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更新日記と小説(18禁)とたまに嘆き. 嫌いな方・興味のない方・間違っちゃった方はバックバック

2026

0320
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2008

0329
9月が終わり、10月に入ると夏の暑さが嘘のように過ごしやすくなっている。
2ヶ月弱の夏休みも終わり、後期の授業が始まり、退屈な授業の時間を過ごす。
眠い目を擦りながら、授業を受けるのだが、どうにも眠くなって仕方ない。
夏休みボケとあまり良かったとは言えないものの前期の単位を無事取得できたことも手伝ってすっかり 気が抜けている深岬だった。
授業を受けていても身に入らない。
それは、横にいる涼子も同じようで…。

「だるい…」
「同じく」

小声で話す声は、恐らく周囲の学生に聞こえているに違いない。
やる気がないなら寝るかとばかりに、深岬がだらりと身を机に突っ伏す。
ふと隣の席に座る涼子の指に嵌まっていたはずの指輪がないことに気づく。
じっと自分の指を見つめてくる深岬の視線に気づいたのか涼子は、「どうかした?」と深岬に尋ねる。

「指輪は?」
「ああ。別れたから」

と躊躇う様子もなくけろっとした顔で答える涼子。
彼女の様子は、実にあっけらかんとしていて全く堪えているようには見えない。
所詮、そういうものだろうか…と深岬は身構える。
信じられないようなものを見るような目で涼子を見返す。

「何で?」
「飽きちゃったから」

絶句。

ふらりと眩暈がしてくる。
思わず相手に同情の念すら抱いてしまう自分は間違っているんだろうか。

「だって…もっといい人見つけちゃったんだもん」

と綺麗にグロスの塗られた口を薄く開いてくすくすと笑う。
女は、怖いとは良く言ったもの。
深岬は、目の前の涼子が恐ろしくなった。
同じ性別の人種だが、ここまで自分と違うとは…。
自分には、到底真似できない。
というよりも、その相手すらいないのだから真似のしようもない……。

とんとんと軽く机を指で叩いて、涼子はある方向を指差す。
ん?と思いながら深岬は、涼子の指先が向いている方向を視線で追いかける。
そこには、深岬がしようとしたように堂々と机の上に身体を預けて気持ちよさそうに寝ている男子生徒がいる。
名前は、もとから覚える気のなかった深岬には、わからない。
但し、顔は見覚えがあった。
初夏の頃、道ですれ違った深岬に笑いかけてきた男だった。
互いに口も利いたことないのに……。

ただ、深岬は涼子の指が示すものが何なのかわからなくて―。
あれがどうしたのだろうとばかりに怪訝な顔つきで涼子を見返すと…。

「良くない?良くない?」
「は?え?ってか誰よ」
「え?知らないの?」

嬉しそうに話す涼子に、深岬は首を傾げる。
深岬の問いに目を見開いて驚いたような表所うをする涼子。
知らないのと聞かれても知らないものは、知らない。
少しむっとしたような表情で答える。

「知らない…」
「津田 旭クン」
「へー、それで」
「もう。深岬ちゃんってば面白くなぁい」

テンションの高い涼子に対して、ローテンションの深岬。
そんな深岬の様子にむぅと頬を膨らませて言う涼子の姿は、傍から見たら可愛いと映るかもしれない。
実際のところは、かなり強かな女ではあるが…。

綺麗に手入れのされた指の爪には、これまた綺麗に塗られたマニキュア。
ノーメイクでも充分可愛い顔には、きちんとしたメイクが施され、常にすっぴんでいる深岬とは全く違う。

津田の方を見ては、はしゃいでいる涼子を見て自分とは何かが違うと感じるのと同時に、羨ましく感じる深岬だった。
何故か深岬は、涼子を見ていて先日会った坂上の彼女の姿を思い出した。
自分でも分からなかった。
でも、まじまじと涼子の顔を見て、もしかしたら似ているかもしれないとも思った深岬だった。
深岬の方を振り返って涼子は小首を傾げて見せた。

「どうかした?」
「ん。別に」
「そう?」

自分は、どうしたら近づけるのか。
真似したところで決して彼女たちのように慣れるわけでもないのに…。
そんなこと分かっているのに、ついつい考えてしまう深岬。
少しでも気に入って貰いたい。
よく見られたい。
気にかけて欲しい。

欲は尽きない…。

そうか…。
そういうことか…。

と深岬は思った。

「ねぇ」
「なぁに?」
「お化粧教えて?」
「…どうしたの?急に」

少しでも近づけるなら…。
待っていたって相手は、寄ってこない。
近づいていかなきゃ…。
自分から、変わらなきゃ。

そうだ。そうなのだ。

突然の深岬の申し出に、涼子は首を傾げていたが、深岬は妙にすっきりとした顔を浮べていた。





待っているだけじゃ何も始まらない。
自分で行動しなきゃ物事は、進まない。
それが、彼女持ちなら尚更のこと。

別に彼女から奪いたいという気持ちはない。

嘘。どこかでそれを望んでる。

でなければ、どこかで気持ちにブレーキが掛かっていいはずだから……。
今のところそんな兆候は現れない。
だからこそ。前進あるのみ。



「何か感じ変わらなかった?」

開口一番にそう聞いてくれる坂上に相好を崩す。
それは、しばらくしてからのことだった。

「そうですか?」

なんて軽く笑いながら…。
気づいてくれたことが嬉しい。

「変わった。変わった。リョウちゃーん、なんか変わったよなぁ深岬」

と近くに居た小島を捕まえて深岬を指差した。

「坂上。人を指しちゃいけません」

寝ぼけているのか、とろんとした眠そうな目で坂上の深岬を指差す人差し指を掴むとぐいっと強い力で変な方向に曲げようとする。
急に走った痛みに坂上が声を張り上げる。

「リョウちゃん!いてぇいてぇ!!」
「あ?ゴメン」

と抑揚のない声で言うものだから全くと言っていいほど誠意を感じることはない。
涙目になりながら、坂上は漸く離して貰えた指にふぅと息を吹きかけながら摩る。
2人のやり取りに、口を挟むこともできないままははっと乾いた笑いを零す深岬。

「深岬ちゃん。カワイクなった」

じぃっと深岬を見つめた後、小島が口にする。
それが、お世辞だと分かってはいても小島ほど整った男に言われれば女として照れるというもの。
びっくりしつつも、顔を紅潮させた。
反応も鈍るというもの。

「んだよ。男でもできたかー?」

などとガキ大将のように歯を見せて笑いながら坂上も深岬の頭をぽんぽん叩いてくる。

お前の所為だよ。

とは、流石に深岬は声にすることはできなかった。

「違いますって」

軽く笑いながら誤魔化してみる。
その後もしばらく、誰だ誰だと詮索してくる坂上を交わしながら、坂上と笑いあえる時間に充実感を感じていた。




練習後、着替えを終えて帰る準備をしていると背中に重みを感じる。

「みぃ~さぁ~きぃ」

でれんと深岬の背中に体重をかけ、わざと一字一字伸ばして名前を呼ぶのは、他でもない雪子だった。
小島に彼女が出来たと知ったときの塞ぎこんでいた様子からは、すっかり復調していた。

「あのねぇ」

ぴくぴくと眉を動かす。

「なぁにぃ?」
「ジャマ!重たい!退けっ!」
「イジワル!!」

後ろを振り返って自分に圧し掛かってくる雪子を押し返す。

「一体、何さ?用があるなら早く言う!」
「じゃ、彼氏できた?」
「は?」

と素っ頓狂な声を上げた深岬に、雪子は「あ、違うんだ」と深岬の表情から答えを読み取った。

「坂上のヤツが言いふらしてたから~、深岬が最近かわいくなったのは男ができたからだって」
「別に変わってないし、男も出来てないし、ただ、ちょこっと化粧してるだけだし」
「えーでも、どういう心境の変化?」

その問いには、ぐっと言葉を飲み込む。
瞬間、雪子の瞳が輝いたように見えたのは、決して気のせいではない…。
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