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更新日記と小説(18禁)とたまに嘆き. 嫌いな方・興味のない方・間違っちゃった方はバックバック

2026

0322
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2008

0107

『サカガミが気になるの?』


落ち着かない頭に帰り際に望に言われた言葉が深岬の頭を巡る。
電車に揺られている深岬の頭を支配するのは、それだけだった。
終電間際の時間だ。他の乗客の話し声もしているのだが、彼らの話し声も全く聞こえない。
望の言葉だけがぐるぐると巡る。

落ち着かなかった。

彼女は、更に続けて言った。

『好きなの?』

――好き?

それは、深岬にははっきりと答えることができなかった。
自問自答を繰り返す。

寧ろ、その答えが欲しかったのは深岬の方だ。





確信に至るまで時間はかからなかった。
だから、自分はどうしようもないくらい気になって仕方がなかったのだ。
麻美と坂上の仲のいい姿を見せられて落ち着かなかったのか―。

望や麻美が坂上のことを親しげに“サカガミ”と呼ぶのを聞いて、そわそわする変な感じがしたのか。
自分も彼女達のように坂上に近づきたかったということなのか。
望の言う通りならば、全て説明がつく。
ならば…などという仮定の言葉などではなく、そうなのだ。

自分は、坂上のことが好きなのだ。
そう確信した。

別に深岬にとってこれが初恋というわけではない。
人並みに好きな相手だっていた。
付き合ったことはないが――。

ただ気付かなかっただけなのだ。
何故、他人から指摘されるまで気付かなかったのか不思議でならない。

乗り換えの駅で電車を降りる深岬の足取りはふらふらと落ち着かない。
まるで深岬の動揺を示すかのように。



『俺は、部内では絶対に彼女を作らない』



数週間前に、そう宣言していた坂上の言葉がフラッシュバックする。
足が止まる。



『…いるよ。これが信じられないくらい可愛いのがね』



1ヶ月以上前に、ただ同じ学年の中で出た話を確認するためだけに聞いた雪子の言葉も思い出される。
彼女がいる。

可愛い彼女。

そりゃそうだ。
最初に会った時も涼子に興味津々だった。

どう考えても自分には、無理――。


彼女から奪うような根性も自信もない。
あるのは、ダメだと思う卑屈な根性と最初から諦めるという選択肢。

けど、それを黙って選べるほど理性が発達しているわけでもない。



戸惑いばかりが、大きくなってどうしようもなかった。





坂上への思いを自覚してから、どうも目で彼の姿を追いかけている自分がいる。
いつも途中ではっと気付いて視線を外すのだが、気付けば追いかけている。
これでは、人のこと言えない。
小島に対する雪子の姿を見て笑いながら忠告していた自分が愚かで情けなく感じる。

今も坂上は、麻美と一緒に笑いあっている姿がある。
このもやもや感は、間違いなく『嫉妬』。
その2文字に尽きる。
それ以外の何物でもなかった。



その週末に迎えた試合は散々だった。
コートに入っていてもいまいち集中できない自分がいるのだ。
通常なら勝てない相手じゃなかった。

結局、負けた。

―最悪。

恋をして上手くいく人間と失敗をする人間2つのパターンが存在するという。
深岬は、自分は絶対に後者だと思った。
ぬかるみに嵌って自滅する。
それが自分だ。

肩を落としてコートを去る深岬に一番に声を掛けてきたのは、他でもない坂上だった。

「お疲れ」
「…あ、はい…」

相手の顔を見ないようにするのが精一杯。
坂上は、そんな深岬を見てもゲームに負けて気落ちしているだけと思ったのかぽんぽんと慰めるように深岬の頭を軽く2、3回叩く。

「あんまり落ち込むなよ。こんな時もあるさー。まー次、俺の試合あるから応援しててよー。俺は勝っちゃうよ。強いからねー」

いつもの自信たっぷりの坂上の背を見送る。
姿が見えなくなった後、さきほど大きな無骨な手が触れていったところに手を伸ばして触れる。

さっきまで、自分の不甲斐なさを恥じて下を向いていたはずなのに、もう浮上しかけている自分がいる。
現金すぎる自分に笑いすら零れてくるが、慌ててそれを引っ込める。
負けて笑っていたのなら、世話ない。
見る人が見たら不謹慎だと怒るだろう。

いつまでも廊下で立っているわけにもいかない。
力のない足取りで応援席の場所に向かう。

「おつかれー」
「なんか調子わるかったね?」
「ま、そういう時もあるよ」
「私達が挽回するから気にしなくていいよ」

と口々に慰めの言葉を口にする上級生の言葉が耳に痛かった。
理由を彼らが知ったら怒るに違いない。
罪悪感が深岬の中で生まれる。
彼らの顔を直視することができなかった。

「深岬らしくもない」
「あ…雪子」

少し膨れた顔で言う雪子の姿に深岬は引きつった笑いを浮かべる。

「注意力散漫」
「…だね」
「何か悩み事あるなら聞くから」

と言って肩をぽんっと叩いて雪子が応援席から去っていく。
その気遣いが痛い。
折角、雪子が気遣って言ってくれたのに深岬はそんなことを思った自分を恥じ入るしかなかった。
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