更新日記と小説(18禁)とたまに嘆き.
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2008
Vizard (58)
憮然とした表情の男に向かって、へりくだった態度でどこか卑屈さを思わせる笑みを浮べた男が封書を差し出した。
尊大な態度でそれを乱暴な手付きで受け取った男は、同じく粗雑な手でその封書の中身を確認した後、にやりと笑った。
依頼主である男の口元に浮かんだ笑みを見て、それを差し出した男は、安堵の溜息を知らず知らずのうちに零していた。
「残りの金は近々、口座に振り込んでおく」
「あ、ありがとうございます」
礼を述べる声も自然と弾むというものだ。
封書を手にしたまま、乱暴に立ち上がると男は革靴の音を鳴らしてその部屋を後にした。
部屋の外で待っていた男が、部屋から出てきた主に対して頭を下げるのを一瞥した後、「帰るぞ」と憮然とした口調で言い捨てると先に足を進めた。勿論、下げていた頭を起こした男も先を歩く男の後を追いかけた。
駐車場の車を停めていた場所まで来ると、後からついてきていた男がさっと車に走りより、高級車の後部座席の扉を開けると礼を言うわけでもなく当然と言ったような態度で慣れた様子で車内に身体を滑り込ませる。
主が座ったのを確認すると扉を閉め、軽い身のこなしで、運転席に座る。
バックミラー越しに後部座席に座る主を確認しては、上機嫌な彼の様子に何か良いことでもあったのだろうかと思いつつも優秀な男は余計な詮索など何一つしない。
「正一様。今日はどちらへ」
ただ、己が主の言うとおりに行動するのみ――。
それは、如何なるときも変わりない。
今日も、そこには自分の望む人物の姿などなかった。
同じように、彼の所在を聞いても、返ってくる言葉は一字一句違わずに同じ答えだった。
項垂れて、まさに意気消沈と言ったような態度を見せる綾に宗司は、いつものように苛立ちにも似た感情を覚えつつも、日課どおりに大学へと送り届けるために彼女を促がそうとした。
「お嬢様。お時間が…」
「お二人ともこんなところで何をしているのですか?」
久方ぶりに聞く声に、綾も宗司も一瞬空耳かと思ったくらいだった。
宗司は自分の後ろから聞こえる声に、綾は顔を俯けたままの状態で飛び込んできた待ち望んだ声に勢い良く顔を上げた。
最後に顔を合わせてからどれくらいの時間が経過していただろうか…。
姿が見えなかったことが不安で仕方なかった。
この数週間、探し続けた人物がそこにいる。
顔が輝くのも仕方ない。
「一哉!」
「お時間は大丈夫なのですか?」
今にも飛びつかんばかりに綾が一歩踏み出したその時、一哉の口から零れてきたのは、あくまで事務的な言葉。
再会を喜ぶような姿は綾一人だけで、一哉はまるで昨日まで普通に綾と接していたかのように自然な様子だった。
一哉に触れようと伸ばした手が止まる。
「一哉、お前こそこんなところで何をしている。学校はどうした。お前がこの時間にここにいること自体おかしいだろう」
宗司が己の左腕に嵌められた腕時計を確認しながら告げる。
その時計の針は、すでに9時半を示していて、確かに宗司の言うとおり、高校生である一哉がこの時間に屋敷にいることはおかしい。
一哉は、険のある兄の発言にくすりと笑い返す。
「申し訳ありません。着替えたらすぐに行きます。それでは…」
最後に綾を一瞥した後、軽く頭を下げると足早に綾と宗司の前から去っていこうとする。
そんな一哉の手を綾は無意識のうちに掴んでいた。
このまま、またどこかに行ってしまう。
行かせたくない。そう思った咄嗟の行動だった。
しかし、掴んだはずの手の力はすぐに弱まった。
自分を射抜くような鋭い瞳で、まるで睨みつけてくるかのような視線を向けてくる一哉に気づいたからだ。
「急いでいるので…」
と口調こそ柔らかかったものの、力の抜けたまま一哉の腕を掴んでいたその手は、綾が掴んでいない方の手で振り払われた。
そのまま背を向けて去っていってしまう一哉の背中を、綾は愕然と開いた瞳で追いかけた。
「お嬢様。少々お待ちいただけますか?」
と綾の背後で声がしたかと思うと、宗司が一哉の後を追いかけていく姿が綾の視界に入る。
早足の宗司が一哉に追いつき、何かを話している姿が見えてはいたが、何を話しているのかまでは、綾にはわからなかった。
大きな手に肩を乱暴に掴まれて、一哉は足を止めた。
振り返った先には、顔をこわばらせている兄の姿がある。
「まだ、何か?」
急いでいると告げた言葉は、嘘でも何でもない本心であったので、宗司に問う声には少し面倒くさそうな響きをもっていた。
宗司もそれに気づいていたが綾を始業時間までに届けなければならない宗司自身も急がなければならなかったために、気にしないようにしてすぐに本題に入った。
「お前、この数週間何をしていた?」
「…まだ、言えません」
一哉の答えに宗司の眉間に深い皺が刻まれた。
「お嬢様がお前がいないせいで始終不安そうにしている。お前のことばかり聞いてくるんだ。何をしているのか知らんが、いい加減にしろ」
それを口にすることは自分の無能さを認めているようで癪だったが、言わずにはいられなかった。
何度も何度も同じ押し問答繰り返し、そのたびに誤魔化さなければならない自分の身にもなれと言外に伝えたかった。
それが、伝わったかどうかはわからないが、一哉は、一度いつものように笑みを口元に浮べると何一つ悪びれた様子も見せずに告げた。
「そうですか…。でも、もうしばらくお願いします」
「なっ…!」
とだけ言うと呆けた顔をしている宗司を置いて、自室に向かった。
まるで一瞬の隙をついて逃げ出したような一哉を引き止めようとして伸ばした宗司の目に先ほども確認のために見た時計が飛び込んできたことで、その手は宙に浮いたまま、何も掴むことはできなかった。
問い詰めたい気持ちはあったが、このままでは綾が遅れるということを考えると一哉を問い詰めることはできなかった。
舌打ちをした後、踵を返して、綾のいる場所へと戻る。
「申し訳ありません。一哉のせいでいつもよりも出るのが遅くなったので急ぎましょう」
急いで綾の所に戻ると宗司は、綾を促がして屋敷を後にした。
心の端で、一哉のことを気にしながら――。
宗司の運転する車の後部座席で、綾は自分の手を見つめていた。
触れた、掴んだはずの手は ここにはなかった。
するりと抜けていった。
否、違う。拒絶された。
掴んでいたはずの手は、冷たい彼の手によって解かれ、自分を見る瞳は鋭く、その手以上に冷たかった。
急に怖くなってくる。
両手を握り合わせて口元まで持っていく。
――きっと、自分に呆れているのだ。
我侭は言わないと言ったはずなのに…。
自分の行動を省みてみれば、自分のとった行動がその一言につきるもの――。
彼の自分に対する態度がその応えだ。
目頭が熱くなってくる。
嫌だ――。と思っても自分にはどうすることもできない。
ただ、心の中で自分のしてきたことを悔いつつも何とか平静さを取り戻すのに精一杯だった。
置いていかれる―。
一哉が綾の前から姿を見せなくなってからというもののずっと綾が抱いていた不安だが、ここへ来てその不安が大きく膨らんでいくのを感じていた。
憮然とした表情の男に向かって、へりくだった態度でどこか卑屈さを思わせる笑みを浮べた男が封書を差し出した。
尊大な態度でそれを乱暴な手付きで受け取った男は、同じく粗雑な手でその封書の中身を確認した後、にやりと笑った。
依頼主である男の口元に浮かんだ笑みを見て、それを差し出した男は、安堵の溜息を知らず知らずのうちに零していた。
「残りの金は近々、口座に振り込んでおく」
「あ、ありがとうございます」
礼を述べる声も自然と弾むというものだ。
封書を手にしたまま、乱暴に立ち上がると男は革靴の音を鳴らしてその部屋を後にした。
部屋の外で待っていた男が、部屋から出てきた主に対して頭を下げるのを一瞥した後、「帰るぞ」と憮然とした口調で言い捨てると先に足を進めた。勿論、下げていた頭を起こした男も先を歩く男の後を追いかけた。
駐車場の車を停めていた場所まで来ると、後からついてきていた男がさっと車に走りより、高級車の後部座席の扉を開けると礼を言うわけでもなく当然と言ったような態度で慣れた様子で車内に身体を滑り込ませる。
主が座ったのを確認すると扉を閉め、軽い身のこなしで、運転席に座る。
バックミラー越しに後部座席に座る主を確認しては、上機嫌な彼の様子に何か良いことでもあったのだろうかと思いつつも優秀な男は余計な詮索など何一つしない。
「正一様。今日はどちらへ」
ただ、己が主の言うとおりに行動するのみ――。
それは、如何なるときも変わりない。
今日も、そこには自分の望む人物の姿などなかった。
同じように、彼の所在を聞いても、返ってくる言葉は一字一句違わずに同じ答えだった。
項垂れて、まさに意気消沈と言ったような態度を見せる綾に宗司は、いつものように苛立ちにも似た感情を覚えつつも、日課どおりに大学へと送り届けるために彼女を促がそうとした。
「お嬢様。お時間が…」
「お二人ともこんなところで何をしているのですか?」
久方ぶりに聞く声に、綾も宗司も一瞬空耳かと思ったくらいだった。
宗司は自分の後ろから聞こえる声に、綾は顔を俯けたままの状態で飛び込んできた待ち望んだ声に勢い良く顔を上げた。
最後に顔を合わせてからどれくらいの時間が経過していただろうか…。
姿が見えなかったことが不安で仕方なかった。
この数週間、探し続けた人物がそこにいる。
顔が輝くのも仕方ない。
「一哉!」
「お時間は大丈夫なのですか?」
今にも飛びつかんばかりに綾が一歩踏み出したその時、一哉の口から零れてきたのは、あくまで事務的な言葉。
再会を喜ぶような姿は綾一人だけで、一哉はまるで昨日まで普通に綾と接していたかのように自然な様子だった。
一哉に触れようと伸ばした手が止まる。
「一哉、お前こそこんなところで何をしている。学校はどうした。お前がこの時間にここにいること自体おかしいだろう」
宗司が己の左腕に嵌められた腕時計を確認しながら告げる。
その時計の針は、すでに9時半を示していて、確かに宗司の言うとおり、高校生である一哉がこの時間に屋敷にいることはおかしい。
一哉は、険のある兄の発言にくすりと笑い返す。
「申し訳ありません。着替えたらすぐに行きます。それでは…」
最後に綾を一瞥した後、軽く頭を下げると足早に綾と宗司の前から去っていこうとする。
そんな一哉の手を綾は無意識のうちに掴んでいた。
このまま、またどこかに行ってしまう。
行かせたくない。そう思った咄嗟の行動だった。
しかし、掴んだはずの手の力はすぐに弱まった。
自分を射抜くような鋭い瞳で、まるで睨みつけてくるかのような視線を向けてくる一哉に気づいたからだ。
「急いでいるので…」
と口調こそ柔らかかったものの、力の抜けたまま一哉の腕を掴んでいたその手は、綾が掴んでいない方の手で振り払われた。
そのまま背を向けて去っていってしまう一哉の背中を、綾は愕然と開いた瞳で追いかけた。
「お嬢様。少々お待ちいただけますか?」
と綾の背後で声がしたかと思うと、宗司が一哉の後を追いかけていく姿が綾の視界に入る。
早足の宗司が一哉に追いつき、何かを話している姿が見えてはいたが、何を話しているのかまでは、綾にはわからなかった。
大きな手に肩を乱暴に掴まれて、一哉は足を止めた。
振り返った先には、顔をこわばらせている兄の姿がある。
「まだ、何か?」
急いでいると告げた言葉は、嘘でも何でもない本心であったので、宗司に問う声には少し面倒くさそうな響きをもっていた。
宗司もそれに気づいていたが綾を始業時間までに届けなければならない宗司自身も急がなければならなかったために、気にしないようにしてすぐに本題に入った。
「お前、この数週間何をしていた?」
「…まだ、言えません」
一哉の答えに宗司の眉間に深い皺が刻まれた。
「お嬢様がお前がいないせいで始終不安そうにしている。お前のことばかり聞いてくるんだ。何をしているのか知らんが、いい加減にしろ」
それを口にすることは自分の無能さを認めているようで癪だったが、言わずにはいられなかった。
何度も何度も同じ押し問答繰り返し、そのたびに誤魔化さなければならない自分の身にもなれと言外に伝えたかった。
それが、伝わったかどうかはわからないが、一哉は、一度いつものように笑みを口元に浮べると何一つ悪びれた様子も見せずに告げた。
「そうですか…。でも、もうしばらくお願いします」
「なっ…!」
とだけ言うと呆けた顔をしている宗司を置いて、自室に向かった。
まるで一瞬の隙をついて逃げ出したような一哉を引き止めようとして伸ばした宗司の目に先ほども確認のために見た時計が飛び込んできたことで、その手は宙に浮いたまま、何も掴むことはできなかった。
問い詰めたい気持ちはあったが、このままでは綾が遅れるということを考えると一哉を問い詰めることはできなかった。
舌打ちをした後、踵を返して、綾のいる場所へと戻る。
「申し訳ありません。一哉のせいでいつもよりも出るのが遅くなったので急ぎましょう」
急いで綾の所に戻ると宗司は、綾を促がして屋敷を後にした。
心の端で、一哉のことを気にしながら――。
宗司の運転する車の後部座席で、綾は自分の手を見つめていた。
触れた、掴んだはずの手は ここにはなかった。
するりと抜けていった。
否、違う。拒絶された。
掴んでいたはずの手は、冷たい彼の手によって解かれ、自分を見る瞳は鋭く、その手以上に冷たかった。
急に怖くなってくる。
両手を握り合わせて口元まで持っていく。
――きっと、自分に呆れているのだ。
我侭は言わないと言ったはずなのに…。
自分の行動を省みてみれば、自分のとった行動がその一言につきるもの――。
彼の自分に対する態度がその応えだ。
目頭が熱くなってくる。
嫌だ――。と思っても自分にはどうすることもできない。
ただ、心の中で自分のしてきたことを悔いつつも何とか平静さを取り戻すのに精一杯だった。
置いていかれる―。
一哉が綾の前から姿を見せなくなってからというもののずっと綾が抱いていた不安だが、ここへ来てその不安が大きく膨らんでいくのを感じていた。
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2008
Vizard (57)
少年と青年の狭間をさまよっているような年下の男相手に、いつまでも呆けていることは、女のプライドというものが許さなかった。
「何を調べろというのかしら?」
挑戦的な瞳と口の端を持ち上げて、意味深な笑みを浮かべて女は問う。
一哉は、女の様子に満足したように笑い返した。
「簡単なことだ。ある男の素行調査」
「あら?」
女は笑った。
すぐに、一哉の口にした“ある男”というのが、誰かピンと来たからだ。
「彼女のために?」
横目で意味深な視線を送ると不快そうに一哉の眉間に皺がよった。
そんな表情を見るといくらか気分がすっとする。
自分の方が優位に立っているように感じられるから…。
しかし、すぐにもとの表情に戻される。
つまんないと心の中で毒づきながら、女は一哉に問う。
「さっき、あんたが言ったように簡単なことだから、別にあたしじゃなくてもあんたで事足りるでしょ?」
デスクの引き出しからシガレットケースを取り出すとその中から一本煙草を取り出して口に銜えると火をつける。
深く息を吸い込んだあと、吐き出す。
紫煙が2人の間でゆらゆらと昇っていく。
「確かに、もちろん。俺も調べるさ。あんたにして欲しいのは、男の過去について調べて欲しい」
「過去?そんなもん調べてどうすんのよ」
「それは俺の勝手だろう。結婚してからの1年で付き合った女全て調べてくれ」
女の問いには、答えず要求だけを突きつける。
女としては、依頼とそれに見合う報酬が得られれば余計な詮索をしないのが信条だが、気にならないといえば嘘になる。
多少なりとも深くないとは言い切れない付き合いがあった相手だけに、教えてくれるのではないかという期待も込めて訊いたのだったが、彼は口を割らなかった。
「場合によっては、別の仕事も頼むかもしれない」
「ちょっとぉ、そんな曖昧な言い方じゃわからないじゃない。それに、そんな女いないかもしれないわよ」
「あんたの仕事は評価してるんだ。あんたがいないと言えばそれえを信じる。とりあえず、堺…いや、水原 正一の過去について調べてくれ」
自分よりも10近くも年下の少年の口から出てきた言葉に目をまん丸に開く女。
まさか、そんなことを言われるとは思ってもみなかった。
不遜といえば不遜。
自分より上、あるいは同等の人間に言われるならまだしも、高校生のまだ子供とも言うべき人物に言われるなど誰が想像しただろうか――。
「くっ…」
呆けた顔で一哉を見つめていた女は、口に銜えていた煙草を手に持つと女は、顔を大きく下げた後、肩を震わしはじめた。
一哉が女の様子に険しい表情になる。
次の瞬間、一哉の聴覚を刺激したのは、耳をつんざくばかりの甲高い笑い声だった。
「くくっ……。あはは…。あーはははっ」
やがて笑いは乾いたものへと変化していく。
怪訝な顔つきで笑い続ける女を見つめていた一哉だったが、不意に女の鋭い視線とぶつかり、体を身構えた。
「評価ねぇ。まさか、あんたにそんなこといわれるとは思わなかったわ…」
「…」
「いいわ。調べてあげる」
一哉が、屋敷内に寄り付かなくなってからというものの一週間が経過しようとしていた。
日に日に焦りは大きくなっていく。
不安で仕方がない――。
宗司からは、しばらく離れるというだけのことだった。
その言葉から戻ってくるということが単純に予想されるのだが、綾にはこのまま戻ってこないのではないかと不安でならなかった。
夫である堺など別に戻ってこなくても気にかけない。
誰よりも側にいて欲しいのは一哉なのに――。
―それは、父親ですら例外ではない。
今、自分の側についている宗司よりも一哉に側にいて欲しい。
なのに、居て欲しい人はここには―自分の側にはいない。
姿も影も見えない。
時間の経過とともに不安は大きくなっていくばかり―。
このまま、帰ってこないのではないか――。
もう既にどこかへ行ってしまったのではないか――。
戻ってこないのでは――。
そんなの嫌だ。
どこにも行って欲しくない。
自分の側から離れないで――。
それだけでいいから。
それ以外に何も望まないから――。
しかし、それを望む相手はここにはいない。
朝、出迎えに来た人物はいつもと変わらず――。
「おはようございます。お嬢様」
少し前までの2人ではなく、1人だった。
今日も見えない姿が一層のこと不安にさせる。
どこにいるのか。
いつ戻ってくるのか。
どれだけ聞いても返ってくる答えは同じと知りながらも、聞かずにはいられなかった。
また、時間の経過とともに焦りも手伝ってか、その頻度も増えていた。
「ねぇ、一哉は?」
と――。
宗司は、いつものように出迎えた主人である綾に慣例どおり頭をたれ、挨拶を口にした後、顔をあげ、そこに映る彼女の不安げでいてどこか悲壮感を漂わせる表情に内心で溜息を零した。
――今日もか…と。
次に彼女から返ってくる言葉は聞かなくても分かった。
そして、自分の返す言葉もいつもと同じだった。
同じことの繰り返し。
自分の主たる仕事を放り出して、碌に学校にも通わずに一体何をしているのかと自分の義弟の行動を推察しようとしても何を考えているのかなど結局のところ彼には、理解なんてできなかった。また、しようとも思わなかった。
この機に主である綾の信頼を勝ち得ることができれば、自分はまた元通りの地位に戻れるとチャンスと思っていたのだったが、宗司の見通しは甘かった。
彼女の口から零れるのは、常に不在の人物。
最初の頃は、一日に一度程度だったのが、今では一日に何度も聞かれる。
回数が多くなり、それが毎日とあらば、当初は気にも留めないものでも、いい加減にもどかしさを覚えるというもの。
宗司とて例外ではなかった。
一哉のことが気になって、心配で不安で仕方のない綾は、目の前の宗司の様子などお構いなしなものだから気づきこそしていないが、一哉の名前が綾の口から零れるたびに宗司の眉尻がぴくりと動く。
あいつは知っているのだろうか―。
こんな彼女の姿を―。
そして、一体何をしているのだろうか…。
そして、いくら宗司がフォローしているからと言って、何故勝手に傍を離れた者を主はずっと気にかける必要があるのか――。
綾だけでなく、宗司の中でも一哉の行動によってもたらされる葛藤に似たものがあった。
知らぬは当人ばかり――。
知らず知らずのうちに握った拳の所為で、短く切りそろえられた爪が手のひらの皮膚に食い込む。
それが訴える痛みにはっとして、宗司は冷静になると綾を促がして、自分の仕事を全うするべく、彼女を屋敷から綾が現在、籍を置いている大学へと送り届けるために外へ連れ出した。
言われるままに外へと出た綾だったが、心ここにあらずそんな言葉がぴったりと当てはまるような姿だった。
2008
バレー負けちゃいましたね…
私が頭から見る試合は大概負けてる気がします
気のせいだろうけど…
そして全く関係ないですけど暑いです
喉が渇きます
クーラーつけてしまいました(汗)
更年期か!?んなバカな
…っと冗談はさておき
アグロ様
メルフォにて裏アドレスご請求ありがとうございます。
申し訳ありませんが数日中には返信いたしますのでもうしばらくお待ちくださいませ。
ご迷惑おかけ致します。
西成様
ご返事ありがとうございました。
管理人は優しいお言葉に感動しております。
書きたい話は7本ぐらいたまっていますので…、これからも楽しんで頂けるように頑張ります。
私が頭から見る試合は大概負けてる気がします
気のせいだろうけど…
そして全く関係ないですけど暑いです
喉が渇きます
クーラーつけてしまいました(汗)
更年期か!?んなバカな
…っと冗談はさておき
アグロ様
メルフォにて裏アドレスご請求ありがとうございます。
申し訳ありませんが数日中には返信いたしますのでもうしばらくお待ちくださいませ。
ご迷惑おかけ致します。
西成様
ご返事ありがとうございました。
管理人は優しいお言葉に感動しております。
書きたい話は7本ぐらいたまっていますので…、これからも楽しんで頂けるように頑張ります。
2008
Vizard (56)
弟が口にした言葉に耳を疑った。
ドアに手をかけたまま振り返った先にあったのは、真剣な顔をした弟の表情だった。
「お願い…だと?」
怪訝な顔つきで聞き返した宗司のもとに、一哉は足を踏み出す。
敷き詰められた砂利を踏む音が響く。
お願いなどと今まで一哉の口から聞いたことなどない。
何があっても頭など下げぬ面白みも虐め甲斐もない弟だった。
これほどその言葉が似合わない存在がいるだろうか――。
「一体、何を?」
常日頃、お願いなどと口にしない者のそれであれば、誰であろうとその内容が気になって当然だろう。
一体どれほど高尚なものなのか。それともくだらないものなのか。
聞き返した宗司は、まだ快諾するか拒否するかどちらとも決めていなかった。
「しばらく、お嬢様をお任せします」
「は?…何を言って……」
宗司の目を見据えてそう口にした一哉の表情は、冗談で口にしているとは思えないほど真摯な表情だった。
しかし、一哉の口にした言葉は冗談でも草壁の人間が軽々しく口にしていい言葉ではない。
その言葉の持つ意味が分かっているのかと疑った。
「理由は、今は口にできません。期間もどれくらいになるかわかりません。ですが、よろしくお願いします」
そう言うと、深々と頭を下げて見せた。
しかし、宗司には納得できない。できなくて当然だ。不確定要素が多すぎる。
一方的に職務を放棄すると言っているのだ。しかも、それがどの位なのかも分からないという。
はいそうですかと頷けるわけもない。
一哉も一哉で、はっきりと分かっていないものをそう簡単に口にすることはできない。
ただの自分の杞憂だけで終わるかもしれないし、己の推察が的を得ている可能性だってある。
そのどちらも否定することができないのが今の状態なのだ。
「そんな一方的な要求を私が聞くとでも?」
双方ともに、譲れない部分があるためににらみ合いになるのは、必至だ。
「聞けないと?」
喉の奥から搾り出すような声に、怜悧な瞳が向けられる。
「当然だ。お前、自分が言っていることの意味分かっているのか?」
「もちろん」
責めるような強い口調で告げられる言葉に一哉は、即答した。
分かっている。しかし、だからと言って、見過ごせるわけがないのだ。
「貴様…。自分の責務を放棄するということを分かっているのか!?草壁の人間として許されない行為だぞ!いくらお嬢様に目をかけていただいてるからといってやっていいことと悪いことがある!その判断もできないのか!」
宗司の一喝にも一哉は顔色一つ帰ることはなかった。
変わらぬ瞳で宗司を見ていた。
「事と次第によっては、今の任を外されるぞ」
「構いません。お忘れですか?一度は、今の任を外して欲しいがために勘当を要求した人間です」
激昂する宗司とは対照的に、一哉は冷静だった。
落ち着いた淀みない声で答えた一哉を、細めた双眸で睨みつける宗司。
己が望んだものを今、また簡単に手放そうとしている弟が憎い。
「貴様…」
「お願いします」
「お前の地位なんて戻ってくるときには、なくなってるぞ。私が獲ってやる」
そんな言葉でも一哉の顔色を―眉一つ動かすことはできなかった。
ただできたのは、俄かに明るくなったような声だった。
「ありがとうございます」
もう一度、深く頭を下げると一哉は宗司に背を向けて屋敷の中へと戻っていった。
そんな弟の後ろ姿を宗司は、彼の姿が屋敷内に消えていくまでずっと睨むような目線で追い続けた。
朝、屋敷を出ようとした綾は、そこにあるはずの姿が見えないことに不安を覚えた。
そういえば朝から全く姿を見かけていない。
玄関先に現れたもう1人に不安に駆られたまま、焦ったような顔つきで伺う。
「宗司…。一哉は?一哉がいないの」
「一哉は、別の用件で動くことになりました。何卒、ご理解ください」
「え…。聞いてない。聞いてないわ」
当然、綾は顔を青ざめさせて聞いていないということを繰り返した。
宗司は、綾の様子を見て奥歯を噛み締める。
何故、こうもあの弟は主の気を占有させ続けることができるのか。
「どうして?宗司は何か知ってるの?」
「私も詳しいことは…」
結局のところ一哉が何をするために綾のもとを離れたのかは宗司は知らないので、答えようもない。
また、いい加減なことを言うことだけは彼自身避けたかった。
言葉を濁すことしかできないもどかしさを感じつつもそれしかできない宗司は綾にそういうことしかできなかった。
綾は、一体自分を置いて一哉がどこに行ってしまったのか、それだけが不安だった。
このまま戻ってこないような気がして――。
自分から離れたいと言っていた一哉の言葉を聞いているだけに気が気ではなかった。
夫である堺が帰ってこなくても気にしたことなどないのに、少し一哉の姿が見えないだけでその不安は言い様のしれないほど大きなものだった――。
馴染みではあったが、しばらく訪れていなかった場所に足を踏み入れる。
相変わらずぼろぼろだった。
自分が顔を出せば、きっと彼女は驚くに違いない。
どれくらい時間が経過しているか――。
ここに足を踏み入れなくなってからというものの一年は有に経過していた。
懐かしさすら覚える扉の前に立ち、ドアノブを回す。
ぎぃっと物々しい音が立ち、ゆっくりと戸が開く。
柔らかな身のこなしで置くへと進んでいくと、前回とは違い、広いデスクになめらかな曲線美を描く脚を乗せて口に銜えた煙草の煙をぼんやりと追いかけていた。
ドアが開く音に彼女はそちらに顔を向ける。
そこに懐かしい顔を見出して驚いた表情を見せた。
一哉は時間の経過など全く感じさせることもなく、女に近寄っていった。
「久しぶり」
にっこりと笑いかけて言う一哉は、笑っているようで笑っていない。
女は、机の上に投げ出していた両足を床に下ろしながら瞠目した瞳で一哉を見つめた。
彼女がよく知るそれとなんら変わらない笑みを浮かべているはずなのに、背筋があわ立つような気がするのは、なぜだろうか…。
女が返事を返すのを忘れて一哉を見つめていると彼は、続けた。
「調べて欲しいことがあるんだ」
ぴくりと女の顔の筋肉が動いた。
「もちろん、報酬は払うよ。これでも俺、金はあるから」
聞かなくても知っている。
以前、自分が調べていたことに対して、一哉に冗談半分で高くつくと言ってやったら、その数日後、己の口座に大金が振り込まれているのを見て、驚愕したことは記憶に新しい。
前から、底の知れない不気味な一面に薄々と感づいていた女だったが、その時に確信したのだ。
自分の手に負える少年ではないと――。
それから、全く音沙汰がなかったというのに、急にふらりと表れて彼は、調べて欲しいことがあると彼女に言う。
一体何をという興味と、何をするつもりなのかという不気味な不安が彼女の中でせめぎあっていた。
2008
お久しぶりです。
忘れられてやしないかとびくついてる管理人です。
ちょっとお腹が痛いです。
でも、これからも飲みに行ってきます。
(またか…とか言わないでください…。これで4日連続ですが…)
西成様
お待たせしております。
さきほど、裏アドレスについての回答メールを送信させていただきました。
ご確認ください。
お返事が遅くなってしまい誠に申し訳ありませんでした。
さて、6月はネット環境復活致します。(予定。多分…)
ということで…。
Blog更新を一時やめます。
というよりも、もうストックがありません。
困った。
7月は、またネットが断裂するかもしれないので、Blog更新用のお話をためなくてはいけません。
学生と社会人の時間管理の違いと難しさを痛烈に感じております。
学生のときは、なんて時間がたくさんあったんだ!?
とりあえず、今後の更新予定についてご報告まで…。
興味ない方はスルーして下さって結構です。
6月は、twinsの9話(全4話)と夢の2部(全18話)をUPしていきます。
これがなくなったらいよいよヤバシ…。
停滞モード入りそうです(汗)。
ということでよろしくお願い致します。
忘れられてやしないかとびくついてる管理人です。
ちょっとお腹が痛いです。
でも、これからも飲みに行ってきます。
(またか…とか言わないでください…。これで4日連続ですが…)
西成様
お待たせしております。
さきほど、裏アドレスについての回答メールを送信させていただきました。
ご確認ください。
お返事が遅くなってしまい誠に申し訳ありませんでした。
さて、6月はネット環境復活致します。(予定。多分…)
ということで…。
Blog更新を一時やめます。
というよりも、もうストックがありません。
困った。
7月は、またネットが断裂するかもしれないので、Blog更新用のお話をためなくてはいけません。
学生と社会人の時間管理の違いと難しさを痛烈に感じております。
学生のときは、なんて時間がたくさんあったんだ!?
とりあえず、今後の更新予定についてご報告まで…。
興味ない方はスルーして下さって結構です。
6月は、twinsの9話(全4話)と夢の2部(全18話)をUPしていきます。
これがなくなったらいよいよヤバシ…。
停滞モード入りそうです(汗)。
ということでよろしくお願い致します。