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更新日記と小説(18禁)とたまに嘆き. 嫌いな方・興味のない方・間違っちゃった方はバックバック

2026

0212
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2008

0428

Vizard (29)


繰り返される己を非難する言葉。視線。
己の非を他人に転嫁するその腐った性根に―。
頭が焼ききれそうだった。

作られた拳に力が篭る。
眦がつりあがる。

一哉の表情の変化にも責任をなすりつけようとする彼らは気づかない。

自分の非を人になすりつける前に、やることがあるだろうに。
綾はどうなるのだ。
今、危険に身を晒されている彼女はどうなるというのだ。

今にも襟首掴み挙げて殴り飛ばしたい気持ちを一哉は、必死に抑えていた。
しかし、その一哉の忍耐も長くは続かなかった。

彼らは、一哉のことを身内とは思ってもいないかもしれないが、父親を除いて身内が身内を口汚く罵る光景は見て見苦しいとでも思ったのだろう。

「やめなさい」

主である水原が苦々しい表情をしながら口を開いたことでそれは一時収まった。
その苦言に主の不興を買ったのではないかと一様に青ざめさせた彼らは、またもや縋りつくような勢いで主に詰め寄る。
中心となって口を開いていたのは、一番責任を負うべき宗司の言い訳だったが…。
一哉は、その言い訳を聞きながら、視界が赤く染まっていくのを感じた。
怒りで自然と体が震えてくる。
きりきりと眦はつりあがる。
一哉はとてもじゃないが頭を下げる気になどなれず、吊り上った目で頭を下げる宗司を睨みつけていた。
今にも人を殺しそうな視線で―。

しかし、すぐに後頭部をガッと強い力で押さえつけられ、強制的に頭を下げさせられた。
横目で確認するとスーツの色から長兄だと判断できた。
押さえつける力に逆らって頭をあげようとするとさらに強い力で押さえつけられる。
強い力に、ぎりっと唇を噛み、拳に力を入れる。
それに抗う一哉の耳に宗司の言い訳が聞こえてくる。

「私は、既に暴漢に襲われていましたので…。ですから、私にはお嬢様をお守りしたくてもできなかったんです。分かっていれば、対処はできました。誰も信号で停止している車を襲うなんて考えもできませんよ。そこを襲われたのですから…いくら、私でも」

みっともないとは思わないのだろうか。
どこまでも自分は悪くないという主張を続ける宗司の言葉を聞かされた一哉は、とうとう我慢ができなくなった。
自分の頭を押さえていた長兄である弥一の腕を掴むと自分の頭からその手を退けた。
義弟の行動に弥一は、驚いたような表情で、一哉に掴まれた腕を見つめた。
常日ごろから殴られる時は、殴られ、反抗することもなかった義弟の初めての反抗ともいえる行動。
驚かないわけがない。
一哉は、驚いている弥一など全く気にすることなく、その掴んだ手を軸にして、まだ成長過程の自分の体よりも完全に成長した弥一の自分よりも大きな体をいとも簡単に床に払い落として沈めた。
体が床に叩きつけられる衝撃に、弥一の口からは野太い悲鳴があがる。
その声に驚き、他の者が顔をそちらに向ける前に一哉は、宗司に詰め寄る。
いつもは、大人しくやられているだけの義弟の行動に驚きを隠せずただ自分の前にきた一哉を見開いた目で見返すだけの宗司。
背後で、驚きの声をあげている他の人間の声が聞こえてきたが、そんなもの一切気にもとめなかった。
驚いている宗司に、一哉の手を防げるわけもなかった。
一哉は、そんな宗司に構うことなく、怒りのまま乱暴に襟首を掴み上げ、強く握った拳を力のまま顔面に叩き付けた。
衝撃とともに訪れる熱。
宗司だけでなく人を殴るという行為は、己にも痛みが返って来る。
宗司の顔を殴りつけた一哉の拳にも熱が反射する。
ふわりと体が浮いたかと思うと次の瞬間には、壁に強かに体を打ちつけ、背中に痛烈な痛みが走る。
口からは、苦悶の声が漏れる。
甲高い悲鳴が耳をつんざく。

「ガキみたいにみっともない言い訳してんじゃねぇよ」

冷え冷えとした声音だった。
自分へと視線が集まっているのは、分かっていた。
じんじんとした痛みを訴えてくる手を軽く振り払いながら、呻き声をあげる兄を上から怒りの表情を露にして声を張り上げた。

「っざけんなよ。自分の仕事もろくに全うせずにでかい面すんじゃねぇ!この役立たず。てめぇは死んでも守れよ。何が自分は悪くないだ。ふざけんのも大概にしろっ!」

捨て台詞を宗司に向かって吐き捨てると背を向けて部屋を出た。
自分を呼び止める煩い声にも振り返らなかった。
ただ、一哉が部屋を出るために部屋のドアを開けるとそこには、血相を変えた堺が立っていた。
急に開いたドアに驚いているようだったが、すぐに一哉を押しのけるようにして部屋に入る。

「お義父さん!ですからあれほど気をつけてくださいと申し上げていたじゃないですか!石原がいつ行動に出るかわからないと事前に…」

堺の口から出てきた人物の名を一哉の耳が確りと拾いあげた。
その後の水原の濁った声も―。
なるほどと思いながら一歩足を踏み出す。

「一哉!貴様どこへ行く」

聞こえてきたのは、3人いる兄の中で、唯一、この場で一哉に何も危害を加えられていない御津だった。
ちっと舌打しながらも顔だけで振り返ると物凄い形相で自分を見てくる御津の目とぶつかる。

「うるせぇよ。デブ。文句があるなら、いっぱしに仕事ができるようになってから言えよ。口だけマザコン野郎」

辛らつな言葉に返す言葉も見つからない御津。
そんな兄を鼻で笑うと一哉は今度こそ足を踏み出した。

一哉の“草壁”という家の中で彼の置かれた環境というものを考えるのならば、今の発言・行動は決して良いものではない。寧ろ最悪だ。
しかし、そんなもの考えられなくなるくらい理性が働いていなかった。
最早、消失していたといっても良かった。



冷静さというものは、既にその報せを聞いていたときから消えていたのかもしれない。
自分が傍にいないときに起こったことだから余計に悔やまれてならないのだ。
自分が傍にいたのなら、決してこんな目にはあわせなかった。

 

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