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更新日記と小説(18禁)とたまに嘆き. 嫌いな方・興味のない方・間違っちゃった方はバックバック

2026

0409
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2009

0125
vizard(85)
 

伊達が、山崎が怜迩を狙わせた本当の人物である堺の名を一哉から聞かされたのは全てが終了した後―堺が離婚届にサインさせられ、家から追い出された後だった。
怜迩の父である堺が何故と疑問に思わないわけがない。
しかし、彼が聞いても一哉は答えてはくれなかった。
「さぁ」と何か知っている様子なのに、惚けるだけだった。
納得いかないという意志を籠めて、一哉を見ても彼は仕方なさそうに笑うだけで決して答えはくれなかった。
それどころか、一哉は伊達にそれ以上の疑問を抱かせないようにするためにか、間を与えずに彼に命じた。
不服そうな顔を隠さない伊達の名を嗜めるように呼ぶ。

「伊達」
「…何でしょう」

声にも不満が表れてはいたが、敢えて気づかない振りをした。

「堺を見張れ。何かしてくるかもしれん」

淡々と事務的な口調で命じる一哉。
命じるだけ命じると、彼は不満ありありの様相を呈した伊達から視線を逸らした。
最後に流し見た姿は口をへの字に曲げ、眉間に皺を寄せた状態だった。
きつく結ばれた薄い唇からは、男の命令を遂行する旨の返事は出てこなかった。
一瞬、視界に止めただけの姿だったが、どこか子供が拗ねているような印象を一哉に与えるそれだった。
いつまで、待っても返ってくることのない返事に、一哉はわざとらしく呆れたようなため息を零して見せた。

「何だ?」

相手を見ることも無く、問うたその声は彼が狙った所為もあって、殊の外、険のあるように聞こえた。
それまで全身で不満だということを表していた伊達は、その声に慌てて「何でもありません。わかりました」と答えると自分を見ていない相手に一礼してその場を去った。
遠ざかる足音を耳にしながら、一哉はちらりとその後姿を確認してやれやれとばかりに少し大袈裟に肩を竦めた。

半ば、遠ざけるようにして堺の見張りを命じた一哉だったが、何も考えなしに伊達に命じているわけではなかった。
一哉が伊達に命じたことは、一哉自身危惧していることであるし、無理やり水原の家から追い出したのだ。
逆恨みをする可能性もゼロとは言い切れない。また、捨て身で暴挙に出る可能性だってある。
まだ、自分には及ばない点が見受けられつつも無能ではないと一哉は、伊達のことを判断したが故に彼にその仕事を任せたのだ。
自分がその役目をやっても良かったのかもしれないが、屋敷内は今、ごたついている。
まだ、興奮冷めやらぬ様子で落ち着かない使用人たちに、かなりの仕事を堺に任せていた水原自身はその処理に終われ、綾は綾で漸く得られた自由に浮かれていた。
一番、落ち着いていたのはまだ子供の怜迩だったかもしれない。

ふぅっともう一度、大きく嘆息を零すと一哉は綾に呼び出されていたことを思い出し、踵を返した。



綾の部屋に訪れた一哉を迎えたのは、瞳を爛々と輝かせた部屋の主だった。
分からないでもないが、少しあからさま過ぎやしないかと一哉の方が少なからず不安を覚えるほどだ。

「何?」

2人しかいない空間で、変に取り繕う必要もない。
いつものように砕けた言葉で問うと、フフフと薄っすらと笑みを浮かべながら、綾は一哉に近づいた。

「怜迩に本当のことを言おうと思うの」

いい考えでしょ?とばかりに顔を輝かせる綾とは対照的に、一哉の顔は曇った。
だが、すっかり浮かれている綾には一哉の表情の変化を掴むことはできなかったようだった。

「本当のことって…何を言う気?」

強張った声音には、流石の綾も気づいたようで、怪訝そうな顔つきで一哉の顔を見返した。

「何って…、怜迩が私と一哉の子供だってこと…」

一哉の様子に僅かに戸惑いを覚えながら綾が答える。
どこかしどろもどろになりながら、相手の様子を伺う。
彼女の言葉を耳にすると、一哉はぎゅっと瞼を閉じると長い息をゆっくりと時間をかけて吐き出した。
何かを思案しているような彼の姿を瞬きも忘れて食い入るように見つめる綾。
やがて、目をぱっと見開き、すぐに綾の両の瞳を捉える。
強い眼差しにびくっと体が反応した。

「駄目だ」
「…え」

きっと賛同してくれるに違いないと想像していた綾は、一哉の口から出てきた答えが全く自分の予想していたものとは180度異なるということに気づくまで時間を要した。
呆けたような顔で一哉を見返す。

「得策じゃない」

とだけ彼は答えた。
納得いかないのは、当然綾の方だ。

「何で?何で本当のこと言っちゃいけないの?」

すぐ側にある一哉の腕を掴んで、詰め寄る。

「怜迩は君と堺の子供ってことになっている」

興奮気味の綾とは異なり、こちらは落ち着いた様子で彼女の問いに答える。

「ええ、でも本当は…、一哉と私の子供よ」「僕のような使用人との子供なんてことが知れたら…旦那様はどう思う?」
「え…?」
「怜迩を後継者とは、認めてくれなくなると僕は思うよ。それに、君にも新しい縁談がくる」

それを否定できるだけの確固たる自信は、綾にはなかった。
まさに一哉が口にした考えたくない未来が容易に想像できた。
自然と口をついて出たのは、そうすることを未だ強要されたわけでもないのに、拒否の言葉だった。

「イヤよ…」
「だろう」

念を押すような一哉の言葉に綾は、無言のままおずおずと頷いた。

「だったら、怜迩は堺の子供ということにしておこう。そうすれば、怜迩には悪いけど怜迩が跡継ぎとして存在することになる。君も意志に反して結婚する必要もなくなる」
「それはそうだけど…」

それでも親として真実を子供に伝えておくべきではないのか―。
そう思っていた綾の耳に一哉の冷静で紛うことなき事実ではあるが、ただ薄情な感じもする言葉が綾の聴覚を刺激する。

「それに…、子供はどこで言いふらすかわからない。きちんと分別のつく大人になるまで待とう」

懸命な判断と言えば判断かもしれない。
一哉の言うことは、尤もなので綾もそれ以上何も言うことができなかった。



こうして、怜迩に彼自身の出生の秘密は語られることはなかった。
分別のつく大人になるまでと一哉は口にしたものの成人を迎えてもそれが告げられることはなく、その数年後幾重にも人を巻き込んで大騒動に発展するなどとはこの時の彼らには予想もつかなかったに違いない。



そのまま時間は経過していき、水原の屋敷が落ち着きを取り戻すまでそう時間はかからなかった。
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