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更新日記と小説(18禁)とたまに嘆き. 嫌いな方・興味のない方・間違っちゃった方はバックバック

2026

0320
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2008

0419
立ち直るまでに時間がかかった深岬だったが、一度エンジンがかかってしまえばそれまでの恥などどこへやら。
場の空気にものまれた所為もあるかもしれない。
場の空気に飲まれはしたものの、酒には飲まれてはいない。
元々が強いだけに相当の量を飲まなければ中々、簡単には潰れることはない。

何かにつけて乾杯を強要する集団から抜け出して隅っこで水を飲んでいると横に同じように腰を落ち着けてくるのは、麻美だった。
ほんのりと赤い顔をしているが、麻美も深岬に負けず劣らず酒には強い。
こちらも酔っ払ったら大変なことになるという意味では、深岬とさほど大差はないだろうが―。

「今日、彼氏は?」

誰が聞いているかわからないので久保田の名前は出さなかった。

「家で大人しくしてるっぽい…もうすぐ就活だからってなんか言ってたなぁ。早く抜けて来いとは言ってたけどね」
「やっぱり?」
「やっぱり。別に遠慮しないで好きなだけ行っていいとか言っておきながら、本当は嫌なんだってバレバレだっつーの」
「愛されてんじゃん」

他愛ない話を隅っこでしているとどすっと背後に重みがのしかかる。

「何々何の話ー?私も混ぜてよー」

と圧し掛かってくるのは、既に酔っ払いと貸した望だった。

「望…」
「なぁにぃ?」
「重い……」
「えぇーひどーい」
「いいからどきなさいっ」

無理やり背中に圧し掛かってくる望を引き剥がすと頬を膨らませた望と顔を付き合わせる。
望はどこか据わった目つきで深岬の傍にあったコップを掴むと傾ける。

「これ水じゃんっ!」

絡むのは立派な酔っ払いの証拠。

「あ、ちょっと飲みすぎたから」
「どこがー?顔めっちゃ普通じゃん」

酔っ払いの癖してなんて鋭いんだと思いながら相手をしていると今まで横に座っていた麻美が立ち上がる。
自然と深岬と望の視線が彼女に向く。

「深岬。ということで私は帰るねー」

立ち上がって手を振る麻美。

「あ、彼氏?」
「そんなとこー」

望の問いに頷くとそのまま出て行ってしまう麻美だった。
望が麻美に彼氏がいることは知ってるんだと思いながら麻美を見送る深岬だった。
麻美の姿が見えなくなるとはぁと溜息をつく声が聞こえてくる。
何だと思って深岬が怪訝な顔付きで溜息の元に目を向けるとそれは、望だった。

「いいなぁ。彼氏ー。あたしも欲しー。ねぇ、深岬ちゃんそう思わない」
「うん。いーよねー」

本心からそう思ったので、深岬は頷いた。
麻美を見ていて何故か強くそう思うようになった。

誰もいなくなったところをずっと見ている深岬だったが、急に顔を掴まれる。
驚いて目を瞬かせていると目の前には目の据わった真剣な表情をした望の顔がこれでもかというほど近くにある。

「な…何?」
「まさかっ!深岬ちゃんにも彼氏いたりしないよねっ!?」
「い、いるわけないでしょ!」

望の剣幕に圧倒されながらも頷く深岬に満足したのか、緩んだ笑顔を顔に浮べながら「あたしも~。友達ぃー」と言いながら抱きついてくる。
その拍子に深岬の体が倒れこむ。

「うっうわぁぁ」
「2人とも何やってんの?」

隅の方で抱きついているのは望が一方的にだったが、倒れこんでいる2人の姿は異様で望に潰されながらも怪訝な声でそう尋ねてくる声を聞いた。

「あたし達、彼氏いなくて寂しいもの同士なんですー」
「望ちゃん。その前に深岬ちゃんの上からどこうか?なんだかそのうちチアノーゼでも起こしそうだよ」

その言葉に、漸く望が深岬の上から退いてくれた。
助かったと重いながら体を起こす。

「あんた、私を窒息死させる気?」
「違うよぉ。ゴメーン。乾杯して仲直りしよ?」
「この酔っ払い」
「ひどい…まだ酔ってないもん」

だが、その姿は紛れもなく酔っ払いそのもの。
適度に流して自分の傍から追い払う深岬だった。
望を呼ぶ上級生の声もあったことから、すぐに彼女は深岬の傍から離れていった。
代わりに彼女が今まで座っていたところに腰を下ろしたのは、野坂だった。
彼が自分の横に腰を下ろすのを黙って視線で追いかけていた深岬だったが、どうも旅行の一件で多大な迷惑をかけたという自負があるだけに顔を合わせるのが忍びなかった。

「復活してるじゃん」

アルコールの所為で少し赤くなった顔で言う野坂に何のことを言われているのか即座に理解した深岬は曖昧な笑みを浮べた。

「まぁ、悩んでばかりもいられないんで…こればっかりは仕方ないですし…時間の無駄ってヤツですよ」

答える深岬の言葉を聞きながら、望が空にしていった水の入っていたコップの中に酒を注ぐ。
そして、深岬にコップを手渡しながら悪戯っぽく笑う。

「あん時のえらい落ち込みようから考えると進歩したじゃん。どうしたの?何かあったの?」

揶揄するような男の言葉に苦笑を浮べずにはいられなかった。
あったといえばあったというかなかったといえばなかったような気もする。

「まぁ、学科の友達とちょっとごたごたが…」
「若いねぇ」
「茶化さないでくださいよ。板ばさみなんですよ…今」
「コイバナ?」

にっと笑って聞いてくる野坂に頷く。
決して楽しい話ではないが。
他人の不幸は蜜とはよく言うが、まさにそれなのだろう。当事者の苦労も知らずにと思わずにはいられないが、自分が恐らく第三者だったら野坂と同じような反応をしたかもしれないと思うと責められない。

「よぉし、相談に乗ってあげよう」

わざとらしく言う相手に「ただの出刃亀根性でしょ」と言うと否定せずに頷く野坂だった。
深岬自身、助言は貰えなくても誰かに聞いてもらいたいと思う気持ちはあったので、今の状況を野坂に話した。


野坂は一度津田と面識があるだけに、深岬の話しているのが誰のことかすぐにわかったようだった。

「ね、もしかして…前、話に入ってきたあの子?」

そういえばとその時のことを思い出して深岬が頷くと「そりゃ、女の子は放っておかないでしょ」と妙に納得したように頷く野坂だった。
相談とは口にしながらもその話を酒の肴にして愉しんでいるだけの野坂だったが、深岬は聞いてもらえただけですっきりした。
全てを話を終わった後にぽつりと呟く。

「恋愛って面倒ですよね…」

ぼやくように零すのはこの頃深岬が感じていたことだ。
別に同意をして欲しいわけじゃない。
ただ、相手を好きなだけでは収まらない。
周囲を巻き込んで迷惑をかけていくそれは、ひどく性質が悪い。

「だから面白いんじゃないの?」

にっこり笑って答える野坂の顔をまじまじと見返す。
だがすぐに眉間に皺を寄せて言い返した。

「それは、野坂さんの恋愛が上手く言ってるから言える言葉じゃないですか」

少しひがみの入ったような言葉になってしまったが、深岬は訂正しなかった。

「そうかもねー」

野坂はと言えば、意味深な笑みを浮べるだけだった。

色々と大変だねぇと頭にぽんぽんっと触れる手に前にも感じたような安心感を感じる。
結局は、「飲んで忘れたらいいよ」というありがちな言葉にそんな感情もどこかへと消失してしまったのだが…。
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