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更新日記と小説(18禁)とたまに嘆き. 嫌いな方・興味のない方・間違っちゃった方はバックバック

2026

0323
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2007

1028
嫌だと思いつつも順番の回ってきた深岬は、ビールケースの上に立つと覚悟を決める。
腹の底から声を出す。
少しでも小さな声を出そうものなら、それだけで一気飲みのネタになりそうだった。

「おす!体育会系バドミントン部所属!工学部電気工学科1年進藤 深岬と申します!」

前に倣えというような感じで先に自己紹介が終わった新入生達と同じように自己紹介を繰り返すと前に陣取って自己紹介用の酒の準備をしていた坂上と小島がアルコールで赤くなった顔でにっと笑い、「出身は~?」などと聞いてくる。
その意図はわかっていたので、雪子と同じ中学校だったということを言えば、雪子と深岬の2人にコールが掛かる。
雪子達に混ざって飲み会に参加していた深岬に遠慮などというものは、坂上も小島もしない。
確りと飲まされた後、仕返しとばかりに「尊敬する先輩は皆さんです」という返しをして、上級生全員に飲ませるあたりは、まだちゃっかりしているかもしれない。
最後に、「以後、よろしくお願い致します」と言って手にしていたコップを傾けると一気に胃の中に液体を流し込む。
味など感じるものではないとこの数週間で学んだ。
自分の番が終わると何だかそれだけで、疲れてくるようだった。

自分の番が終わっても他の新入生の自己紹介が続く。
一通り終わったかと思っても、まだ更にそこから院に入学した者や、3月に卒業したばっかりで遊びにきていた社会人の自己紹介。
果ては、次期主将、副主将と何かとかこつけて続いていき、飲み会の雰囲気はエスカレートしていく。
ひどい…。その一言に尽きる。
自己紹介がひと段落しても、入れ替わり立ち替わり表れる上級生の乾杯攻撃に辟易しながらも応対し続けた深岬だった。
一次会が終わる頃には、相当酔っ払っている者もいたし、今にも寝ていきそうな者もいる。
飲み会の雰囲気に圧倒されて、若干困ったような顔をしている新入生の姿もあった。
逆にすっかりなじんでいる姿も多く見られた。
電車の時間があるからと帰る者もいたが、勿論深岬は帰れるわけもなく。
始まる前から荷物を雪子の家に預けた時点で帰る気はゼロと言った方が、正しいだろう。
少し人数の減った団体で、二次会の会場となるカラオケに向かう。
カラオケも基本的に変わりはなかった。
歌を歌うのに熱中する人間もいれば、酒を飲む事に夢中の人間もいる。
2時間ほどその場所で過ごして、解散となったのだが、そこで大人しく帰るような集団ではない。
家に帰るものもいれば、次どこに行くかと話をしているものもいる。
深岬はと言えば、泊めてもらう先が雪子の家だったので、必然的に雪子と行動を共にすることになる。

「雪子ん家で3次会するぞー」

と言って歩き出した集団の中に深岬はいた。
会場が泊めてもらうはずの家なのだから仕方ない。
10人くらいの団体で移動する。
そこで別段酒の買い足しをする必要がないのだから不思議なものだ。
勝手知ったるなんとやらで雪子の家の中を闊歩する姿は、ここで相当の飲み会が開かれているということを示している。
新入生では、深岬と望の姿があり、上級生は雪子の家でよく飲んでいる者達プラス何人かと言ったところか。
手際よくコップや氷を並べていく雪子に、酒の入ったボトルを持ち出して人数分の酒を作りだす坂上の姿。

「…っし、乾杯ー」

という声にあわせて先ほどまでの居酒屋での1次会、2次会のカラオケのような激しさはないが、次々にコップを空にしていく姿にどれだけザルなのかと思わずにはいられない深岬だった。
この日、最後まで付き合わされた深岬が翌日、2日酔いに苦しんだことは言うまでもない。

その翌日も朝から、飯行くぞと連れ出された深岬だったが、勿論気持ち悪さと格闘する彼女にまともな食事などできるわけがなかった。
そんな深岬の姿を見て、はるかに深岬を上回る量で飲んでいた坂上は、その姿を笑い飛ばし雪子に頭を叩かれていた。



新歓を機にして、練習に参加する人数が格段に増えた。
授業の都合などもあり、毎回の練習人数はばらばらだったが増えたことは確実だった。
その中でも注目を集めているのは、初心者ばかりの学年にあって経験者の深岬や麻美であった。

「今度の交流戦。深岬ちゃん行く?」
「行くけど…麻美ちゃんは」

麻美とペアを組んで練習していると麻美から尋ねられ、きょとんとしたように麻美の顔を見返す。

「さっきね、久保田さんと話をしてて、一年生用にいくつかエントリーしてあるんだって、それで出ないかって?」
「久保田さんが?」

別の深岬達とは少し離れたコートで練習している久保田に視線を向ける。
久保田を見ながら、深岬の中で疑問が湧く。

「シングルス?ダブルス?でも、ペア組めるほど練習してないよね」

ダブルスなど即席で組むようなものでもないだろうと思った。

「両方一応あるみたい。別に他の大学との交流戦だから、ほんとお遊びみたいなものだし、様子見程度で組んでも面白いみたいなこと言ってたけど?」

麻美から返ってきた答えにそんなものなのかと思いつつ、わかったということを示すように一回頷いた。

「そうなんだ。え、でも一年生って誰が行くの?どっちかでしょ?」
「何か、見学だけって子ならいっぱい。ほら、やっぱり初心者の子が多いじゃんね。だから今回はあんまり出たくないって子が多いみたいだから、出たかったらどっちもOKらしいけど?」
「まぁ、そりゃそっか」
「出る?」
「ん、まぁ折角だし、出れるなら出ようかな」

とあまり気乗らない様子の深岬だったが、折角あるならとりあえず出てみるかと曖昧な返事をした。
すると麻美は、目を輝かせたように深岬の手を掴んでくる。

「あ、じゃあ、ダブルス組もうよ」

別に深岬に断る理由もなかったので、頷く。

「もちろんシングルスも出るよね?じゃ!私、久保田さんに言ってくる」

と今度は深岬の返事を聞くことなく一方的に言うと一目散に駆けて久保田のところによっていく。
何であんなにやる気が出てくるのか。まるで自分とは全然違うなぁと麻美の後ろ姿を見ながら疑問を感じつつも、なんだかんだで毎回のように練習に参加している自分も似たようなものかと思った深岬だった。

ただ、一年以上のブランクのある自分に少し不安感に似たものを抱いていたのだが、麻美の言葉通り、本当にお遊びのような試合に直ぐにそれが杞憂であると気づくのだった。
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