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更新日記と小説(18禁)とたまに嘆き. 嫌いな方・興味のない方・間違っちゃった方はバックバック

2026

0320
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2008

0403

朝早くに設けられた集合時間。
授業や部活の練習などで早起きしなければならない時は、悶絶を繰り返し幾度となく襲い掛かってくる睡魔と五月蝿く存在を主張する目覚まし時計との死闘の末に漸く起きれるというのに、それがどうだろうか。
自分が楽しみにしている日の目覚めは、これでもかというほどにすっきりした目覚めなのだからつくづく人間という生き物は現金な生き物だと深岬は思う。
しかし、家を出て集合場所になっている大学に行くまでの2時間の間、確りと規則正しく揺れる電車の中で睡眠を貪った。
いつもより早起きした所為か、体内時計が狂ったようで、寝過ごしそうになる位だった。
慌てて電車から飛び降りて改札を出た。
集合場所になっている大学の正門に深岬が到着するとすでに人は集まっていた。

―なんでこの人たちは、遊びになるときっちり集合してんのよ…。

とぼやきたくもなるというもの。
練習のときなどは、集合時間に来るほうがバカらしく思えてくるほど深岬の所属しているバドミントン部の部員は時間にルーズだ。
それが、どうだろうか…。
飲みや遊びとなると逆転する。
岬は、普通逆ではないかと考える自分がおかしいのかと思ったことさえある。
しかし、これが彼らなのだから仕方ない。
今日も深岬は決して遅れていないはずなのに…。
すでに集まっていた上級生に「遅い」と文句を言われてしまった時には、言い返してやろうかとすら思った。

―なんでこういう時だけきちんとしているのか…。

と。
しかし、それはすぐに車に荷物入れろという声に消散していった。
促されるままに、車のトランクに1泊用の荷物を押し込み、既に準備を終えて談笑している雪子の元へ行こうとすると背後から声をかけられたので、振り返った。

「なんか、深岬ちゃん久しぶりな感じがするなぁ」

しみじみとそんな言葉を吐くのは、深岬の3つ学年が上にあたる4年の野坂だった。
言われてみれば深岬の方も野坂とこうして顔を付き合わせるのは久しぶりの気がしたので、苦笑を浮かべて同意しておく。

「言われてみれば…すっごい久しぶりな感じしますね」
「まぁ、俺が行ってなかったってのもあるんだけどなぁ」
「あ、私も最近は練習行くだけで、飲み会はあんまり参加してないんですよね。野坂さんは、最近忙しいんですか?」
「まぁ、そこそこ」

微妙な笑いとともに言う野坂に半信半疑のような目を向けると困ったように笑い出す。
そこへ、雪子が顔を出す。

「先輩も深岬も何笑ってんの?」
「ちょっとね」

別に隠すことでもないだろうに、わざとらしく言う野坂に下世話な笑みを浮かべる雪子。

「あーやーしー」
「俺達ラブラブだから」

ぐいっと肩を掴まれて突然のことに驚く深岬に対して、雪子は実にあっさりしていた。

「そんなことどーでもいいですから。さっさと配車するよ」
「つまんねぇ」

雪子がそれ以上絡んでくるつもりがないということが分かると野坂はパッと手を離した。

「先輩調子乗ると面倒だもん」

相手が上級生だろうがなんだろうがお構いなしにずけずけという雪子だったが、相手は別段気を悪くしたような様子を見せることもなく笑ってすでに出来ている輪の中へ入っていった。
深岬も同じように遅れないようにと輪の中に入る。



一体、誰が用意したものかはわからなかったがくじで自分が乗る車が決まる。
深岬は坂上の車だった。
幸運と呼ぶべきかどうかは、時間が経たなければわからないだろう。

ドライバーの坂上は勿論のこと他にもう一人、院生の福田が同じ車になったのだが、福田はすでに車に乗る前から体調を悪そうにしている。
具合でも悪いのかと思って声をかけようとした深岬だったが、漂うすっかり馴染みとなってしまった匂いに心配する必要は皆無だった。

「先輩。もう飲んでるんですか?」

自然と険の篭った声に余程気持ち悪いのかこくこくと頷くだけだった。
返事をするのも億劫な様子に坂上を見ると快活に笑う。

「昨日の夜から野坂さんと飲んでたらしい」
「こ、じまも」

気持ち悪いなら無理に申告しなくてもいいと言うのに、「はぁ」と生返事をして少し離れた位置で別の車に乗り込もうとしている野坂の姿を見た。
だから、あんなにテンション高かったのかと妙に納得してしまう。
そして名前のあがった人物の姿が見つからないことに最初、違和感を覚えるのだがすぐに雪子が視界の隅に入り、仕方ないか…と一人で勝手に結論付けた。

「もう福田さんは、後ろで死んでてください。深岬ちゃん助手席でいい?」
「あ、はい」
「…わ、わりぃ」
「頼むからリバースだけはしないでくださいよ」
「わか…ら、ん」
「ああっもう!」

福田は乗り込むなり後部座席にごろっと横になる。
先に出発した車の後に続くようにしてハンドルをきる坂上だった。
後ろから福田のうめき声のする中、極力小さくされたBGMが鳴る。
時折、音楽に合わせて坂上が歌を口ずさむのを聞きながら、静かな時間を過ごす。
深岬には、何を話していいかわからなかった。少し舞い上がっていたのかもしれない。

下手なこと言ってなんだコイツと思われたくない。
運転中に邪魔かもしれないし…といろいろと考えてしまうと折角、一人は後ろで転がっているだけなのでいないに等しいこのチャンスともいえる場なのに何も自分からアクションを起こすことはできなかった。

車が走りだしてから数十分後。
僅かな振動に眠気を誘われながらもがんばって瞳を開けていた深岬の耳に坂上がふいに思い出したように声をかける。

「なんかこうしてどっか行くの久しぶりじゃね?」
「…あ、ああ。そうですね…野坂さんにも久しぶりな気がするって言われましたよ」
「だって、深岬ちゃん。練習来ても飲み会参加しないで帰っちゃうじゃん」

それは、事実だ。
電車の終電が早いということもあるのだが、毎回毎回雪子の家に厄介になるのも悪い気がしてくるから避けていた。
勿論、それだけではない。
最初は楽しく飲んでいても酒が入ると多少人間の箍が外れるというもの―。
いつの間にか終わりごろには険悪な雰囲気が漂っているということが少なくない。そのことに疲れたというのもある。
苛立ちをぶつける人間や愚痴ばかり零す人間、周りの迷惑を顧みずに騒ぐ者。自分がその中の一人だったらそれは、それで楽しく過ごせるものなのかもしれないが、第三者の立場に立って冷静に見てみるとこれほどみっともないことはない。

最初こそ加減がわからずに酔いつぶれたり、記憶を飛ばしたりしていた深岬だが、回数を重ねれば大体自分の限度もわかってくる。
翌日のつらい思いを自分から率先しては、なりたくない深岬は自然とこれ以上飲むと危険だというラインを決めて飲むようになっていたため、最終的には処理される方ではなく処理するほうとなって飲み会を終える。
それが何度も続けば疲れるというもの―。
それでなくとも大人しい飲み会とは程遠い部活の飲み会からは足が遠のいていた。

何だかんだと理由をつけて帰るようにしていた。
そして、周りも強引に引き止めたりしなかった。

基本、飲みたいやつが飲めばいいというスタンスなのだ。
ついていけないと思っているのは何も深岬だけではなく、他にも数名いる。勿論、深岬と同じ一年生にもいるし上級生にもいるのを深岬は知っている。

「すいませーん。だって、電車なくなっちゃうでしょ?」
「今更じゃん。雪子の家に泊まれば…って無理か」

言いかけて止まったのは、雪子の最近の荒れ具合を思い出したからだった。

「でしょ?」
「じゃあ、俺の家でどう?」
「えー。悪いからいいですよ」
「望もしょっちゅう泊まってくから別にいいのに」

坂上からしてみれば大したことのない事実を述べたまでに過ぎないのだろうが、深岬はそうはいかなかった。
ぴくりと指が揺れる。
何故かひどく動揺している。
理由は、簡単だ。

みっともない嫉妬。それだけだー。

そんな深岬に気づくことなく坂上の口は滑らかに動いていくのだった。
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