更新日記と小説(18禁)とたまに嘆き.
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2008
深岬と津田が履修している3コマ目の講義は昼の一時から開始なのだが、津田の家を出た時点で一時ちょっと前だったために、いくら津田が大学の近くに住んでいるとはいえ2人は仲良く遅刻した。
すでに担当教授が黒板の前に立ち授業をしているのを教室の窓の外から見つけて後方のドアからそっと教室内に入る。
適当に空いていた後ろの席に並んで座る。
極力音を立てないようにと気を配ったところで静かな講義中に人の動く音は、目立つ。
一部の視線を集めながらも2人は席につくことができた。
カバンの中からノートを取り出しながら顔を上げると少し前の席に座っている涼子と目が合い、ぴたりと深岬の手の動きが止まる。
―に、睨まれてる気がするんですけど…?
口に出せるわけも、ましてや横に座る津田に言えるわけもなく視線が外れるまでひきつった笑みを浮べることしかできなかった。
前を向いた涼子を見た時にはほっとして肩の力をぬき、大きく息を吐き出した。
そんな深岬を横から不思議そうな目で見ている津田に、深岬は気づくことはなかった。
ペンケースの中からシャープペンを取り出しているとカバンがぶるぶると振動し始める。
なんだろうと思って確認すると涼子から深岬の携帯電話に届いたメールお着信を告げるバイブ音だった。
「はやっ…」
声にはしなかったが、口の動きだけで感嘆の言葉を発する。
いくら空気が掠れるほどの小さい音とは言え、近くにいた津田が気づかないはずもなく当然彼の視線は、深岬へと向き、彼女の手に握られた携帯電話に目が行く。
覗き込むようにしてくる津田の顔を押しのけながら画面を確認する。
『用ってなんだったの?全然、こないから心配したよー』
何ていうメールの本文は、授業に来ない友人を心配する親切といえば親切なメール。
しかし、深岬はそれを見てげっそりとする。
用と言って涼子たちの前から去った深岬と津田だったが、そんなもの津田の口から出た嘘だったのだから。
自然と険しくなる深岬の顔。
何て返事を返せばいいのかわからなくて、このまま気づかなかった振りをしようかとも思ったが、それはそれで授業の終わりと同時に涼子が深岬のもとに駆け寄ってくるのは目に見えていた。
何でこんな面倒くさいことになってしまったのだろうかと考えているとひょいっと携帯電話を取り上げられる。
犯人は言うまでもなく横に座る津田だった。
「あっ…」
深岬が止める間もなく携帯電話を取り上げてしまうと手が届かないように深岬に背を向けるようにして我が物ののように強奪した携帯を弄る。
そして、すぐに深岬に返す。
何をしたのか慌てて画面を確認すると送信しましたという文字が画面上にはっきりと刻まれており、横目で津田を確認すると涼しい顔で黒板に向かっている。
一体何を送ったのか送信済みメールの履歴で確認する『ひ・み・つ』とだけ書かれたメール。
―何送ってんのよー!!
という叫びは尤もだろう。
勢いに任せて津田の足を踏む。
力強く踏まれた津田は、机の上に上体を傾け、悶絶する。
2人の姿は、周囲から見れば何をじゃれあっているのかと思えるのようなものだ。
邪魔と言えば邪魔であり、目障りな存在。
生憎とずっと教卓の上に教科書を置いてそれをつらつらと読み続けているだけの講義ともいえない講義をしている教授には、2人の様子など全く目に入ってなどいなかった。それが、せめてもの救いか―。
取り合えず開けてあるノートに殴り書きのような乱暴な文字で『何してくれんのよ!』と書いてみる。
すると津田も自分のルーズリーフに『困ってたから助けてあげたんだよ?』なんて白々しく書いて寄越す。
言うに事欠いてそれかと深岬はさらに衝動の赴くままペンを走らせる。
『ふざけんな』
『もー、だったら。この前の物理学のノートコピーしに行ってたっていうのは?僕、サボってたし…』
津田の即座に考えた理由を見て、驚いたようにきょとんとした表情で津田の顔を見返す。
するといたずらっ子のような笑みを一瞬だけ見せる。
確かに理由には、なるかもしれないが一時間という時間を潰す理由にはならないだろう。
どうしようと考えながら、ノートにペンを走らせる。
『じゃあ、丁度レポート出てたから図書館に参考の本探しに行ってたということで何か聞かれたら話合わせて』
『ウソ。レポート出てたのっ!?』
寝耳に水のことに驚きなのか津田の字は揺れている。
『出てるわよ』
『聞いてない』
『そんなの知らん』
しかし、深岬の反応は冷たい。
じとりと恨みがましい目で見られているのは気づいていたが、知らん顔を決め込む。
『教えてよー。いつまで?』
『てっきり友達から聞いてるのかと思ってた。来週の講義の時に提出』
『友達って深岬ちゃんだもん』
『いつの間に?』
『ひどっ。傷つく…ずっと前からじゃん』
『あそこにいるのは?』
書いた後にペンで涼子の近くに座っている今日の昼にも学食の近くで顔を合わせたであろう数人を指すと意外な答えが返って来た。
『僕を利用する人達』
ぴくっと深岬の手が止まり、まじまじと相手を見返す。
深岬の視線を受けとめながらも一度深岬と視線を交わらせるとすぐに視線をノートに走らせ、涼しい顔でまたペンを走らせる。
『冗談。本気にしないで』
遅れてノートに書かれた文字を追いかける深岬だったが、とても冗談だとは思えなかった。
馬鹿な言動をしてもこの横にいる男がそんなことを言うのを一度だって聞いたことなどない。
それに――。
すぐに顔を逸らしてしまったが、真剣な表情だった。
ノートに書かれた利用という文字にひきつけられるようにしてしばらく固まってしまった深岬だった。
まるでその言葉に引き寄せられるようにして友達って何だろうと考えてしまう。
こう言われると自分と涼子の関係も疑問に思えてくる。
食い入るようにノートを見つめたまま動かなくなった深岬を不審に思ったのだろう津田が深岬の体をツンツンと指で突っついたので、ハッとしてノートにペンを走らせる。
『この間の物理学の授業のノートいる?』
『いるっ!!』
おずおずと津田の方を確認しながら、深岬がノートにそう書くと即座に満面の笑顔とともに返ってくる返事。
別に津田の書いた“利用”という言葉に影響を受けたわけではない。
ただ、津田の書いた言葉を見ているときっと誰からも借りてないと思ったから―。
即答に軽く笑いながら頷き返しつつもきちんと笑えているかわからない深岬だった。
その後もペンを走らせる津田。
まだ、何かあるのかと目を向けると―。
『深岬ちゃん大好き』
いつも津田が深岬に向けて言う言葉が書かれていた。
毎度毎度のことながらこいつは勘違いをさせたいのかと思いつつ、あからさまに呆れたような息を深く吐き出してペンを走らせる。
『だから、それは彼女に言え』
といつもの返しをする。
2人は始終そのような感じでとてもじゃないが講義など全く聞かずに筆談を続けた。
すでに担当教授が黒板の前に立ち授業をしているのを教室の窓の外から見つけて後方のドアからそっと教室内に入る。
適当に空いていた後ろの席に並んで座る。
極力音を立てないようにと気を配ったところで静かな講義中に人の動く音は、目立つ。
一部の視線を集めながらも2人は席につくことができた。
カバンの中からノートを取り出しながら顔を上げると少し前の席に座っている涼子と目が合い、ぴたりと深岬の手の動きが止まる。
―に、睨まれてる気がするんですけど…?
口に出せるわけも、ましてや横に座る津田に言えるわけもなく視線が外れるまでひきつった笑みを浮べることしかできなかった。
前を向いた涼子を見た時にはほっとして肩の力をぬき、大きく息を吐き出した。
そんな深岬を横から不思議そうな目で見ている津田に、深岬は気づくことはなかった。
ペンケースの中からシャープペンを取り出しているとカバンがぶるぶると振動し始める。
なんだろうと思って確認すると涼子から深岬の携帯電話に届いたメールお着信を告げるバイブ音だった。
「はやっ…」
声にはしなかったが、口の動きだけで感嘆の言葉を発する。
いくら空気が掠れるほどの小さい音とは言え、近くにいた津田が気づかないはずもなく当然彼の視線は、深岬へと向き、彼女の手に握られた携帯電話に目が行く。
覗き込むようにしてくる津田の顔を押しのけながら画面を確認する。
『用ってなんだったの?全然、こないから心配したよー』
何ていうメールの本文は、授業に来ない友人を心配する親切といえば親切なメール。
しかし、深岬はそれを見てげっそりとする。
用と言って涼子たちの前から去った深岬と津田だったが、そんなもの津田の口から出た嘘だったのだから。
自然と険しくなる深岬の顔。
何て返事を返せばいいのかわからなくて、このまま気づかなかった振りをしようかとも思ったが、それはそれで授業の終わりと同時に涼子が深岬のもとに駆け寄ってくるのは目に見えていた。
何でこんな面倒くさいことになってしまったのだろうかと考えているとひょいっと携帯電話を取り上げられる。
犯人は言うまでもなく横に座る津田だった。
「あっ…」
深岬が止める間もなく携帯電話を取り上げてしまうと手が届かないように深岬に背を向けるようにして我が物ののように強奪した携帯を弄る。
そして、すぐに深岬に返す。
何をしたのか慌てて画面を確認すると送信しましたという文字が画面上にはっきりと刻まれており、横目で津田を確認すると涼しい顔で黒板に向かっている。
一体何を送ったのか送信済みメールの履歴で確認する『ひ・み・つ』とだけ書かれたメール。
―何送ってんのよー!!
という叫びは尤もだろう。
勢いに任せて津田の足を踏む。
力強く踏まれた津田は、机の上に上体を傾け、悶絶する。
2人の姿は、周囲から見れば何をじゃれあっているのかと思えるのようなものだ。
邪魔と言えば邪魔であり、目障りな存在。
生憎とずっと教卓の上に教科書を置いてそれをつらつらと読み続けているだけの講義ともいえない講義をしている教授には、2人の様子など全く目に入ってなどいなかった。それが、せめてもの救いか―。
取り合えず開けてあるノートに殴り書きのような乱暴な文字で『何してくれんのよ!』と書いてみる。
すると津田も自分のルーズリーフに『困ってたから助けてあげたんだよ?』なんて白々しく書いて寄越す。
言うに事欠いてそれかと深岬はさらに衝動の赴くままペンを走らせる。
『ふざけんな』
『もー、だったら。この前の物理学のノートコピーしに行ってたっていうのは?僕、サボってたし…』
津田の即座に考えた理由を見て、驚いたようにきょとんとした表情で津田の顔を見返す。
するといたずらっ子のような笑みを一瞬だけ見せる。
確かに理由には、なるかもしれないが一時間という時間を潰す理由にはならないだろう。
どうしようと考えながら、ノートにペンを走らせる。
『じゃあ、丁度レポート出てたから図書館に参考の本探しに行ってたということで何か聞かれたら話合わせて』
『ウソ。レポート出てたのっ!?』
寝耳に水のことに驚きなのか津田の字は揺れている。
『出てるわよ』
『聞いてない』
『そんなの知らん』
しかし、深岬の反応は冷たい。
じとりと恨みがましい目で見られているのは気づいていたが、知らん顔を決め込む。
『教えてよー。いつまで?』
『てっきり友達から聞いてるのかと思ってた。来週の講義の時に提出』
『友達って深岬ちゃんだもん』
『いつの間に?』
『ひどっ。傷つく…ずっと前からじゃん』
『あそこにいるのは?』
書いた後にペンで涼子の近くに座っている今日の昼にも学食の近くで顔を合わせたであろう数人を指すと意外な答えが返って来た。
『僕を利用する人達』
ぴくっと深岬の手が止まり、まじまじと相手を見返す。
深岬の視線を受けとめながらも一度深岬と視線を交わらせるとすぐに視線をノートに走らせ、涼しい顔でまたペンを走らせる。
『冗談。本気にしないで』
遅れてノートに書かれた文字を追いかける深岬だったが、とても冗談だとは思えなかった。
馬鹿な言動をしてもこの横にいる男がそんなことを言うのを一度だって聞いたことなどない。
それに――。
すぐに顔を逸らしてしまったが、真剣な表情だった。
ノートに書かれた利用という文字にひきつけられるようにしてしばらく固まってしまった深岬だった。
まるでその言葉に引き寄せられるようにして友達って何だろうと考えてしまう。
こう言われると自分と涼子の関係も疑問に思えてくる。
食い入るようにノートを見つめたまま動かなくなった深岬を不審に思ったのだろう津田が深岬の体をツンツンと指で突っついたので、ハッとしてノートにペンを走らせる。
『この間の物理学の授業のノートいる?』
『いるっ!!』
おずおずと津田の方を確認しながら、深岬がノートにそう書くと即座に満面の笑顔とともに返ってくる返事。
別に津田の書いた“利用”という言葉に影響を受けたわけではない。
ただ、津田の書いた言葉を見ているときっと誰からも借りてないと思ったから―。
即答に軽く笑いながら頷き返しつつもきちんと笑えているかわからない深岬だった。
その後もペンを走らせる津田。
まだ、何かあるのかと目を向けると―。
『深岬ちゃん大好き』
いつも津田が深岬に向けて言う言葉が書かれていた。
毎度毎度のことながらこいつは勘違いをさせたいのかと思いつつ、あからさまに呆れたような息を深く吐き出してペンを走らせる。
『だから、それは彼女に言え』
といつもの返しをする。
2人は始終そのような感じでとてもじゃないが講義など全く聞かずに筆談を続けた。
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