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更新日記と小説(18禁)とたまに嘆き. 嫌いな方・興味のない方・間違っちゃった方はバックバック

2026

0320
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2008

0414
2コマ目終了時刻に近いとだけあって、人が流入しはじめていたため少し並ばなければならなかった。
二日酔いもとい三日酔いに苦しんでいた昨日とは打って変わって揚げ物が食べたくなった深岬は、フライを選択してレジで会計を済ませると涼子の座る席へと戻る。
もしかしてもう津田が来ているかと危ぶんだが、その心配は杞憂に終わった。
深岬が机にトレーを置いて座ると涼子が深岬のノートを差し出してくる。

「ありがとう」
「いいよ」

ノートを受け取りながら横の椅子においてあったカバンを手繰り寄せて中にしまう。
涼子も写し終わったノートをカバンの中に仕舞うと後は、食堂の入り口の方ばかりを気にしていた。
深岬はそれを一瞥した後、トレーの上にのっている箸を持つと小さな声で「いただきます」と言って今日の彼女の昼ごはんを食べ始めた。

何もそんなに気にしなくてもいいのではないかと思うくらい、そっちの方向ばかり見る涼子に小さく笑みを漏らす。

「何?」

深岬の笑う声が聞こえたのか怪訝な顔で深岬を見る涼子に彼女は、なんでもないと首を振った。
深岬の中で涼子は、もっと駆け引きの上手い人間かと思っていたが、そうでもないらしいと彼女の様子を見ていて分かった。
或いは、そうはさせない何かが津田のほうにあるのか―。
どちらにせよ深岬には関係のないことだ。

「あ!」

嬉しそうな声を発した涼子に津田が来たことがわかるのだが、生憎深岬は半分も食べていなかった。
本当なら津田が来る前に食べ終わってこの場を去るつもりだったのにこれではそうはできない。
捨てるのは、勿体無いし嫌だ。
かといって津田が現れたからと言って離れた席に一人で移るのも考えものだろう。涼子は喜ぶかもしれないが津田が何と思うか―。
うーんと眉間に皺を寄せながら「来るのが早い」と津田を心の中で罵ってみる。
その間にも涼子が席を立って、こっちこっちと手を振っている。
どうしようかと思いながらも深岬は、食べるスピードを速めた。
昨日の使いまわしというわけではないが、さっさと目の前のものを平らげて用があるとでも言って席を立てばいいと思ったからだ。
そうだ。そうすればいいとばかりに深岬が常ならぬスピードで料理を口の中に運んでいると箸を持つ手が大きな手によって掴まれる。

「えっ?」

驚いて自分の手首を掴む人物の顔を見上げる。

「あ、旭クン?」
「涼子ちゃん。深岬ちゃん借りてくね」

笑顔で涼子に言う津田に深岬はただ目をぱちぱちと瞬かせた。

「深岬ちゃん。行くよ」

という声は、いつもの彼らしくなく硬質な声だった。

「…ご飯食べてる途中なんだけど…」

いつもとちょっと違う甘さの抜けた津田に驚きながらも言うと津田の目が顰められる。

「ちょ、ちょっと待ってよ」

どういうわけか自分に連絡してきたのに自分ではなく深岬を連れ出そうとしている津田に涼子が慌てた声をあげる。
これでは、自分が馬鹿みたいではないか―。
いいように利用されただけに見える。

「あ、そうだ…旭クン。さっきの講義いなかったでしょ?ノート貸してあげる」

その涼子の台詞に深岬が今度は唖然となる。
目を見開いて涼子を見つめる深岬だったが、彼女は深岬の視線になど気づくことなく先ほどまで必死になって写していたノートを差し出す。
深岬は悟った。
いつもならコピーをとる彼女がノートを写していた理由を―。
自分はまさに利用されたのだ。
そこまでやってしまう涼子に驚きと同時に凄いと感嘆してしまう。自然と悔しいと思うことはなかった。というよりも目から鱗状態でそんな感情まで行き着かなかった。
だが、津田は涼子が取り出したノートを冷めた視線で一瞥すると端的に言う。

「いい。深岬ちゃんに借りる」
「え…っ。でも…深岬ちゃんの……」
「借りればいいじゃない。貸してくれるって言ってるんだから。私のノートより見やすいはずよ」

助け舟を出す訳ではないが、ちょっと哀れに見えてきた涼子に深岬が援護するように言うと津田の深岬の手首を握る力に更に強い力が加わる。

「ね…。ほら、深岬ちゃんも言ってるし」

若干引きつっているように見えるが笑みを浮かべて差し出す涼子に津田はもう一度、「いらない」と返事をした。
今度こそ絶句して返す言葉も見つからなかった。

「深岬ちゃん。昨日の続きやろ」
「昨日?」

津田が何のことを言っているのか分からずに深岬は怪訝な顔つきをした。

「物理学のレポート」
「あ…あぁ、でも待ってよご飯食べてるんだけど」
「そのレポートなら終わってるから教えてあげるよ?」

昨日の昼休みのことを誤魔化すために考えた理由をなぜにここに出してくるのか深岬にはさっぱりだった。
割り込むチャンスとばかりにめげずに涼子が声を発する。
だが、それも一蹴されてしまう。

「いい。自分で考えないと意味ないから」

正論と言えば正論だ。
だが、それはやんわりとした口調で言われたのならまだましだったかもしれないが冷え冷えとした口調で言われたのだからそれ以上涼子も言い返す気力がなくなってしまった。
顔立ちが整っているだけに迫力がある。

「ご飯まだなの」
「昼飯くらい奢るから」
「ちょっと、何であんたが私の昼ごはんを払う必要があるのよ。いいから離して」
「来て」

深岬が軽く握られた手を振りながら言うが、津田は力を入れて一言言うだけだった。
深岬の動きが止まったのをいいことに深岬のカバンを目ざとく見つけるとそれを掴んで深岬を立たせる。
そして、涼子を振り返ると遠慮の欠片もなく言う。

「涼子ちゃん。ゴメン。後、頼むね」

満面の笑みで言われた涼子はぽかんとした顔で食堂を出て行く深岬と津田の背中を見送ることしかできなかった。
一方、訳がわからないのは深岬の方だった。
引っ張られるままに津田の後を追いかけながらも頭の中ではいろんな考えが次から次へと浮かんでいた。
しかし、一番気になることは何故、この自分を引っ張っていく男が、こんなにも怒っているように見えるのか―。

途中ですれ違った津田の友人達に彼は懇願する。

「用があって深岬ちゃん連れ出したから鈴木さんが一人で学食にいるんだ。一緒にいてあげて」

用も何もあんたが連れ出したんでしょうがと心の中で叫ぶものの口にはできなかった。憚られた。
津田にそういわれた彼らは気の良い返事をして学食のほうへと姿を消していった。
呆然とその集団の後ろ姿を見送っていた深岬だったが、ぐいっと手を引っ張られたので後ろ髪引かれる思いで学食の方角を気にしながらも先を行く津田の後を追った。

集団の「あいつ本当に進藤さんのこと気に入ってるなぁ」という雑談の声を聞きながら―。
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