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更新日記と小説(18禁)とたまに嘆き. 嫌いな方・興味のない方・間違っちゃった方はバックバック

2026

0320
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2008

0411
いつも少し早く終わる授業。今日も同じく規定となっている時間を待たずに教授が姿を消した。
途端にがたがたと椅子から立ち上がる音や、ノートや教科書をしまう音、人の話し声などで室内は騒がしくなる。
周りと同じように机に出したものをしまう。

「何も聞いてなかったね」
「これならサボってたのと一緒だわ」

苦笑交じりに深岬に声をかけた津田に激しく同意して椅子から立ち上がる。
一体何してるんだかと思わないわけではない。

教室の外に出ようとすると声を掛けられる。

「深岬ちゃん」

その高い声を忘れていたわけではない。
ただ声が聞こえてきたときに途轍もない疲労感に見舞われた。

「何?」

ぎこちない態度で問うと涼子よりも身長の高い深岬を下から上目遣いで見つめながら言う。

「秘密ってなに?あれからメールしたのに気づいてくれないから気になって仕方なかったんだよ」

軽く頬を膨らませる涼子。
頬を膨らませていても顔に貼り付けられた笑顔のお陰か怖くも何ともない。
それどころか誰が見ても可愛いいと思えるものなのだろうだが、深岬は素直にそう思うことができなかった。
数ヶ月前なら思えたかもしれない。
涼子の言葉を聞きながら、講義の間に考えた理由をそっくりそのまま言おうとした深岬だったが、ぴたりと止まる。

「嘘…。メール?」
「やだぁ。気づいてなかったの?」
「あれ?気づいてなかったの?」

慌ててバッグの中から携帯を取り出して確認すると画面上にメールの着信を告げるマークが表示されている。
あっと思うのと同時に、何故か涼子だけでなく隣の席にいた津田がまるで揃えたかのように同じ台詞が2人の口から滑り落ちる。
涼子はまだいい送った本人なのだから、何故深岬の携帯が入ったバッグから自分よりも遠くに座っていた津田が気づいていたのか―。

「ちょっと、何であんたが気づいてるわけ?」
「ぶるってたじゃん」
「何で言わないの」
「てっきり気づいてるのかと思ってたし」
「気づいてたらあんたと筆談してるわけないでしょ」

足で津田のジーンズを履いた細い足を加減もなく蹴り上げると「痛い」と悲鳴があがるがふんっと睨みつける。
深岬に蹴られた足をさする津田と面食らったように目を剥く涼子。
携帯を操作して数十分前ほどに来た涼子からのメールを確認する。

『秘密って何?気になるよ』

という文面を見て、もう一度津田を睨みつけると津田の傍には涼子が心配そうな顔して駆け寄っていた。

「大丈夫?」

加減はしなかったがそんな大袈裟にするほどの力ではない筈だと思うのは、深岬の思い違いなのだろうか。
大丈夫と答える津田に対して執拗なまでに「大丈夫?」と気遣う涼子に、深岬は睨みつけたときにはもう一言くらい文句を言ってやろうかと思っていたのだが気が削がれてしまった。

「…ノートコピーして、本探しに行ってただけよ」
「え?何が?」

声のトーンを落として答えた深岬に聞き返してくる涼子に何だか馬鹿らしく思えてきた。
自分で聞いてきた癖に今は邪魔しないでくれとばかりに深岬に対してはそっけない態度。深岬には今の涼子の態度がそう思えてならなかった。

「なんでもない……。帰る。また、明日ね」
「あ、待って!」

引きつった笑みを浮かべながらくるりと背を向けた深岬に引き止めるような声をかけたのは、津田ではなく涼子だった。
一瞬、気づかない振りをして帰りたくもなったのだが、この至近距離で気づかない振りは無理があるだろうと思い足を止め振り返る。

思いっきり怪訝な顔つきをしている深岬に対して、涼子はにこりと笑う。

「あのね。旭クンの友達とも話してたんだけど…飲み会しない?」

―何を言い出すのかと思えば飲み会かよ。

とは顔には出さないものの心の中言う。

「旭くんもいいでしょ?」
「あ…ああ。深岬ちゃんがいるなら」

ご自然に答える津田。
ぴくっと涼子の顔が一瞬だけだが、固まったのを深岬は見逃さなかった。

―あんたもそこで何故に私の名前を出すっ!?

強かな彼女はすぐに表情を取り繕っていたが、内心では穏やかではないだろう。

「いつ?」
「急なんだけど…今日は、ダメ?」
「随分と急だね…」
「何かみんなの予定聞いてたら今日しかなくって…」

苦笑とともにはっきりと言う深岬に涼子も苦笑を浮かべた。

「ゴメン。今日は、パス」
「え?」

3日酔いの状態の深岬はとてもじゃないが飲む気分になんて慣れない。
講義に遅刻してまでも貰った薬のお陰かだいぶと収まってはきているが、思い出しただけでも気持ち悪くなってくるというのに、目の前にそれが出てきたら一体どうなるか分かったものじゃない。
まさか、断られるとは思っていなかったのだろう。涼子は驚いたような顔で深岬を見て、その後深岬が行くなら行くと行った津田の顔を確認する。

「じゃ、俺も行かない」
「そんなぁ」
涼子が絶句する。
余計な火種を増やすなと思う深岬の思いは間違ってはいないだろう。
変に涼子から睨まれる前に口を挟む。

「あんたは行け」
「深岬ちゃん行かないんだろ?」

他人仕様で話しかけてくる津田は途轍もない違和感を深岬に与え、どこか深岬を落ち着かなくさせる。
その違和感を追い払うように一気に言う。

「あんたは、親がいなけりゃ何もできない子供かいっ。私は、2日酔いで思い出すだけでも気持ち悪いからいかないの。あんたは違うでしょ?私が行くなら行くつもりだったんだから。違う?行けるなら行ってあげなよ。企画したの誰か知らないけどさ…その子に悪いよ」
「深岬ちゃんいないんならつまらない」
「それは行ってみないとわからないでしょ。次があるんなら次のときは絶対参加するし…あればだけどね?もしあったら、また誘ってよ。じゃ、私は気持ち悪いから帰るわ」

津田の答えは聞かずに一方的に言い切ると手を振って教室の出口へと向かう。

「あ、うん。お大事に」
「それ変だって…ただの二日酔いだもん」

深岬の背中に声をかけた涼子を振り返るとすがすがしいほどの笑顔で手を振っている。
対して、津田と言えば恨みがましい顔を深岬へと向けている。
敢えて気づかない振りをして涼子に手を振り返すと今度こそ教室を出た。



「あー冷や冷やした…」

外に出るなりぼやいた声はひどく疲れた声だと自分でも分かる声だった。

「あのバカ…。ややこしくすんなっつーの」

という台詞は一人に向けられたもの。
その人物は、まだ教室内にいる。

「帰ろ。帰ろ」

と言って荷物の置いてある雪子のアパートへと向かう深岬だった。
帰りの電車の中で見事に爆睡してしまった深岬だったが、乗り換えの駅について何気なく携帯を確認するとメールが一件届いていた。
誰からだろと思いながら確認すると自分が涼子たちの飲み会に参加するように仕向けた津田からのもので、何か用があったのかと思いながらも受信メールを開ける。

『深岬ちゃん。ひどいよ』

そのメールには、それだけが書かれていた。
深岬は、苦笑しつつもそのメールに返信はすることなく消去すると携帯を鞄の中にしまった。
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