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更新日記と小説(18禁)とたまに嘆き. 嫌いな方・興味のない方・間違っちゃった方はバックバック

2026

0205
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2008

0807
Vizard(76)
 

小馬鹿にされたような気分になり、少なからずプライドを傷つけられた。
勢いに任せて、まさに売り言葉に買い言葉とはこのことで、伊達は一哉の言葉に勢いだけで返した。
言うは易しとは良く言ったもの。
そう簡単に見つかるわけもなく―。
空いた時間に何をしていいのか、何をするべきなのか見つけることもできなく、ただ無為に時間を費やすだけだった。



今日も怜迩を見送った後、することもなく、また、一緒にいた一哉もぷらぷらとどこかへと姿を消してしまった。
伊達という男は、幼少の頃より腕っぷしが強かったこともあり、高校卒業と同時にこの仕事についた。
もうすでに7年目に突入しようとしていた。
数日前より、水原家にて仕事をしているが、水原によって雇われたわけではない。
普段は、警備会社に属し、そこから派遣されるという形をとっている。
一哉がただ、外から見繕って連れてきただけの男に過ぎなかった。
新参者の男の存在に、昔から水原の家で働く者の風当たりは良好とは決して言えなかった。
しかも、突如どこからか現れた―正確に言うならば一哉が連れてきたとはいえ、そのような男が水原直系の孫である怜迩付きとなれば、元来そこで働くものにとっては面白くないことで業腹に違いない。
水原の屋敷に戻ることも選択肢の1つだが、さして屋敷に帰ったところですることもなければ、居場所もないような場所に好んで戻るような男ではなかった。
伊達は、結局、本来自分が所属する組織である警備会社の入っているビルに戻ってきていた。

どこか浮かない顔をしている入ってきた伊達の姿に偶然にも居合わせた同僚達は首をかしげた。
近くにあった安いパイプ椅子を引っ張るとどすっと音を立てて、座る。

「どうした?」
「あ…。山崎さん…」

そんな伊達の様子を見かねたのか、彼の先輩にあたる男が話しかけてくる。
力なく、疲れきった顔で男の顔を見上げた伊達に山崎と呼ばれた男は、苦笑を浮かべた。
自分も同じようにパイプ椅子を引っ張ってくると伊達の横に腰掛けた。
この仕事を始めるようになってからというものの何かと面倒を見てくれる山崎に伊達は心を許していた。
横に座る男に差し障りのない程度で思っていることを口にし始めた。





暗い部屋の中、机の上に置かれた小さなライトの光だけが暗闇に光を灯す。
微妙な光の陰影が険しい顔を更に険しく見せている。
鋭い眼光で手の中に握られた紙片を見つめる。
軽く瞬きを繰り返した後、強く瞳を閉じる。
瞳を閉じたまま、しばらく動かなかった。まるで、その姿は寝ているようだった。
どれくらいそうしていたであろうか―。
ぱっと目を見開くと手にしていた紙片を机の上に放り投げて、椅子から立ち上がった。
空中を舞うようにしてやがて、ゆっくりと小さな音をたてて机上に落ちた。
ライトの光が照らされているそこに見えるのは、写真に写された伊達の姿だった。





「そろそろ、尻尾を出してもいいころだな…」

口の中で転がすように呟かれた声は、横で車のハンドルを握っていた伊達は、首を傾げざるを得なかった。
前方に注意を払いながらも横目で、ちらりと助手席に座る一哉を見る。
すると口の端を持ち上げ、意味深に笑う彼と目が合った。
ただ、目があっただけだ。さして珍しいことでもない。
だが、伊達はドキッとしてすぐに目を逸らして、前方に意識を集中した。
時間にしてほんの一瞬に過ぎなかっただろう。
しかし、一瞬とはいえ、その短時間に伊達は、一哉の目が決して笑ってなどいないことに気づいてはいた。
そのことには、気づいてはいたが、一哉の言葉の裏にある意味までは汲み取ることができなかった。
だからと言って、聞く事は何となく憚られたのだ。

伊達が1人頭の中ではてなマークを浮かべていると、一哉はそんなときに限って、寄り道を指示してきた。
指定した場所に用があるのだと言っていたのだが、腕時計で確認した時間は、既に怜迩を迎えに行くためには寄り道をしている時間などない時間だった。
しきりに時計に目をやり、気にしている伊達に一哉も気づいたが、それでも構わないと自分が指定した場所に向かわせたのだった。



いつもより遅れること数十分。
漸く、本来の目的地である怜迩の通う学校の敷地内に到着することができたのだった。
到着前の車中でまたもや、伊達は一哉の意味深な発言を耳にした。

「折角、お膳立てしてやったんだから、大人しく掛かっててくれよ…」

と。
学校の敷地内に到着すると、良家の子女が多く通う学校だけに通常であれば一哉たちと同じように各家から迎えが来ており、その所為でいつもにぎやかだ。
しかし、今日は到着した時間が遅かっただけに人もまばらだ。
先に車を降りて、目的の人物である怜迩の姿を探すが見つからなかった。
己の左腕に嵌められた時計で、時間を確認してみるが、時計の針が指し示す時間であれば、怜迩が出てきていてもおかしくない時間だ。
焦燥感のようなものを抱きつつ、変な寄り道をさせるからだと心の中で一哉に悪態をつきながら、教職員でも捕まえて聞くかと足を踏み出した伊達の耳に、バタンっと慌しく車のドアを開閉する音が聞こえてきて、彼は思わず背後を振り返った。
しかし、伊達が振り返ると同時に怒号が飛んできた。

「戻れ!」

突然の声に伊達はどうしたら良いのか分からずに、ぽかんと間抜けな顔を晒した。
そんな伊達に向かって更に怒号が飛んでくる。

「ぼけっとするなっ!!」

言い捨てるとそのまま走り出した一哉だった。
何が何だか分からないままでも、伊達は一哉の後を追って走り出した。
一哉を追って走り出した伊達だったが、その光景を見た瞬間に体を飛び出させていた。

身近に命の危険を感じながらも、条件反射で体を張った。
今にもクラクションもならさずに車が突進してきている小さな子供の体を自分の体で覆い隠すようにして地面を転がった。

「!?…わっ!」

と急に体を大人の男の固い体で覆われた子供の高い声が上がる。
その声が、伊達の聴覚を刺激すると同時に車のブレーキ音が聞こえてきた。
小さい子供が道路にいたのに、クラクションも鳴らさなかった運転手だったが、突然の闖入者に驚いたのだろう。強くブレーキを踏み込んだ。
タイヤと地面の摩擦音が強く辺りには木霊する。
そして、硬いアスファルトの感触を肌で感じながら、体で硬い鉄の塊が横を通りすぎる風が伊達の肌をなぞる。

嫌な汗が体中から噴出し、心臓はどくどくと脈を打っていたが、心は妙に落ち着いていた。
地面に這い蹲る瞬間にガラス越しに見たのは、紛れもなく伊達の記憶にある男だった。
伊達は、強く一度、目を瞑った後、ゆっくりと体を起こした。

「大丈夫ですか?」

怪我をさせまいと腕に抱いていた子供に問う。
まだ状況を上手く飲み込めていないのだろう。不思議そうな顔をしてぱちぱちと数度、瞬きした後にこっくりと怜迩は、伊達に体を拘束されたまま頷いた。
安堵のため息を零した後、怜迩を立たせて、自分もその場に立った。

そして―。
見たくはなかったが、ゆっくりと背後を振り返った。
馴染みの顔を見るために――



出来ることなら夢だと思いたかった現実を認めるために――
 
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