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更新日記と小説(18禁)とたまに嘆き. 嫌いな方・興味のない方・間違っちゃった方はバックバック

2026

0205
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2008

0921
Vizard(78)

「あの…。ちょっと、気になることが…」

言い難そうな顔でそう口にした伊達の言葉に一哉は、眉一つ動かすことなく耳を傾けた。
反応できなかったのではない。しなかっただけだ。
相手の出方を図っているという方が正しいかもしれない。

伊達から聞かされた内容は、一哉にとってみればさして驚くようなことでもなかった。
既に、知っていたことを聞かされても驚けという方が無理な話ではないだろうか。
一哉にとって詰まらないことを聞かされただけの時間であり、そのまま反応を求める相手に反応を返すことなく、捨て置くことも簡単だったが、一度だけ笑ってみせた。
呆けた顔をしたままの相手に一言。

「殊の外、間抜けじゃなくて良かった」

その言葉の真意は、何か―。



伊達が神妙な面持ちで口にした名前は、既に一哉の与り知るところだ。
その男と伊達の関係も把握済みだ。

とはいえ、2人の関係は一哉にとっても驚くべきことだった―。
まさか、自分自身が雇うのを決めた男が、何の狙いがあってか怜迩をつけている男が知人どころではなく、親しい間柄だったとは思いもよらなかった。
まさに、偶然の一致。それだけなのだ。

一哉が、最初に不審に思ったタイミングは、伊達のものと全く同じだった。
怜迩を通わせている学校には、怜迩の他にも資産家の子供が通う学校だけに、登下校時に自分と同じような存在がちらほら拝見することができたのだが、伊達が山崎の姿を見つけ、怪訝に思いながら声をかけたその日、一哉は遠目に伊達と山崎が話しをする姿を見て目を細めた。
全てとは言わないが、一哉は登下校時に学校前に現れる部外者の顔はほとんど把握していた。
その中で伊達と少しだけだが、会話を交わした男は初めて見る顔だった。
男は、伊達と2、3言だけ交わした後にすぐにどこかへと姿を消した。
それが答えだった。
学校に関係のあるものがこの場にいたのならば、すぐに姿を消すなどとはしない筈だ。
学校に通う子供を迎えに来たのなら、子供が出てくるまで待っているはずだ。
また、学校関係者に用があるならばこんなところで立ち止まっていることなく、中へと入っていけばいいだけの話だ。
中に入ることもせず、また、これから出てくる子供を待つわけでもなく、慌しく去っていく男からは、怪しさと不審しか抱かなかった。

体のどこかで警鐘が鳴るのを感じた一哉は、すぐさま行動に移した。
その日のうちに男の身元は割れた。
伊達と男の関係も―。

ただ、何故この場にいたのか狙いは分からなかった。
狙いは怜迩なのか―。
それとも別の何かか―。

時間の経過とともに、一哉の危惧は大きくなっていき、彼に危機感をもたらした。
偶然とはいえ、男と言葉を交わしていた伊達にも疑いの目が向き始めたのは自然なことだろう。

一哉が自分のネットワークを使って男―山崎のことを調べさせたは、いいのだが、一向に尻尾を出さないというか、相手も同業者だ。簡単に尻尾を掴ませるようなヘマもしない。
時間が経過しても、一哉が知ることができたのは、どうやら山崎の狙いが怜迩であるということ。
そして、伊達と何やら親しい間柄であるということだけだった。また、伊達についても図りかねていた―。
男の存在に気づいていながら、一哉に報告してきたのは、遅すぎるくらいだったことも一哉の疑心暗鬼に拍車をかけていた。



時間を浪費しただけで、大した情報も得ることができずに一哉は痺れを切らした。
空白の時間を作った。
態と怜迩が、1人になる時間をお膳立てしてやったのだ。

その日、突如として寄り道をするように命じた一哉に伊達が怪訝な顔つきでまた、不満げな様相をしているのを気づいてはいたが、敢えて、そうさせた。
いくら相手の出方を見るためとはいえ、怜迩を1人にすることはそのまま彼の危険に直結する。
恐らく、綾が知ったら怒り狂ったかもしれない。
あぶりだすためとは言え、みすみす危険に晒すなどとは、仮に綾が知ったとしたら怒り心頭だろう。

当初、半ば思いつきだけで怜迩が1人になる時間を作った一哉だったが、それに素直に相手がかかってくれるとは思ってもみなかった。
しかし、相手は通常であれば、一哉と伊達が一緒にいるはずの怜迩の側に誰もいないという千載一遇のチャンスに飛びついた。
伊達の運転する車で、到着した頃には、既に怜迩が出てきてもいい時間だったのだが、そこに怜迩の姿はなかった。
苛立たしげな様子で、車から降りた伊達を横目に一哉は、伊達とは違う方向に目を向けた。
ここにいなければ、怜迩がいる場所とすれば校内にまだ残っているか或いは、既に校外に出ているかのどちらかだ。
伊達が、校内にいる関係者に怜迩の居場所を聞こうとするのならば、自分は逆を気にして然るべきだ。

助手席の窓から車の背後を見ると小さな物陰を見た。
直感的に何かを感じた一哉は、衝動的に飛び出した。
乱暴にドアを閉めると後方を確認した。
間違える筈もなかった。すぐに道路に飛び出そうとしている後姿が怜迩だと分かった。
何故、道路の真ん中にいるのだという疑問が浮かびあがってくる前に、道路の向こう側に転がったサッカーボールの存在に気づいて状況を把握した。
そして、前方から近寄ってくる車に気づき、体に緊張感が走る。

「戻れ!」

一哉は、前方に向かって進んでいた伊達の背中を呼び止めた。
呆けた顔をして、自分を見ている伊達に向かって間髪入れずに声を張り上げた。

「ぼけっとするなっ!!」

伊達に背を向けると先に一哉は走りだした。
すぐに背後から、追いかけてきたと感じた男は、すぐに横を風が通りすぎるとともに、体が小さな子供を抱いて地面を転がった。
直後に己の目の前を急ブレーキを効かせたために盛大な音を鳴らして車が通り過ぎていき、数メートル先で止まった。
辺りには、タイヤとアスファルトの摩擦によってタイヤのゴムか、アスファルトの表面か何かが溶けたような嫌な匂いが立ち込める。
伊達と怜迩の無事を確認した後、一哉は迷わず車に向かって駆け寄った。
急停止によって車体が揺れ、その影響によって大きく体も揺さぶられたに違いない。
運転席に座る男はハンドルにもたれるようにして、背中を丸め、大きく深呼吸を繰り返していた。
一哉は、その男の姿を窓の外から一瞥した。
一哉が太陽の光を遮るようにして立っていたために、不自然な影ができたことによって車内の男は、顔をゆっくりと持ち上げた。
しかし、次の瞬間持ち上げた足で一哉が強く車体を蹴り付けたことによって生じた音にびくりと体を震わせた。
そして、さらに男―山崎は、一哉の般若然とした鬼気迫る表情にひっと喉の奥で悲鳴を飲み込んだ。
それと時、同じくして、ガラスが一瞬に割れる音がしたと思ったの束の間、自分の脳が揺れるのを山崎は感じた。
砕けたガラスがぼろぼろと零れ落ちる音と、ぐわんぐわんと揺れる視界。

一哉が車を力いっぱいに蹴り付けるとべこっと車体は変なへこみを作った。
力を入れれば入れるほど、己の体に返ってくる反動はさらに強い衝撃となる。
硬い金属を蹴ったことによって自分の右足は、じんじんと痺れてはいたが、構わずに肘を思いっきり力を入れて、窓ガラスに叩き付けた。
ピシッと言うガラスに日々の入る音がしたと思ったら、次の瞬間には粉々に砕け、そのまま運転席に座っていた男の右頬にヒットした。
醜い悲鳴が一哉の聴覚を刺激する。
一哉の肘が入った頬を押さえながら呻く男を気にすることなく、一度引いた腕を伸ばして肘についたままのガラスの破片を振り落とすと、もう一度腕を伸ばして、かかっていたロックを外すと、乱暴に扉を開け、痛みに呻く男を引きずり下ろした。

一哉は、男の頤を掴み上げ、ぎりぎりと力を入れて締め上げた。
苦しげな呻き声に煩わしげに眉間に皺を寄せた。



「覚悟はできてんだろうな。てめぇ」

地を這うような声に、今にも意識さえ飛んでしまいそうな男は、戦慄を覚えた。

 


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