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更新日記と小説(18禁)とたまに嘆き. 嫌いな方・興味のない方・間違っちゃった方はバックバック

2026

0320
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2008

0409
結局、気分の悪さの抜けない深岬とそれほど面白かったのかいつまで経っても笑っている津田に2人は揃いも揃って授業を自主休講した。

「何もあんたまで休まなくていいのに」

2コマ目の授業時間の終了時刻に近づくに連れ、人が増えてきた学食を出た深岬が同じように外に出た津田に呆れたような口調で言うが、相手はにこにこといつもの人畜無害そうでいてその実フェロモン垂れ流しの笑みを浮べているだけだった。

「だって、深岬ちゃん放っていけないでしょ?」
「子供じゃないんだから、放っておかれても大丈夫よ」
「本当に深岬ちゃんってば~強がりなんだからぁ」

長身の男に科をつくって言われても気持ちが悪い以外の何物でもない。
顔を顰めて津田を無視して先に歩き始めた深岬にぴたりとその動作を止めて追いかける。

「気持ち悪さが倍増する」
「あわわ。待ってよ~先行っちゃやだぁ」

間抜けな声を上げて追いかける津田だったが、生憎と人どおりの少ない道でのことなので、目撃者は誰もいなかった。
津田という男は、深岬と2人きりのところでしかそういった所を見せることはしない。
多少、ぼろが出そうになっているのかわざとなのかは分からないが深岬の学科内での友人である涼子がいる場面でも普通の格好いい男を装っている。
深岬に見せている姿が演技か地なの。はたまた、他の人間に見せている姿が演技なのか地なのかは、甚だ疑問である。
放っておいても追いかけてくることを深岬は分かっている。
実にそのとおりに津田は、小走りで深岬の後を追いかけると横に並んで歩き始める。

「もう……」

いつものように阿呆なことを言おうとしたのだろうが、ぴたりとその声が途絶える。
途絶えた声を不審に思うのは深岬だった。
横を歩く津田に目を向けるとさきほどまでも崩れた顔などどこへやら―。
きりっとした表情で前を見据える。
津田の視線の先を追いかけると授業が終わって昼食のために出てきたのであろう。
涼子の姿と数名の学科で見かけたことのある顔ぶれがある。必要性を感じなかったので、名前までは覚えていないが…。

あっと小さな声を上げて深岬が目を見開くと向こうも気づいたようで笑顔で手を振ってくる。
だが、その笑顔が逆に怖いもののように感じるのは気のせいだろうか。

「さっきの授業出てなかったけどどうしたの?」

駆け寄るようにして深岬に近づいてきて問う。
咎めるように聞こえるのはその声の強さだろう。

涼子と一緒にいた学生は、遅れて深岬たちの前に現れる。

「何の連絡もないから心配したよー」
「あ…うん。ちょっと…」
「俺が、呼び止めたんだ」

言い淀む深岬に助け舟を出したのは、深岬だけに見せる阿呆の姿ではなく、彼の友人や他人が良く知る津田 旭という人物そのもの。
表情をあまり変えずに薄っすらと笑みを浮べて言う姿は360度どこから見ても穴のない完璧ないい男だ。
しかし、それはすでに阿呆の方に慣れきった深岬からしてみれば気持ち悪い以外の何物でもないのだが…。
周りは違うらしい。
それもそのはずだろう。
彼らは、完璧な津田しか知らないのだから…。

「またかよー。お前、ほんっとに最近進藤さんにべったりだよなぁ」

涼子と一緒に深岬の前に現れた学科のクラスメートであろう男子の1人の砕けたしゃべり方は、彼と自分の横にいる津田という人間の近しさのようなものを教えてくれる。
よく知らない相手や初対面の相手に対してこんな風に話しかけたりすることはできまい。
呆れたような友人の声にも津田は軽く笑ってみせる。
こうして見てみれば、本当に嫌味なくらいいい男だ。これが、津田に声をかけた友人のような男がやったらただの気障ッたらしい嫌なやつという印象を与えるのだろうが…、なまじっか顔が整っているだけにその様も見事にはまるのだ。
顔がいいというだけで何倍も得なヤツと卑屈ながらも思ってしまうのはひがみだろうか。
いや、この男にはそう思わせ何かがあると深岬は思う。

「今から飯?」
「ああ、うん。進藤さんいなかったから、鈴木さん誘って…」
「ああ、そう」

それには至極詰まらなさそうな顔をして答えた津田だった。

「2人も一緒に行かない?」
「いい。さっき、食ってきたから…。別の用あるし…。じゃ、また後で。深岬ちゃんイコ」

誘いの言葉もすげなく断ると深岬の手を引いて団体の前を離れる。
強い力に引っ張られるままに深岬は津田と一緒に涼子の前から姿を消した。
津田の友人である男達は、そんな津田になれているのであろう軽い感じで「後でな~」と返していたようだったが、深岬は涼子が今どんな顔をしているのかと想像するだけで何だか怖くなって後ろを振り向くことはできなかった。

しばらく手を引かれるままに歩いていた深岬だったが、人目もなくなった頃に小さな声で言う。

「うそつき」

ぴたりと足が止まる。
ぱっと握っていたはずの深岬の手を解放して振り返ると悪戯をした子供のようににっと笑うのだ。

「ゴメンね?」
「本当に悪いと思ってる?」
「思ってなーい」

全く悪びれる様子もなくけろっとした顔で言う津田に苦笑を禁じえなかった。

「じゃ、謝るな。ま、ありがと…。ちょっと助かった」

と言うとひどく嬉しそうに笑うのだ。

「ご飯いこっ。さっき見てただけだからお腹すいちゃったんだよねぇ」
「1人で行け」
「やぁだぁ。ほら、一緒に行ってくれたら2日酔い…あ、違ったっけ?3日酔いだっけ」

わざとそんなことを言う津田に深岬がぴくりと眉間に皺を寄せて、足を踏みつける。

「言い直すな。ムカツク」
「薬あげるよー。すんごく効くから~」

あの場から連れ出してくれたことに感謝はしているものの胃の中に食事を入れたばかりの深岬は、再度昼飯を食べる気などさらさらない。
しかし、薬は魅力的だった。
もうこの気持ち悪さから解放されるならなんだっていいのだ。

「仕方ないわね」

つんっとそっぽを向きながらの素直じゃない言い方ながらも津田はくすっと小さく笑って深岬を学外へ連れ出した。
近くの薄汚れた到底、津田には似合わないそれこそ涼子などが見たら眉間に皺を寄せそうな定食屋に行った。
大学の近くにあってすいているとは言い難いところだったが、まず女の子はこない類の店だなと思って店内を見回す。見渡す限り、年食った親父と汗臭い大学生ばかりだった。
何度も来ているのか、津田はメニューを見ることなく頼む。
深岬は、津田が食べる間、ただ見ているだけもつまらないのですっきりするかと思ってアイスを食べて時間を過ごした。
途中、「食べる?」といつかのファミレスのように差し出されたが、脂まみれの肉を食べる気には到底なれずに首を横に振った。

その後、約束どおり薬をくれるという津田の言葉を実現するために津田のすむ学生マンションへと向かった。
この時、深岬は初めて津田のマンションに行くことになった。

別に特筆すべきこともない普通のマンションだったのだが、中は驚くほど綺麗だった。
自分の部屋よりも綺麗に整えられた部屋に深岬は悔しさのようなものを感じて、揶揄い半分で「彼女でも来て掃除してくの」と聞けば、軽く笑うだけだった。
差し出された錠剤を受け取ってコップの水も一緒に受け取る。

「ありがと…」

と言いながら錠剤を流し込んでいると…。

「女の子でこの部屋入ったの妹除いて深岬ちゃんが初めて」

そういえば、前にもそんなこと言ってたなぁとそれ以外、別に何も感じることもなく水をごくごくと流し込む。
空になったコップを受け取りながら、流しのシンクに置きながら深岬を振り返る。

「3コマ目もサボる?家帰ってきたら面倒くさくなっちゃったんだよねぇ」
「あ、そ。じゃ、私はこれで…サボるならサボれば?」

冷たい一言とともにくるりと背を向けた深岬に慌てて津田が追いかける。

「あ、待ってよー。ひどいじゃん。僕も行くー」
「あんたがサボるっていうから私は授業行こうとしただけじゃん」
「嘘に決まってるじゃん」
「私がサボるって言ったら?」
「勿論サボる」
「バカ」

胸を張って断言した男に冷たい一瞥をくれてやる深岬だった。
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