確認する。

あますことなく触れられ、舌を這わされ、全身が性感帯になったかのように感じる。

「…もっと…」

強請る声は小さく、でも強く。
強請られるままに応じる手。それが、彼自身も望むことだからだ…。
恥じらいなど捨て去り、本能のままに求め合う獣の姿があった。

場馴れしたような少年の戸惑うことのない手に、嫉妬を覚える。
誰にも許していないであろう女の肌に高揚感を覚える。



熱に浮かされた状態に陥っていた綾だったが、今まで自分以外が決して触れることの無かった部位に一哉の指が触れ、入りこもうとしたときには流石に緊張し、身を固くした。
しかし、自分が望んだことなのだ。
あの望まぬ男に触れられる前に、どうか――
頭で分かっていてもそう簡単に身体の緊張がほぐれるわけもなく。
ただ、身を固くする綾に、一哉は深いキスによって身体の力が抜けるのを待った。

指を挿し入れ、熱く熱を持った内壁を擦りあげる。
最初は、異物感しかなかったはずなのに、次第にむずむずとしたような感覚を脳髄に伝えてくる。
自然と腰が揺らめく。
それを知ってか知らずか、指が追加される。
初めは、そのきつさに眉間に皺を寄せた一哉だったが、次第に綻んでくるそこに満足したように笑む。
不用意に傷つけないためにも必要だ。
自分がしてやれるせめてもの優しさがその程度のことしかなかった。

それでも、指に代わり、一哉自身は流石にきつかったようで、綾は顔を痛みに顰めていた。
しかし、彼女は満足そうに笑うのだ。
それが余計に切なくさせる。
一哉は、それを振り払うかのように腰を動かした。

最初は、苦悶の声が漏れていた筈なのに、それはいつしか変わっていた。
そのことが唯一の救いだろう。



笑って今日のことを話せる日がくるだろうか――
どちらも、若かったのだと。





彼女が眠るのを待って、一哉は身体を起こした。
そっと起こさないように彼女から離れて、ベッドを降りる。
床に散らばった衣類を集め、手早く身に纏う。眠った彼女を起こさないようになるべく音は立てないように――
きっちりと服を着た後は、彼女の眠るベッドの脇に立ち、暗闇の中じっと佇み、寝顔を見つめていた。
ぎゅっと拳を握りしめて―。
決して、自分のものにはならない彼女を見つめた。
しばらく、そのままでいた一哉だったが、床に跪くと腰を折り、彼女へと己の顔を近づける。
ゆっくりと近づけ、寝息をたてる薄く開いた口に唇を触れ合わせるだけの口付けを落とした。

だが、すぐに離れると後は、彼女を視界から追い出して、部屋に掛けられているコートを掴むと静かに部屋を出る。

重ね合わせた唇が離れるときに、言葉を一つ残して――

「好きだ…。愛してる」

この先、誰にも口にしないであろう言葉を唇の動きだけで落とした。
その言葉を何より望んだ彼女は、聞くことはなかった。





目が覚めたときには、そこに彼の姿は無かった。消えていた。
自分がいつも寝ているベッドとは違い、固く簡素なベッドの上。
手を滑らせてもう既に冷たくなったシーツの上を探る。

そこには、あったはずの人の影など微塵も残していなかった。
窓から差し込む朝の光はいつもと変わらなくて――
変わらないことが凄く憎らしい。
自分たちは、昨日と同じではいられなくなったというのに――
何故、自分だけが…。

ゆっくりと身体を起こす。

「いたっ…」

その拍子に走る身体の痛みに、顔を顰める。身体もどことなくだるい。
それが、昨夜にここで行われた行為の証だった。
掛けられていたシーツがするりと滑り落ちる。
それまで隠されていた素肌が露になる。
冬の朝は寒い。それは、いくら佇まいが立派な屋敷とて例外でない。

ぶるりと寒さを訴えて身体が震える。
しかし、やがてその震えは、慢性的なものへと変化した。

「……っく…ふ…」
身体に負担を掛けないように緩慢な動作で膝を立て、その間に顔を隠すように埋める。
声が漏れないように食いしばっているはずの歯は、いとも簡単に離れていき、喉の奥からはひっきりなしに嗚咽が零れる。
それは、次第に大きくなっていき――

「…あああ…ぁぁああああ」

幼い子供が迷子になって、母親を呼ぶように、大きな声をあげてただ、ひたすらに泣いた。
溢れてくる涙を拭うことも忘れて。
肌を突き刺すような寒さも忘れて。

ただ、名を口にすることはなかった。
しかし、心の中ではひたすらにここにはいない人物の名をひっきりなしに呼んだ。

どうしてここにいないの―。と。

何故に、自分は人並みの幸せすら望んではいけないのか。と。

誰も助けてくれないと分かっていながら、助けを求めた。





冬の寒い日の朝のことだった。
誰も知らない秘め事。





「おはようございます。お嬢様」

憎らしいほど平然と涼しい顔で男は、口にするのだ。

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