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更新日記と小説(18禁)とたまに嘆き. 嫌いな方・興味のない方・間違っちゃった方はバックバック

2026

0205
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2008

1105
Vizard (80)


伊達に怜迩を狙った男の見張りを命じた後、怜迩を連れ帰るために、自分たちが乗ってきた車に戻る。
すぐ様、屋敷に送り届けるとただならぬ一哉の様子と傍らにいつもついている伊達の姿ないことに出迎えた使用人の者たちが何かを感じたのだろう、綾を呼び寄せた。
怜迩の世話を使用人に任せて、一哉はすぐさま綾に自分が見てきたものとこれからの予測をあくまで私的な見解に過ぎないが述べた。
綾の驚きようと言ったらなかった。
ただ、怜迩の無事が確認できていたので、そこまで動揺を周囲に見せることはなかった。
すぐに伊達と怜迩を狙った男を残してきた事故のあった現場に戻るという一哉を送りだし、綾は綾で父親である水原にすぐに連絡を取り始めたのだった。



ハンドルを握る一哉の眉間には、深い皺が刻まれていた。
自分が巻いた餌に飛び掛ってくれたのは、いいが…。

伊達と繋がりのある男と伊達を残してきたことを早くも後悔していた。
もし、伊達が逃がしていたら―。
とはいえ、一哉とて考えなしに伊達と山崎の2人を残してきたわけではない。
もし、伊達と山崎の2人が繋がっていたとしたら、2人を残すことで何かを燻りだせるかと思ったのだったが、万が一のために秘密裏にもう1人信用に値する人間を置いておくべきだったと自分の誤算を悔いていたのだ。
そもそもが思いつきで行動しただけに招いたものだから、後からいくら悔いたところで後の祭りだ。
ここまできたら、数あるリストの中で伊達という男を選別した自分の目を信じるしかないというところか―。





少し離れた位置に車を止めて、まだ人だかりが出来ている間を縫って、自分が置き去りにしてきた2人の許へ急いだ。
遠目に、まだこの場に2人がいることを確認してほっと胸を撫で下ろした。
しかし、一哉が安堵したのも束の間、山崎の体が急に立ち上がり、伊達の横をすり抜けて逃げようとしたのを目にした瞬間、ちっと舌打ちをして、体を群集の中から出そうとした。
だが、一哉の危惧を余所に、背後から伸びてきた伊達の手が山崎の体を引き寄せ、地面へと叩き付けた。
ザザァという地面と人体のすれる音が聞こえてきた直後、伊達の恫喝が聞こえてくる。

「あんた。どこまで、醜態さらせば気が済むんだ!」

苛立ちにも似た、怒声だった。
そして、直後の懇願にも似た忠告。

「いい加減、諦めろよ…」

車の中で抱いていた悪い予想が、全くの杞憂だったことを知る。
一哉は、ふっと頬を緩めるとゆったりとした足取りで、群集から抜け出すと、2人に近づいていった。
くすくすと笑いながら―。

一哉の笑い声は、2人の耳にも届いたようで、2人はゆっくりと振り返った。
1人は、動揺したように不安に揺らめく瞳で、もう1人は恐怖に怯えた瞳で自分を見ている。
伊達の横に立つとポンッと労うように肩を叩いた。

「上出来だ」

何が?と怪訝に思った伊達が問う前に珍しくも一哉が彼に答えをくれた。

「お前が、命じられたことも忘れて情に流されるような温い男じゃなくて良かったと言っているんだ。そんな不思議そうな顔をすることないだろう」

最後の揶揄うような言葉に、はっとして伊達は、顔を締めなおし、佇まいを正した。
そして、初めて気づいた。
この状況においても男が自分を試していたことに―。

なんという男だと脱帽すると同時に、やはり恐ろしさにも似た感情を抱いてしまう。
同時に褒められたのだという嬉しさのようなものも感じていた。

一哉は、すでに伊達には興味を失ったように、今は、ただ山崎に威圧感を与えるべく、凶悪な笑みを浮かべて上から見下ろしていた。

「さて、洗いざらい吐いてもらおうか…」
「…」

口を割らないという意志の表れか、ただ、恐怖に戦いて何も口にすることができないだけなのか。
どちらかは分からないが、男は一哉の言葉に何の反応も示さなかった。

「五体満足で帰れると思うなよ」

顔をずいっと近づけて、低い凄むような声に息を飲んだ。
切れ長の奥の瞳が今にも人を殺しそうな殺人鬼のような鈍い光を放っていた。
背筋があわ立ち、今すぐにでもこの場から逃げ出したいと思ったが、逃げ出す事などできなかった。
逃げ出すような隙もなければ、体も動きそうになかった。

がっくりと項垂れた男から、離れると一哉は背後に立ったまま控える伊達に次の命令を下した。

「お前は、ここを片付けろ」
「…はい」
「終わったら、屋敷へ戻れ。また、連絡する」
「…あの、」

―山崎をどうするつもりなのか。
山崎には、今先ほど一哉が口にしたように五体満足で帰れないと伊達自身も告げたはずなのに、そう簡単に割り切れるわけもなく、彼の行く末が不安になって尋ねようとした伊達だったが、肝心な言葉は出てきてはくれなかった。
不安に泳ぐ伊達の瞳に、一哉はそれを悟ったのだろう。
ふっと顔を緩めて、伊達の耳に顔を近づけて彼にだけ届く小さな声で告げる。

「吐くもの吐けば、解放してやる。奴が黙っているようならば、多少は覚悟して貰わなならんがな…。その後は、奴のクライアント次第だ」

という一哉の答えは、今の伊達に出来ることは何もないということだった。
小さな声で、「わかりました」と応えた伊達は、後はもう何も見ないようにと2人に背を向けた。
明らかに落胆している伊達の背中を見つめ、今の彼の複雑な心情を慮ると仕方ないかと嘆息を小さく漏らす一哉だった。
だが、そうゆっくりもしていられないのが現状だ。
場の収拾を伊達に任せて、項垂れる山崎を連れて、一哉はその場を離れた。

伊達は、車のレッカーや群集の整理に殊の外時間を取られてしまった。
全てを終える頃には、日が暮れていた。
静けさを取り戻した道路に佇んでいると、恐らく怜迩が追いかけようとして道路に飛び出した原因であるボールが転がっている。
それをじっと見つめていた伊達は、ゆっくりとそのボールを拾い上げると腕に抱えて、一哉に命じられたように屋敷へと帰るために帰路についたのだった。


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