「俺は、絶対に部内と学科内では、彼女は作らないって決めてる」
合宿の丁度中間日にあたる水曜日の午後。
深岬が時間を潰す目的で合宿所に顔を出したところ、バドミントン部が借りている部屋に入る前に4年生の福田とばったり遭遇し、中で大の字になって寝ている小島と坂上を見つけた。
小島と坂上を起こして、その後、急遽部員を集めてどこかへ行こうという話に発展した。
坂上と野坂が主に部員に声をかけてぞくぞくと合宿所に人が集まってきた。
もちろん、全員が集まったわけではないのだが――。
本当に思いつきでだが、ボーリングに出かけて食事に出かけた。
小さな店に15人以上の大人数で乗り込んだため、ほとんどその人数で店全体を埋め尽くしてしまった。
生憎と他の客がいなかったから良かったようなものだった。
そして、深岬たちが外に出た時には、陽も落ち、すっかり暗くなっていた。
大学までの帰り道で、坂上の車に乗り合わせた深岬が聞いた坂上の言葉だった。
彼のその言葉は、坂上なりの持論というところか。
部員同士で気が合い、付き合うこともそう珍しいことではない。
男女が同じ空間で共有する時間が多いだけ存分にありえる。
深岬の所属するバドミントン部でも何組かのカップルが存在している。
あからさまに分かりやすいカップルも居れば、他人から教えられるまで全く気づかないカップルもいる。
深岬は、別にその付き合いを否定する気はなかったが、坂上は彼の様子から判断するとどうも違うらしい。
坂上の座る運転席からは斜め後ろになる助手席側の後部座席に座った深岬は、ハンドルを操縦する坂上の斜め横顔を後ろから見つめた。
あまりにも突然言い出したから驚いたということもある。
何故急に言い出したのか。
「それ。前にも聞いたよー」
けらけら笑いながら、そう返したのは、助手席に座る望だった。
何が面白いのか深岬にはわからない。
「あれ?言ったっけ?」
覚えがないのか坂上は首を傾げている。
坂上の言葉に興味が湧いた深岬は、彼がそう思うに至った理由が知りたくなった。
「何でですか?」
「やー。別に当人達がそれでいいんならいいんだよ。そこまで、全否定するわけじゃなくて…。別れた後、面倒くせぇじゃん」
確かに…。と深岬は納得する。
付き合っている間はいいとしても、別れた後は周囲の人間も気を遣わざるを得ないだろう。
当人達もぎすぎすした関係になるだろうし、たとえ彼らが気にしないでくださいと声を大にして言ったところでそれは難しいというものだ。
どうしても腫れ物に触るような扱いをしてしまう。
「周りも気を遣うしさ。本人達も気まずいだろうしなぁ。去年、俺達の学年でそれで部活を辞めてった奴もいるしさ」
「ああー。アイツラね。俺達の学年にもいたしなぁ」
同乗していた上級生が納得したように頷く。
過去の記憶を思い出しているのかうんうんと頷いている。
横に座っている上級生の顔を横目で確認する深岬。
彼の顔には、苦笑いが浮かんでいる。
「あんときゃあ、ひどかったっすよね」
「確かにな~。お前らの学年すっげーぎこちなかったもんなぁ」
「かき乱すだけかき乱して後はさいならって。ふざけんじゃねーよっつーんすよ」
「はは…」
乾いた笑い。
2人ともあまり良い思い出ではないのかそんな笑いだった。
「そりゃ、部の中にはさ、部内恋愛活性なんて冗談半分で言ってるヤツらも居るけどさー」
「あー慶子とか、雪子とかな~。冗談でもないだろ?アレは…」
「あいつらも自分の好きなヤツが部内にいるだけで言ってるだけだろ?動機が不純なんだっつーの」
「あいつらはそーだろな」
坂上の言葉に納得したように頷く上級生とそのことに不満があるのか坂上はまだ何かぶつぶつと言っていたが、深岬は上の空で聞きながら、果たしてそうなのだろうかと考える。
確かに、後のことを考えると必ずしも誉められたことではない。
だが、人の気持ちなんて止められるものでもないだろう。
気付けばなんてこと良くあることじゃないのか。
夕食を済ませた小さな店での雪子の姿を思い出す。
小島の横に座る雪子は、これでもかというほど小島の世話を焼いていた。
別に小島だけでなく、同席した他の人間も同じように世話を焼いていたが、それは一重に小島が居たからだということくらい誰が見たってわかる。
深岬だけでなく、他の新入生や上級生も苦笑いを浮かべていた。
それでも、雪子の気持ちも分かるから彼女の行動を咎めることもできない。
それは、他の人間もそうなのか。それともその姿を見て楽しんでいるだけなのか。茶化すことはしても誰も非難などしない。
相手によく見られたいそれは、誰でも一緒だろう。
自分の中で境界を敷いたところでセーブできるのだろうか。
出来ないと思うのは、まだ自分が恋という感情をあまり上手く把握できていないからなのか。
まだ子供の証拠だからなのか。
笑って語る坂上の顔を見ながら、何故そこまで自信を持って近くの距離にいる人間とはそうはならないと断言できるのか。
分からなかった。
坂上の言うことも尤もだが、自分に置き換えて考えると必ずしも大手を振って頷くことなどできない。
そう思った。
更新日記と小説(18禁)とたまに嘆き.
嫌いな方・興味のない方・間違っちゃった方はバックバック
2008
快調に飛ばしてます。
講座連日3話UPです。
とは言いましても改訂前の話を切ったり貼ったり消したり追加してるだけなんですけどね。
そろそろ失速します。
15話は、前のお話にはなかった部分なので少し時間がかかりそうです。(失速宣言です)
講座連日3話UPです。
とは言いましても改訂前の話を切ったり貼ったり消したり追加してるだけなんですけどね。
そろそろ失速します。
15話は、前のお話にはなかった部分なので少し時間がかかりそうです。(失速宣言です)
2008
徐々に合宿所の一室に人が増えていく。
人が増えていってるが、まだ増やそうとする坂上にどれだけ集めれば気が済むのかと深岬は思いながら見ていた。
「どこ行くんだぁ?」
と言いながら福田が入ってくる。
坂上は携帯片手に福田の顔を見つけると頭だけを下げる。
その顔はどこか嬉しそうな顔をしている。
「お、深岬ちゃんだ」
「ども…」
深岬の姿を見つけてにっと笑う福田。
釣られるようにして深岬も笑みを浮かべる。
深岬の耳に坂上の電話の相手との会話が聞こえてくる。
「あ、望?絵里ちゃんも一緒?」
望に連絡を取っているということがわかる。
ただ、そこには、自分との間にはない親密さのようなものを深岬は感じる。
「はぁ?出なくていいよ、その授業。何とかなるなる。え?出るの?じゃあ、終わったら来いよ。ああ、うん。待ってるから」
坂上は、その後も続けて電話を掛け始める。
「麻美。何だよ?機嫌悪ぃな」
苦笑を浮かべながら電話の向こうにいる麻美と会話をする坂上の姿。
私が、この場にいなかったら坂上はこうやって連絡をくれただろうかと考えながら深岬は電話の相手と話をしている坂上を見続けた。
「麻美のヤツ、機嫌悪いでやんの」
用済みとなった携帯電話をジーンズのポケットの中にしまいながら、坂上は笑いながらすでにその場に集まってきていた上級生や新入生に向かって言う。
「何かあったの?」
「さぁ?3年がいないからじゃねぇ?」
至極つまらなさそうに言う坂上に、上級生は苦笑を浮かべた。
「麻美ちゃん。3年生大好きだもんねぇ」
「そこがサカガミには、面白くないんだねー」
「違いますよ。麻美じゃなくて3年がノリ悪いから…」
「はいはい。そういうことにしておこうか」
坂上の反論も上級生は笑いながら流しているが、深岬はその会話をほとんど聞いてはいなかった。
もやが掛かったように入ってはこなかった。
すぐに、その場では別の会話が始まっていた。
そこでも中心にいるのは、坂上だ。
「俺。この前、学科の新歓があったんですけどね。クラスの女子に女装させられたんすよ」
「サカガミがぁ?」
「気色悪いかも…」
「しっつれーなこと言わないでくださいよ」
自分から振った話に茶々をいれられ、笑いながらも文句を言う。
しかし、それは反感を買うようなものではなく、その場を和ませるものだ。
「そのカッコがさー見事に望に見つかって滅茶苦茶、笑われたんですから」
「あれ?学部一緒だったけ?」
「そうです。同じ経済学部経済学科ですよ。アイツ、一目散に俺のところに走ってきやがって、開口一番に大きな声できしょっ!ですよ」
「あー何となく望ちゃんの気持ちわかるわ」
「何で!?俺の気持ちは?」
「えーサカガミは、それでも楽しんでそうだから」
会話の弾むその輪の中にいるのだが、中に入っていけない。
一種の疎外感のようなものを感じ、近くにいるのに遠くにいるようなそんな感覚に陥る。
顔には、合わせたように笑みを浮かべるだけ。
何で自分がそんな思いをしているのかすら深岬にはわからない。
自分の感情をもてあましていた。
坂上が呼び出した望と絵里が合宿所に顔を出すとがらりと雰囲気が変わる。
良い意味で場の空気が読めないというか何というか。
「サカガミは急すぎるし!」
と部屋に座って談笑していた坂上の姿を見つけると望は彼に駆け寄っていく。
早々に望の口から零れたのは、急に呼び出されたことに対する不満。
だが、望の不満の声にも坂上はにっと笑うだけで、全く答えた様子なんてない。
望も坂上のことを呼び捨てで呼んでる…と呆然と見つめていた深岬のもとに、望と一緒に部屋に姿を見せた絵里が寄ってくる。
「急に坂上さんから連絡あるからびっくりした」
「授業中だった?」
「まぁね…。でこの大人数何?」
「どっか行くみたいな雰囲気だよ」
絵里に状況を説明しているとガラッと部屋のドアが開く。
部屋に居座っていた人間の視線がそちらに向く。
「うわっ、何コレ」
驚いた雪子の姿がある。
「げっ…忘れてた」
とまずそうな声をあげる坂上に雪子の視線が飛ぶ。
「坂上?」
「わりぃわりぃ。これから皆でどこか行こうっつー話をしてたんだけどよ…お前に連絡すんの忘れてた」
「ちょっとひどくない!?」
眦を吊り上げて怒りの声をあげる雪子に両手を顔の前に突き出して謝る坂上の姿。
「サカガミひどー。雪子さんカワイソー」
「もっと言ってやって」
それに便乗するように坂上の傍にいた望が言う。
非難の目を向けられて坂上は、慌てたように同じ空間にいた小島を引き合いに出す。
「リョウちゃんには、怒らないのかよ!?」
「ん?」
急に名前を出された小島はとぼけた顔で騒ぎの一団を見る。
「あの顔は、今まで寝てた顔でしょ!」
「さっすがーよく見てるな」
「茶化すなっ!!」
ゴンっという音とともに坂上の頭に雪子の拳がめり込む。
悲鳴をあげる坂上にふんっと鼻息荒く背を向けると雪子は当然のように小島の横に行って座る。
「凶暴女」
「なんか言った?」
「地獄耳」
「もう一回が殴られたい?」
「坂上も雪子もいい加減にしとけよー」
もう一度始まりそうな坂上と雪子の勢いに見かねた上級生が苦笑を浮かべつつ諌める。
するとそれ以上はお互いに何も言わなかった。
「え…と、車出せる人何人いますか?」
と漸く本題に入る。
上級生の何人かが手をあげているのを坂上は数える。
「こんだけありゃあ十分かな?じゃ、今手上げてくれた人、車出して貰っていいですか」
「はいはーい」
「正門でいい?」
と言って数人が姿を消していく。
坂上と小島も立ち上がると部屋を出て行く前に坂上が振り返る。
「あ、望。付く頃に電話するから」
「うん。わかったー」
同じ学年の雪子ではなく、坂上がそう言ったのは深岬と同じ学年の望だった。
普通は同じ学年の雪子に頼むところを何でだろうとこの時、深岬はただ漠然と思っていた。
深岬がそう思った理由に気付くようになるのはもう少し―ほんの少し先のことだった。
人が増えていってるが、まだ増やそうとする坂上にどれだけ集めれば気が済むのかと深岬は思いながら見ていた。
「どこ行くんだぁ?」
と言いながら福田が入ってくる。
坂上は携帯片手に福田の顔を見つけると頭だけを下げる。
その顔はどこか嬉しそうな顔をしている。
「お、深岬ちゃんだ」
「ども…」
深岬の姿を見つけてにっと笑う福田。
釣られるようにして深岬も笑みを浮かべる。
深岬の耳に坂上の電話の相手との会話が聞こえてくる。
「あ、望?絵里ちゃんも一緒?」
望に連絡を取っているということがわかる。
ただ、そこには、自分との間にはない親密さのようなものを深岬は感じる。
「はぁ?出なくていいよ、その授業。何とかなるなる。え?出るの?じゃあ、終わったら来いよ。ああ、うん。待ってるから」
坂上は、その後も続けて電話を掛け始める。
「麻美。何だよ?機嫌悪ぃな」
苦笑を浮かべながら電話の向こうにいる麻美と会話をする坂上の姿。
私が、この場にいなかったら坂上はこうやって連絡をくれただろうかと考えながら深岬は電話の相手と話をしている坂上を見続けた。
「麻美のヤツ、機嫌悪いでやんの」
用済みとなった携帯電話をジーンズのポケットの中にしまいながら、坂上は笑いながらすでにその場に集まってきていた上級生や新入生に向かって言う。
「何かあったの?」
「さぁ?3年がいないからじゃねぇ?」
至極つまらなさそうに言う坂上に、上級生は苦笑を浮かべた。
「麻美ちゃん。3年生大好きだもんねぇ」
「そこがサカガミには、面白くないんだねー」
「違いますよ。麻美じゃなくて3年がノリ悪いから…」
「はいはい。そういうことにしておこうか」
坂上の反論も上級生は笑いながら流しているが、深岬はその会話をほとんど聞いてはいなかった。
もやが掛かったように入ってはこなかった。
すぐに、その場では別の会話が始まっていた。
そこでも中心にいるのは、坂上だ。
「俺。この前、学科の新歓があったんですけどね。クラスの女子に女装させられたんすよ」
「サカガミがぁ?」
「気色悪いかも…」
「しっつれーなこと言わないでくださいよ」
自分から振った話に茶々をいれられ、笑いながらも文句を言う。
しかし、それは反感を買うようなものではなく、その場を和ませるものだ。
「そのカッコがさー見事に望に見つかって滅茶苦茶、笑われたんですから」
「あれ?学部一緒だったけ?」
「そうです。同じ経済学部経済学科ですよ。アイツ、一目散に俺のところに走ってきやがって、開口一番に大きな声できしょっ!ですよ」
「あー何となく望ちゃんの気持ちわかるわ」
「何で!?俺の気持ちは?」
「えーサカガミは、それでも楽しんでそうだから」
会話の弾むその輪の中にいるのだが、中に入っていけない。
一種の疎外感のようなものを感じ、近くにいるのに遠くにいるようなそんな感覚に陥る。
顔には、合わせたように笑みを浮かべるだけ。
何で自分がそんな思いをしているのかすら深岬にはわからない。
自分の感情をもてあましていた。
坂上が呼び出した望と絵里が合宿所に顔を出すとがらりと雰囲気が変わる。
良い意味で場の空気が読めないというか何というか。
「サカガミは急すぎるし!」
と部屋に座って談笑していた坂上の姿を見つけると望は彼に駆け寄っていく。
早々に望の口から零れたのは、急に呼び出されたことに対する不満。
だが、望の不満の声にも坂上はにっと笑うだけで、全く答えた様子なんてない。
望も坂上のことを呼び捨てで呼んでる…と呆然と見つめていた深岬のもとに、望と一緒に部屋に姿を見せた絵里が寄ってくる。
「急に坂上さんから連絡あるからびっくりした」
「授業中だった?」
「まぁね…。でこの大人数何?」
「どっか行くみたいな雰囲気だよ」
絵里に状況を説明しているとガラッと部屋のドアが開く。
部屋に居座っていた人間の視線がそちらに向く。
「うわっ、何コレ」
驚いた雪子の姿がある。
「げっ…忘れてた」
とまずそうな声をあげる坂上に雪子の視線が飛ぶ。
「坂上?」
「わりぃわりぃ。これから皆でどこか行こうっつー話をしてたんだけどよ…お前に連絡すんの忘れてた」
「ちょっとひどくない!?」
眦を吊り上げて怒りの声をあげる雪子に両手を顔の前に突き出して謝る坂上の姿。
「サカガミひどー。雪子さんカワイソー」
「もっと言ってやって」
それに便乗するように坂上の傍にいた望が言う。
非難の目を向けられて坂上は、慌てたように同じ空間にいた小島を引き合いに出す。
「リョウちゃんには、怒らないのかよ!?」
「ん?」
急に名前を出された小島はとぼけた顔で騒ぎの一団を見る。
「あの顔は、今まで寝てた顔でしょ!」
「さっすがーよく見てるな」
「茶化すなっ!!」
ゴンっという音とともに坂上の頭に雪子の拳がめり込む。
悲鳴をあげる坂上にふんっと鼻息荒く背を向けると雪子は当然のように小島の横に行って座る。
「凶暴女」
「なんか言った?」
「地獄耳」
「もう一回が殴られたい?」
「坂上も雪子もいい加減にしとけよー」
もう一度始まりそうな坂上と雪子の勢いに見かねた上級生が苦笑を浮かべつつ諌める。
するとそれ以上はお互いに何も言わなかった。
「え…と、車出せる人何人いますか?」
と漸く本題に入る。
上級生の何人かが手をあげているのを坂上は数える。
「こんだけありゃあ十分かな?じゃ、今手上げてくれた人、車出して貰っていいですか」
「はいはーい」
「正門でいい?」
と言って数人が姿を消していく。
坂上と小島も立ち上がると部屋を出て行く前に坂上が振り返る。
「あ、望。付く頃に電話するから」
「うん。わかったー」
同じ学年の雪子ではなく、坂上がそう言ったのは深岬と同じ学年の望だった。
普通は同じ学年の雪子に頼むところを何でだろうとこの時、深岬はただ漠然と思っていた。
深岬がそう思った理由に気付くようになるのはもう少し―ほんの少し先のことだった。
2008
縮小中と掲示しておきながらいろいろと更新してみました。
Salvationのストレージページに11~13話分追加。
begginingは13話までです。
しばらく書かないつもりだったくせに講座も書いて追加してみたり。
今回、講座は凄く時間がかかってしまいました。
今日くらい休んでやるということで研究室にいかない分時間があったのでこちょこちょと弄り倒す。
みんな実家に帰ってて暇だったんですよ。
Salvationのストレージページに11~13話分追加。
begginingは13話までです。
しばらく書かないつもりだったくせに講座も書いて追加してみたり。
今回、講座は凄く時間がかかってしまいました。
今日くらい休んでやるということで研究室にいかない分時間があったのでこちょこちょと弄り倒す。
みんな実家に帰ってて暇だったんですよ。
2008
深岬の所属するバドミントン部では、6月の半ばに毎年恒例で一週間ほどの合宿がある。
大学内に体育会用の合宿所が存在するのだが、そこを借り切って合宿を行う。
スケジュール上では、月曜から金曜までの5日間となっており、きちんといつもよりも練習時間が多く組まれている。
金曜までとなっているが、土曜日に他大学との交流戦が組まれている故に基本的には一週間まるまる合宿のようなものだ。
土曜日に帰ってきてから飲めるように合宿所は例年通り日曜まで押さえられている。
勿論、6月という時期だ。
大学の授業もあるのだが、その間は、朝練と夕方の練習が毎日のように組まれている。
昼間は学校。
当然、死活問題になってくるのは食事・風呂だが、食事は朝練と夕練の後にまとまってみんなで食べにいくということで何とかなる。
風呂は、大学近辺に住む下宿生の家で入るという強硬策が何年もの間とられてきている。
そして、毎晩のように飲み会が開かれる。
集まればすぐに酒に直結するのは、酒好きの集団ゆえに致し方ないといったところだろうか。
この微妙な時期に合宿をする目的として、第一にあるのはやはり練習なのだが、この時期大体新入生の数が確定する。
練習に参加する顔ぶれも固定してきたり、新歓には来なかったが後から入部を希望してきたものとの距離感を縮めるものとしてこの合宿は重宝されるのだ。
参加・不参加が自由となっている4年生や院生も度々姿を現しては、むしろ下級生よりも盛大に暴れるだけ暴れて帰っていく。
既にその合宿も水曜日を迎えていた。
部員の疲れなども考えてか、水曜日の午後からは、練習が組まれておらず帰りたいと希望すれば一日だけは、家に帰ることも可能だ。
深岬は授業の終わりと同時に伏せていた顔をあげると眠そうに大きなあくびをしながら、眠たい目を擦る。
きょろきょろと横を振り返り、涼子の姿を確認する。
「終わったぁ?」
と寝ぼけた声で尋ねれば涼子は苦笑を浮かべながらも終わったよと教えてくれる。
朝練をした後の授業を正直重たい。
襲ってくる睡魔に勝てずに授業始まると同時に落ちた深岬だった。
一応、出すだけ出しておいたノートをカバンの中に仕舞うと立ち上がる。
「眠いっ。ご飯ご飯」
「どこ行く?」
「午後から授業もないし、外にいこ」
「いいねぇ。そーしよ」
と言いながら、外に向かって歩きだした深岬と涼子だった。
昼からの授業がなかったために、のんびりとした時間を過ごして、大学へ戻る途中の道に1人暮らしをしている涼子は、家に帰ると言ったので、手を振って別れると深岬は1人になったままふらふらと大学への道を歩きながら、どうしようかと考えながら歩く。
合宿所に顔を出せば、誰かいるだろうかと思いつつ合宿所までの道を歩いていると途中で見知った顔とすれ違う。
学科のクラスメートで、必然的に同じ授業を受ける機会が多いので自然と顔も覚えていく。
入学当初、むさくるしい面々に気を取られて気づかなかったのだが、数多くのむさ苦しい男どもに混じっていた数少ない顔立ちの整ったクラスメートの1人だった。
何で気づかなかったのかと思うほどの整った顔立ちに上背のある細身の体。
合コンに行けば必ずと言っていいほど、注目を集めるだろうなと思いつつも深岬は、さほど興味はわかなかったので、顔だけは覚えていたが、名前までは覚えていなかった。
やはり、周りが放っておかなかったらしく、彼の横にはスレンダーな美女が手を組んで歩いている。
生憎と女の方は、深岬は知らなかったが、やっぱりなと思いつつ、不躾にも一枚の絵のようにお似合いの2人の姿を見つめていた歩きながら見つめていた深岬だったが、相手も深岬の視線に気づいたのか男の方―深岬のクラスメートと目が合う。
―まずい。じろじろ見すぎた。 …と思って深岬が目を逸らそうとしたが、向こうも深岬の顔を覚えていたのか、じっと深岬の顔を見てきた。
突然のことに困惑しながらも、深岬はわざとらしく視線を外したのだが、男から視線を外す直前、彼が深岬を見てにっこりと笑ったのを見逃さなかった。
顔見知りだから挨拶代わりに笑った程度なのだろう。
だが、綺麗とか可愛いなどという形容とはまるで縁のない深岬にとって、整った顔立ちの男から微笑まれることなど滅多にないことで、耐性のない深岬はすっかり動揺してしまい、ばくばくと脈打つ心臓を抱えたまま足早に彼の近くから去った。
心臓の上の辺りを手で押さえながら、足だけを早く動かす。
気付けば、いつの間にか合宿で利用している合宿所の前に来ていた。
立ち止まって一度深呼吸をして気持ちを落ち着けると合宿所の中へと入っていく。
もしかしたら、誰もいないかもしれない―と思いながら。
すれ違った男の存在を頭から消すように深岬は、中へと足を踏み入れた。
「あっれぇー深岬ちゃんじゃん。授業は?」
と馴染みの声がすぐに聞こえてきて深岬は声のした方を振り返った。
にっと人好きのする笑みを浮かべて深岬のほうに向かってくるのは、野坂だった。
ほっと肩から力を抜いて深岬も軽く笑いながら答える。
「授業はないので、来ちゃいました」
「オレもオレも。あれ?なんか顔赤くない?」
どきりと一瞬緊張が走ったが、すぐに首を振って「そうですか?」ととぼけてみせた後、話題を逸らす。
「誰かいますかね?」
「多分、誰かはいる気がするんだよねー」
と言って先に歩き出した野坂の後を追いかけて深岬も合宿所の廊下を歩き、一番奥にあるバドミントン部が借りている部屋へと向かう。
とりあえず、野坂がいたことで退屈な時間は過ごさずに済みそうだと思いながら歩いていった。
先を行く野坂が合宿所のドアを開けると、数人というよりも坂上と小島が先客として広い部屋の中央に大の字になって寝ている姿があり、一瞬驚いて目を見開く。
「ははっ、こいつら寝てらー。おーい起きろー」
寝ている2人の体を足で蹴りながら野坂が声をかけていると2人のうめき声のようなものがした後、のっそりとした動きで坂上が先に体を起こす。
坂上は険しい顔をしながらも起き上がるとそこにいる野坂と深岬の顔を見つけて、横でいまだ大の字になって寝ている小島の体をゆする。
「リョウちゃん、リョウちゃん」
「んーサカガミぃ?」
「起きろって、人が来た」
「みず…」
寝ぼけ眼で言う小島に坂上は、ばしんと頭を一回叩く。
「オレは、雪子じゃねぇよ。自分でとってこい」
坂上が笑いながら言うと小島は、立ち上がってふらふらの足取りで水を取りにいく。
野坂は苦笑を浮かべたまま2人の姿を見ていた。
「あれ?野坂サン、何してるんですか?深岬ちゃんも…」
明らかにとってつけたかのような坂上の言葉に、深岬も苦笑を禁じえなかった。
あまり良い気分ではなかったが、気にしないようにした。
「授業なくてヒマだったから誰かいるかなと思って覗いたら、お前ら寝てんだもん」
「寝かしておいてくださいよー」
「ヤダ。なぁ?深岬ちゃん」
と同意を求められても深岬には答えに困るだけだ。
曖昧な笑いを浮かべていると、坂上が頭をがしがしとかき乱す。
「…っし!どっか行きますか?」
「いいねぇ」
「んじゃ、雪子たちにも連絡取るか?」
「あ、オレも誰か呼ぼうっと」
どこかに連絡し始めた坂上と野坂を深岬は黙ったまま見ているしかなかった。
深岬とは違いまだ覚醒していない小島ははっきりとしない頭で深岬と同じように坂上と野坂の姿を見ていた。
大学内に体育会用の合宿所が存在するのだが、そこを借り切って合宿を行う。
スケジュール上では、月曜から金曜までの5日間となっており、きちんといつもよりも練習時間が多く組まれている。
金曜までとなっているが、土曜日に他大学との交流戦が組まれている故に基本的には一週間まるまる合宿のようなものだ。
土曜日に帰ってきてから飲めるように合宿所は例年通り日曜まで押さえられている。
勿論、6月という時期だ。
大学の授業もあるのだが、その間は、朝練と夕方の練習が毎日のように組まれている。
昼間は学校。
当然、死活問題になってくるのは食事・風呂だが、食事は朝練と夕練の後にまとまってみんなで食べにいくということで何とかなる。
風呂は、大学近辺に住む下宿生の家で入るという強硬策が何年もの間とられてきている。
そして、毎晩のように飲み会が開かれる。
集まればすぐに酒に直結するのは、酒好きの集団ゆえに致し方ないといったところだろうか。
この微妙な時期に合宿をする目的として、第一にあるのはやはり練習なのだが、この時期大体新入生の数が確定する。
練習に参加する顔ぶれも固定してきたり、新歓には来なかったが後から入部を希望してきたものとの距離感を縮めるものとしてこの合宿は重宝されるのだ。
参加・不参加が自由となっている4年生や院生も度々姿を現しては、むしろ下級生よりも盛大に暴れるだけ暴れて帰っていく。
既にその合宿も水曜日を迎えていた。
部員の疲れなども考えてか、水曜日の午後からは、練習が組まれておらず帰りたいと希望すれば一日だけは、家に帰ることも可能だ。
深岬は授業の終わりと同時に伏せていた顔をあげると眠そうに大きなあくびをしながら、眠たい目を擦る。
きょろきょろと横を振り返り、涼子の姿を確認する。
「終わったぁ?」
と寝ぼけた声で尋ねれば涼子は苦笑を浮かべながらも終わったよと教えてくれる。
朝練をした後の授業を正直重たい。
襲ってくる睡魔に勝てずに授業始まると同時に落ちた深岬だった。
一応、出すだけ出しておいたノートをカバンの中に仕舞うと立ち上がる。
「眠いっ。ご飯ご飯」
「どこ行く?」
「午後から授業もないし、外にいこ」
「いいねぇ。そーしよ」
と言いながら、外に向かって歩きだした深岬と涼子だった。
昼からの授業がなかったために、のんびりとした時間を過ごして、大学へ戻る途中の道に1人暮らしをしている涼子は、家に帰ると言ったので、手を振って別れると深岬は1人になったままふらふらと大学への道を歩きながら、どうしようかと考えながら歩く。
合宿所に顔を出せば、誰かいるだろうかと思いつつ合宿所までの道を歩いていると途中で見知った顔とすれ違う。
学科のクラスメートで、必然的に同じ授業を受ける機会が多いので自然と顔も覚えていく。
入学当初、むさくるしい面々に気を取られて気づかなかったのだが、数多くのむさ苦しい男どもに混じっていた数少ない顔立ちの整ったクラスメートの1人だった。
何で気づかなかったのかと思うほどの整った顔立ちに上背のある細身の体。
合コンに行けば必ずと言っていいほど、注目を集めるだろうなと思いつつも深岬は、さほど興味はわかなかったので、顔だけは覚えていたが、名前までは覚えていなかった。
やはり、周りが放っておかなかったらしく、彼の横にはスレンダーな美女が手を組んで歩いている。
生憎と女の方は、深岬は知らなかったが、やっぱりなと思いつつ、不躾にも一枚の絵のようにお似合いの2人の姿を見つめていた歩きながら見つめていた深岬だったが、相手も深岬の視線に気づいたのか男の方―深岬のクラスメートと目が合う。
―まずい。じろじろ見すぎた。 …と思って深岬が目を逸らそうとしたが、向こうも深岬の顔を覚えていたのか、じっと深岬の顔を見てきた。
突然のことに困惑しながらも、深岬はわざとらしく視線を外したのだが、男から視線を外す直前、彼が深岬を見てにっこりと笑ったのを見逃さなかった。
顔見知りだから挨拶代わりに笑った程度なのだろう。
だが、綺麗とか可愛いなどという形容とはまるで縁のない深岬にとって、整った顔立ちの男から微笑まれることなど滅多にないことで、耐性のない深岬はすっかり動揺してしまい、ばくばくと脈打つ心臓を抱えたまま足早に彼の近くから去った。
心臓の上の辺りを手で押さえながら、足だけを早く動かす。
気付けば、いつの間にか合宿で利用している合宿所の前に来ていた。
立ち止まって一度深呼吸をして気持ちを落ち着けると合宿所の中へと入っていく。
もしかしたら、誰もいないかもしれない―と思いながら。
すれ違った男の存在を頭から消すように深岬は、中へと足を踏み入れた。
「あっれぇー深岬ちゃんじゃん。授業は?」
と馴染みの声がすぐに聞こえてきて深岬は声のした方を振り返った。
にっと人好きのする笑みを浮かべて深岬のほうに向かってくるのは、野坂だった。
ほっと肩から力を抜いて深岬も軽く笑いながら答える。
「授業はないので、来ちゃいました」
「オレもオレも。あれ?なんか顔赤くない?」
どきりと一瞬緊張が走ったが、すぐに首を振って「そうですか?」ととぼけてみせた後、話題を逸らす。
「誰かいますかね?」
「多分、誰かはいる気がするんだよねー」
と言って先に歩き出した野坂の後を追いかけて深岬も合宿所の廊下を歩き、一番奥にあるバドミントン部が借りている部屋へと向かう。
とりあえず、野坂がいたことで退屈な時間は過ごさずに済みそうだと思いながら歩いていった。
先を行く野坂が合宿所のドアを開けると、数人というよりも坂上と小島が先客として広い部屋の中央に大の字になって寝ている姿があり、一瞬驚いて目を見開く。
「ははっ、こいつら寝てらー。おーい起きろー」
寝ている2人の体を足で蹴りながら野坂が声をかけていると2人のうめき声のようなものがした後、のっそりとした動きで坂上が先に体を起こす。
坂上は険しい顔をしながらも起き上がるとそこにいる野坂と深岬の顔を見つけて、横でいまだ大の字になって寝ている小島の体をゆする。
「リョウちゃん、リョウちゃん」
「んーサカガミぃ?」
「起きろって、人が来た」
「みず…」
寝ぼけ眼で言う小島に坂上は、ばしんと頭を一回叩く。
「オレは、雪子じゃねぇよ。自分でとってこい」
坂上が笑いながら言うと小島は、立ち上がってふらふらの足取りで水を取りにいく。
野坂は苦笑を浮かべたまま2人の姿を見ていた。
「あれ?野坂サン、何してるんですか?深岬ちゃんも…」
明らかにとってつけたかのような坂上の言葉に、深岬も苦笑を禁じえなかった。
あまり良い気分ではなかったが、気にしないようにした。
「授業なくてヒマだったから誰かいるかなと思って覗いたら、お前ら寝てんだもん」
「寝かしておいてくださいよー」
「ヤダ。なぁ?深岬ちゃん」
と同意を求められても深岬には答えに困るだけだ。
曖昧な笑いを浮かべていると、坂上が頭をがしがしとかき乱す。
「…っし!どっか行きますか?」
「いいねぇ」
「んじゃ、雪子たちにも連絡取るか?」
「あ、オレも誰か呼ぼうっと」
どこかに連絡し始めた坂上と野坂を深岬は黙ったまま見ているしかなかった。
深岬とは違いまだ覚醒していない小島ははっきりとしない頭で深岬と同じように坂上と野坂の姿を見ていた。