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更新日記と小説(18禁)とたまに嘆き. 嫌いな方・興味のない方・間違っちゃった方はバックバック

2026

0211
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2008

0502

Vizard (33)



警察によって事情聴取を受けた後、解放され、家に帰ろうと警察署を出た一哉を待っていたのは、父と兄2人だった。
神妙な顔をした彼らを見た時、ふっと自嘲気味た笑いが一哉の口から零れる。

役立たず共が雁首そろえて何しているのか―と。

そんな彼らの前を素通りしようとした一哉は、引き止められた。

「一哉」

父の低い声に、ぎろりと鋭い視線を送る。
息子のそんな睨みは、初めてだった。
否、忘れていただけで、最初に亡き愛人が産んだ自分の子供を妻のいる家へと上げたその日に送られた小さな子供からの視線と同じだった。
10年以上前のことを忘れていただけだ。
そうだ。
最初から何一つ変わっていないのだ。

「何かご用ですか?」

冷え冷えとした声音。

「ふん。英雄気取りか?」

本日の失態の原因である兄の宗司の声にぴくりと一哉の表情が引きつった。

一体、誰の所為だと―。

しかし、ここで苛立った様子を見せては、程度の低さを露見しているだけに過ぎない。
くすりと笑ってみせた。

「いいえ」

綺麗な顔に象られた笑みは、その目が笑っていなければ不気味さと腹立たしさを一層煽るだけだ。
それが、憎い相手であれば尚更のこと。
父はさておき、兄2人の癇には障ったようだった。
それすらも内心では笑っていた。
馬鹿で低俗な男達だと。

「今日のことは、僕の責任のようですからね。責任に対する義務を果たしただけですよ。どこかの誰かさんとは違ってね。謝るだけなら猿でもできる。…違いますか?」

たっぷりと棘をこめた一哉の言葉に、宗司の顔が怒りに赤く染まる。
そして、父親は眉間にぐっと皺を寄せた。

「まぁ、猿真似しか出来ない時点で猿以下でしょうがね」
「一哉。貴様…」
「くだらない言い訳をつらつらと並べている暇があるなら、探しにいった方が時間の無駄がなかったと思っただけですよ。誰かを見ていてね…」

にっこりと笑う一哉。
宗司が怒りに任せたまま一哉の制服の襟首を掴み上げた。
大きく揺さぶられるが、既に殴られることに慣れている一哉は全く動じない。
自分の台詞は、彼のプライドを傷つけるような言葉をわざと選んでいる。
その後の兄の行動も至極簡単に読めていた。

「どうぞ。気のすむまで殴ればいい。まぁ、今回あなたには、いいところが一つもなかったようですしね」

くすくすと更に怒りを煽るような台詞を選んでは吐く。
一哉の手のひらの上で転がされるようにして、激情を覚える兄の顔を見て喉の奥で笑いを噛み殺していた一哉だったが、それは横から飛んできた拳によって中断させられた。
何も己だけでなく、自分の襟首を掴みあげていた宗司までもが殴られたようで、掴まれていたはずの襟首が解放されたが、突然のことにバランスを崩し、一哉はよろめきながら足を2、3歩踏み、その後なんとか地面に尻をつくことを避けることができた。
一方の宗司はと言えば、突然の予想もしない衝撃に地面に伏していた。
この殴られた後の2人の姿が、如実に力の差を表していたのかもしれないし、もしくは、2人によって力を使い分けていたということも考えられなくもない。
しかし、その真意を問うことはできなかった。

「いい加減にしろ」

苦々しい兄の一喝によって―。

「宗司。今日の非は、全部お前の責任だ。一哉に感謝しろ」

殴られたところを抑えながら、苦悶の表情を浮かべた。

「一哉。貴様は、宗司を煽るようなこと言うんじゃない。お前も勝手な行動は今後…」
「あんたも一緒だろうが」

宗司にびしっと苦言を呈した後、一哉に向かって同じように小言を言おうとした弥一だったが、全てを言い切る前に、一哉自身によって遮られた。
弥一の目が見開かれる。
己を睨みつける義弟の視線に思わず息を呑んだ。

「何様のつもりか知りませんが、偉そうな口利くのは、勝手ですけどね。何もせずにのうのうとあの場でただ頭を下げる男を見てるようじゃ程度が知れてるというものですよ。現当主、次期当主が雁首揃えて何やってるんだか。その癖、一番の役立たずに先を越されてちゃ世話も面目もないですね。失礼します」

あろうことか父までも馬鹿にした言葉に弥一の怒りのボルテージは上昇していくばかり。
どこまで、恩知らずなヤツだろうかと―。

背を向けて今度こそ彼らの前から姿を消そうとした一哉だったが、そう簡単にはいかなかった。
今度は、弥一が怒りの表情を滲ませて一哉の肩を掴んだ。
それを煩わしげに見た後、一哉はその手を掴み上げ、主家である水原の家で見せたときと同じように兄の体を地面にねじ伏せようとした。
いい加減煩いと―。
コンクリートは木の床とは異なり、さぞかし体に響くだろうに―と口許をにやりと歪めた。
しかし、それは父親によって制止された。

「一哉!やめろっ!!」

チッと舌打して兄の腕を掴んでいた手を離した。
そして、父親の顔を睨みつける。

「お前、何故お嬢様の居場所がわかった」
「…」

何を言い出すかと思えばそんなことかと思い、息を吐き出しながら軽く首を横に振る。

「何故、それをあなたに言わなくてはならないんです?」
「今後のために…、草壁の家としてだな」
「馬鹿げたこと言わないでください。名前はやっても草壁の人間だとは認めてないくせに―調子いいことばかり言わないでくれませんか。これは、僕が僕自身で培ってきたものです。何であなた方に無償でそれを提供しなければならないんですか?冗談も休み休み言ってください」
「一哉!貴様…。この恩知らずめ」

一哉の言葉に異常に興奮した宗司が声を張り上げる。
しかし、一哉の一睨みで押し黙った。
それほどの迫力があった。
既に、一哉の理性は我慢の限界が来ていた。
今日のこと。
目まぐるしく変化した一日に疲れているのに、ここへきて鬱陶しい以外の何物でもない家族とは名ばかりの者たちの干渉。

「誰が恩を売れなんて頼みましたか?大体、何故、今まで僕が何も言わずに黙って殴られてサンドバッグになってあげていたと思うんでしょうね。せめてもの宿代だと思っていたんですけどね…。あなた方には伝わっていなかったようですね。それでも余りあるくらいだと思っていたんですけど、足りませんでしたか?」

兄達は無視して、父親を睨み吸える。
父は、一哉が他の家族によってどのような扱いを受けているのか知りながらも見てみぬ振りをして何もしなかったという心苦しさがあるのか一哉の視線から逃げるように顔を逸らした。
そんな父に侮蔑の視線を送りながら、一哉は続けた。

「少なくとも僕には十分すぎると思っていたんですけど…。あなた方が何かしてくれましたか?してくれたことと言えば、まだ幼かった―しかも、母を亡くしたばかりの幼児の手から母の遺影を奪い、焼き捨て、愚弄したことくらいだと思うのですが、間違いでしょうか」

押し黙った彼らを一哉は鼻で笑うとじゃりっと靴音をたてて、その場から姿を消した。

「どこへ行く」という問いには答えを返さなかった。
ひっそりと暗闇に姿を消した。
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