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更新日記と小説(18禁)とたまに嘆き. 嫌いな方・興味のない方・間違っちゃった方はバックバック

2026

0320
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2008

0413
「ごめんね…。退屈だよね」

先ほどから何度も繰り返される言葉。
そのたびに、深岬は「気にしなくていいから…」などと答えるのだが、何度もそう言われるうちにいっそのこと肯定してやったら涼子の気も済むのかと思い始めていた。
とはいえ、それを行動に移すことなどできないのだが…。

漸く、四分の三を書き終えたというところで机の上に置かれていた涼子の薄いピンク色の携帯がぶるぶると震える。
振動する携帯が机の上で物々しい音を立てる。
最初びっくりしたように2人の視線がその携帯に集中する。
慌てて机の上から持ち上げて折りたたみ式になっているそれを開いて確認する。

「旭クンからだ」

意外な名前に深岬は多少驚く。
それほどまでに仲良くなったのかと―。
少なくとも数日前までは、津田は涼子のメールアドレスも携帯番号も知らなかったはずだと認識している。
嬉しそうに顔を綻ばせる涼子を見ながら、「まぁこんな可愛い子に迫られちゃ…落ちて当然か」と冷静に分析する。
多少深岬がいなくても話す程度だった2人が電話番号まで交換するほど仲良くなったのならば、自分の気苦労も減るだろうと考えたりもしていた。
目の前では、涼子が電話を耳に当てている。
相手は、津田に違いない。
呆然と見ていた深岬と涼子の目が合う。
相手の目を見て、深岬の体に緊張が走る。

―何…?

涼子の目はどこか挑戦的で、そう―形容するならば、優越感に浸ったような目をしているという方がぴったりと当てはまるようだった。
何だか目を合わせているのが嫌になり、深岬から視線を外した。
程なくして涼子の電話の相手である津田が出たのであろう。涼子のトーンの高い嬉しそうな声が聞こえてくる。

「あ、旭クン?どうしたの?」

涼子の向かい側に座る深岬からは津田の声は聞こえない。
ただ、聞こえてくるのは涼子の声だけだった。

「うん。うん。そうそう」

「えーやだぁ。違うってばぁ」

「今?学食にいるよ」

一緒に昼でも食べるのだろうかと涼子の言葉から電話の内容を推測してみる。
そうならば、自分は完全なお邪魔虫だろう。先に退散するかなどと考えていると急に自分の名前が出てきて相手を見る。

「え?深岬ちゃん?一緒だけど…」

まぁ、不自然ではないのだが―。
涼子の表情が曇る。
だが、それは少しの間だけですぐに元の表情に戻った。

「あ。そう?うん。待ってる~。はぁーい、じゃあね」
「今から来るの?」
「うん。待っててって言われちゃった。旭クンが来るまでにノート写しちゃうね」

携帯をパチンと音をたてながら閉じて言う姿は嬉しそうだった。

「あ、うん。随分、仲良くなったみたいだね?」

と深岬が尋ねると涼子は顔をノートから深岬の顔へと向けた。
そして綺麗にグロスの塗られた口角を持ち上げて薄く笑う。

「寂しい?」

あの目だ。
今度は、目を逸らさずに笑いながら返す。
「別に」
「なんだぁ。てっきりやきもち焼いてるのかと思った」
「冗談。大体、何で私がアイツに纏わりつかれてるのかわかんないし?それに、アイツとは友達よ」

そうだ。
利害関係のない友達。
津田はどうかは知らないが、少なくとも深岬はそう思っている。というのは、昨日の津田との筆談の影響もあるが…。少なくとも深岬に津田を利用しようなんていう気持ちはない。

「…そう」

涼子は、顔をノートに戻しながら小さな声で言う。
下を向いた所為か声が篭って殊の外、低い声に聞こえる。
何か違和感のようなものを感じた深岬だったが、しばらくノートを写し続ける涼子を見続けた後、普通に話しかけてきた彼女に気のせいかと自分に言い聞かせた。

「なんかさー、深岬ちゃんといる旭クンってカッコいいけど可愛い感じがしてたんだよね」
「そう?」
「何かお姉さんに甘える弟みたいな感じで…」

それは、言い得て妙かもしれないと思った。
というよりも、仮面が外れかけてるんじゃないかと逆に津田を心配する。

「でもさ、旭クンと2人で遊んだり、昨日の飲み会で見て思ったけどやっぱ勘違いだったみたい」
「どーゆーこと?」
「やっぱり何て言うの?何をやってもサマになるっていうの?」
「さっぱり意味わかんない」

突拍子もない涼子の台詞に深岬は眉間に皺を寄せる。
少なくともサマになる津田など深岬には想像すらできない。
できるのは阿呆な言動や馬鹿なことをしている姿だけだ。

「この間はね。映画見に行ったんだけどね。自然とエスコートしてくれるし…。自然とあんなことできる男の人と付き合ったことないからすんごくドキドキしちゃった。王子さまみたいだよね~」
「お、王子ぃ?それはよーござんした」

想像もつかない。思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。
というよりも気持ち悪い。
深岬は気づかなかったが、そのやる気の欠片もない深岬の返答が涼子は気に食わなかったようだった。

「昨日だって、凄くお酒強いし…。他の潰れちゃった子の処理もパパってしちゃうんだよー。話も面白かったし。色んな話しちゃった~。お陰で寝るの遅くなってさっきの授業すごく眠かったんだー。多分、旭クンもそれで授業これなかったんだと思う」

思い出しているのか顔を宙に向けて口元にシャーペンを当てて言う姿はまるで恋する乙女というところか。
だが、実のところを言うと涼子の言葉は半分本当で半分嘘だ。
一応、飲み会には参加していた津田だったが、ほとんど会話にも入ってこずに自分のペースで酒を飲むだけでずっと携帯を気にしていた。
偶に口を開いても友人に声を掛けられて相槌を打つ程度というもの。
津田の携帯番号を涼子が知ったのも酒に酔った勢いで強引に聞き出したためだ。
顔色を変えない深岬が面白くなくて吐かなくてもいい嘘を吐いた。
しかし、深岬はと言えばどこ吹く風で「ふぅん」と詰まらなさそうな顔で言うだけ。

「深岬ちゃんと居る旭クン可愛いって言ったけど…多分ね。あくまでも多分だよ?深岬ちゃんに合わせててくれたんじゃないのかなぁ?ほら、あれだけ見た目がいいとさー、引け腰になっちゃう子いるじゃない?深岬ちゃんもそういう子だって勘違いされたんじゃないのかなぁ」
「あ…そう」

自分は違うと言いたいのだなと悟る。
そして、自分の方が津田に近い位置にいるということをアピールしたいのだろう。ようは牽制だ。頭にのるなと…。
何となくではあるが、涼子の言わんとしていることが分かった深岬は椅子から立ち上がる。

「どうしたの?」

がたりという音に顔を上げて深岬を見る涼子。

「アイツが来るんなら私、邪魔でしょ?先に昼ご飯食べて消えるね」
「え、いいのに~深岬ちゃんも一緒でいいじゃん」
「いいのいいの。2人の方が嬉しいでしょ。それよりさっさと写しちゃいなよ。もうじきくるんじゃないの?」

遠慮の言葉を口にした深岬に気にしないでと答える涼子。
白々しいと思いながら深岬は、書きかけのノートを指差してにっこりと笑い席を立って昼ご飯を買いに行った。
深岬の指摘に、涼子が慌ててノートに向き直る。
それを見届けて深岬はつかつかとパンプスのヒールの音を立てて離れていった。
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