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更新日記と小説(18禁)とたまに嘆き. 嫌いな方・興味のない方・間違っちゃった方はバックバック

2026

0320
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2008

0408
どうだったのかという問いに一言で答えるならば――。



最悪。

惨憺。

散々。



というのは言い過ぎだろうか。
いや、言いすぎではないと深岬は思う。


本当に惨憺たるもので散々でその後の自分は2日酔いならぬ3日酔いを抱える羽目になるという最悪なものだったのだから。

「一言で言うなら…」
「言うなら?」
「んー最悪?」
「はぁあ?」

明らかに深岬の言葉の最後には、疑問符がついている。
楽しみにしていた深岬を知っているだけにその答えは彼にとって意外だったのかもしれない。

土日の休みを利用して一部とはいえ深岬の所属するバドミントン部のメンバーで企画された旅行。
それは、深岬にしてみれば惨憺たるものだった。
まず、初日に片思いの相手である坂上ののろけ話を聞かされてショックを受ける。
そしてそのショックを引きずったままだったために、その後の行程を楽しめるはずもなく。
その夜の飲み会の場で悩んでいる自分がバカらしく思えたことはいいことだったのかもしれないが、その後がいけなかった。
まるで憂さを晴らすかのように浴びるように酒を飲んでかっくらって撃沈。
最初こそ深岬の様子に面食らっていたが途中からは面白がって上級生が飲ませたせいもあり、散々迷惑をかけた上に翌日はほぼ死人の状態だった。
大学に帰ってきたはいいものの2時間以上も電車に揺られて無事でいられる自信もなく、またまだ飲み足りないとばかりに大学近辺の居酒屋で飲み会を敢行しようとした上級生達に引きずられるようにしてそのまま飲み会に強制参加を強いられたのだ。
そこで、2日酔いには迎え酒と無茶苦茶なことを言われながらアルコールに手を出したりしたものだから、今の惨状に至る。
何が嫌かというと記憶がはっきりと残っているからことのほか性質が悪い。
記憶を飛ばせていたらどれほど楽だったか。

これで楽しいといえるほうがどうかしている。
きっとそんなことが言える人間の頭はネジがどこかおかしいに違いない。
つくづく思い出してみてもありえないと思えるのだから―。
この2日間の記憶を思い出していた深岬の口からは自然とため息が零れる。

目の前で溜息を吐く深岬を津田は、じっと目で追いかける。その瞳は、いつものような楽しそうな瞳ではなく、鋭い瞳だった。
自分を置いて過去のことに思いを馳せている深岬に置いていかれたような気分になっているのか。それは、分からない。
ただ、詰まらなさそうな顔をしていることには変わり無い。
津田の自分を見る視線に気づいた深岬がまじまじと対峙する不機嫌な男を見返す。

「な、何よ」
「何で目の前に僕がいるのに、他のこと考えるのさー。めっだよめっ!」

眉間に皺を寄せてまるで子供に叱るように言う男に盛大な疲れを感じる。
もう空になったが、うどんの丼が乗ったトレーを横に退けるとがくりと身体を机の上に伏せる。

「あんたが聞いたんでしょうが。あんたが…」
「僕がつまんないのーっ!」
「ああ、はいはい」

おざなりな返事をすると「よいしょ」と言う掛け声とともに体を起こす。
すかさず、津田の突っ込みが入る。

「深岬ちゃん。おばちゃんみたい」

即座に机の下で深岬の足が津田の脛を蹴り上げ、津田が悲鳴をあげる。
恨みがましい目で見てくる男に深岬はふんっと鼻息荒く顔を横に向ける。
浪人していた学生は、かなりの割合で年を気にする傾向にある。
深岬も然りだった。深岬だけではない、部活などでも深岬の他にもいる。それに、ネタにもされやすいのだ。

「誰が、おばちゃんだって?」
「だって、よいしょっておばあちゃんみたいじゃん…痛っ!」
「まだ言うかっ」
「ごめんなしゃい」
「よろしい」

項垂れた犬のような津田を見て、溜飲を下げるのだった。

「深岬ちゃん。旅行中に何かあったの?」

少し深岬を伺いながらもまだ聞いてくるのに対して、何でそこまで知りたがるのかと相手の顔を怪訝な目つきで見返す。
しかし、にこにこと笑うだけの表情にいつものことながら読めない。
読めないから逆に気持ち悪いし、何だか負けているような気分になって何となく腹立たしい。

「その顔むかつく」
「えーっ!?どーして?」
「どーしても」
「僕は、深岬ちゃん好きだよー」

恥ずかしげもなく恥ずかしい台詞を平然と蕩けそうな笑顔で言う。
坂上のことが好きで、津田のことは何とも思っていない深岬ですらくらりときてしまいそうになる。それこそそんなこと言われた日には、よろめく女がどれだけいることか。
しかし、津田が惜しげもなくそう言うのは深岬に対してだけなのだ。
そんなことは知らない深岬は、津田が誰にでも言っていると思っているだけに勘違いしないようにとそっけない態度を知る。

「ああ、はいはいどーも。それは、彼女に言ってあげなよ」
「彼女にも言うけどね~。深岬ちゃんは特別」

確かに、特別といわれれば特別な扱いは受けている気にはなる。
深岬の姿を見つければ自分の横にいるのが友人だろうが彼女だろうがお構いなしに駆け寄ってくるのだ。
その時の深岬は、いつも犬に懐かれている飼い主のような気分になってしまうのだが…。
特に津田のその姿を目にしたときの彼女やそれらしき人物と思しき者からの視線にはある種、痛いものがある。
彼女達に思うところはあるのだろうが、それでも深岬が面と向かって何かを言われたことはない。津田が上手く抑えているのかそれとも深岬など敵のうちにも入らないと見下しているのかどちらかは定かではないが、何故これほどまでに懐かれるのかは未だ不明というところ。

「そんな特別いらんって前から言ってるでしょうが」
「知ってる~」

でれっと笑う姿をこの男を追い掛け回している女達に見せてやりたいと何度思ったことか。

「こんなところでくっちゃべってないで、さっさと授業行けば?」
「深岬ちゃんは?」
「気持ち悪くてそれどころじゃない」
「何で?」

お前は何でも知りたがる2歳児かと心の中で突っ込みながらぶすっとした口調で「3日酔い」と小さな声で答える。
深岬の顔は真向かいに座る男には向いていなかったが、見えなくても分かるものは分かる。津田の視線をこれでもかというほどに感じる。
そして、ぶっと噴出すような声が聞こえてきたと思ったら次の瞬間には、大笑いされてしまう。
その笑いに少なからず羞恥心を覚える深岬だった。
顔を赤くして未だ笑い続けている男をきっと睨みつけるとぴたりと笑い声は止まったのだが、顔の緩んだ筋肉だけは治らなかったようだった。
にこにこというよりもにやにやという形容詞がぴったりと当てはまる顔つきで深岬を見返す。

「くくっ…一体、どんだけ飲んだのぉ?」
「うるっさいなぁ、もう」
「3日酔いって普通の人はそうそう経験しないでしょー」
「さんっざん、のろけ話聞かされて悔しかったから浴びるように飲んで絡んでやっただけよ」

踏ん反り返って言う深岬にとうとう、津田の整った顔は見事に崩れた。

「自棄酒?うっわー迷惑ー」

それは言われるまでもなく分かっている。
翌朝には、大謝りに謝り倒していい加減にしろと言われたくらいだ。
酔っ払うと面白いと最後に言われたのだが―。
それは、深岬にとっては嬉しくも何もない賛辞だった。褒めて貰えるなら別のところがいいと思うのは自分の我侭なのだろうか――。

そんなことを目の前で大笑いする男に聞けるわけもなく恥ずかしさと何でこんなに笑われなきゃならないのかという次第に腹立たしさが湧いてくる中笑い声が納まるまでそのまま羞恥に赤らめた顔ながらもぶすっとしたような表情で笑いこける男を見続けた。
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