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更新日記と小説(18禁)とたまに嘆き. 嫌いな方・興味のない方・間違っちゃった方はバックバック

2026

0322
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2008

0106
――それは、あまりに突然だった。

練習後、深岬が使用したシャトルやネットを片付けをしていると走り寄ってくる影があった。
望の姿だった。
彼女の手にも深岬と同じように練習で使用したものが握られている。
深岬はネットを受け取ると望には、シャトルを渡す。
辺りを見回して拾い零しがないかどうかを確認した後、倉庫に向かって並んで歩く。

「あのね?時間ある?」
「時間?」
「うん。ちょっと見て欲しいんだけど…」
「別にいいけど」

試合が近くて気になっているところでもあるのだろうと特に考えもせず頷いた。
初めての試合前なんて特に気になるところが出てきてもおかしくはない。
倉庫内に使用したものを片付けた後、少しのシャトルを手にしてもう一度体育館内に戻る。
体育館内にある時計で時間を確認して、頷くと望は嬉しそうに顔をほころばせる。

「あ、でも。私でいいの?」

と聞き返した深岬の頭に浮かんでいるのは、坂上の顔だった。
視線を望から逸らして頭に浮かんでいる人物の姿を探す。

「うん。すぐ終わるから…」

まぁいいって言うのだからいいのだろうと結論付けて深岬は、望と一緒に体育館の片隅に行く。
上級生が帰り支度しているのを見つけて、一言言っておかなくてはまずいだろうと思った深岬は、望に少し待っててとだけ言うと上級生の一団に向かっていく。

「すいません。少し残っていくので、戸締りしておきます」
「え?そうなの?ご飯は?」

深岬の言葉に、副主将をやっている慶子が驚いたような声をあげる。

「私と望は、いいです」
「望も?」
「はい。気になるところがあるみたいで、ちょっと居残り練習してくんで。鍵、ください」
「えー。じゃあ、私も残っていこうかな。サカガミ、見て欲しいんだけどー」

と声を上げたのは、麻美だった。
麻美と彼女の口から出た坂上に視線が集中する。
それは、深岬とて例外ではなかった。
自分には到底真似できない。

「あ?いいけど…じゃ、俺が鍵しめとけばいいっすよね?」
「あ、うん。じゃ、お願い」

坂上は、慶子から鍵を受け取ると麻美とコートの方へ消えていく。
それを目で追いかけていた深岬だったが、もう用は済んだので自分も望のところへ戻ろうとする。

「あ、じゃあ。お疲れ様です」
「あ、待って待って。俺も一緒に…」

上級生と一部の同級生に背を向けようとした深岬の肩に大きな手がかかる。
振り返った深岬の目には、野坂が笑っている姿がある。

「野坂さんも気になるトコロあるんですか?」

と聞くとにやりと肩頬だけを吊り上げて笑い、先ほどまで自分が居た一団に手を振る。

「おつかれさーん」

そういうと深岬の顔を覗き込むようにして背をかがめて言う。

「俺はないよ?けど、深岬ちゃんあるでしょ?」

思わずその指摘に眉間に皺を寄せる深岬。
相手の顔を伺うように見るとどこか飄々としたような表情だった。

「肩。気にしてなかった?」

と言われて思わずはっとする。
練習前に坂上に指摘されて、無意識に気にしていたのだろうかと思う。

「何か今日、ずっと上の空って感じだったしさ」

何気なく言う野坂の言葉を聞きながら、深岬は横目で自分達とは反対側にいる坂上と麻美の姿を見る。
すぐに野坂に向き合う。

「あ、今日坂上さんに言われたんですよ。腕が甘いって」
「それでか」
「ハイ」

立ち止まっていた足を動かしながら、望の傍に行く。

「深岬ちゃん?」
「野坂さんも付き合ってくれるって」
「え?いいんですか?」
「いいの、いいの。困ってる後輩がいたら助けてあげるのが、センパイの基本でしょ?」
「ありがとうございまーす。やったぁ」

嬉しそうに一際高い声を上げて喜ぶ望。

深岬と野坂の2人で望の要望を聞いていたのだが、どうも深岬はそちらに意識を向けることができない。
坂上と麻美のいる方が気になって仕方ないのだ。
背を向けているのに、気になって仕方ない。
笑い声が聞こえてくれば、尚更気になる。
落ち着かない。

背後の2人に気を取られていた深岬は、自分の横にいた野坂が望を見ている傍らで自分を横目で見ていることなど気付かなかった。
そのまま時間を無為に過ごした。



「野坂さん。まだやります?」

急に近くで聞こえてきた声に深岬は心臓が飛び出そうなほど驚いた。

「何?坂上たちもう帰るの?」
「飯でも行こうかって話をしてたんですけど…野坂さん達もどうかなと思って」
「あ、じゃあ終わるよ」

坂上の言葉に望が床に落ちたシャトルを拾いあげながら言う。

「あ、でも深岬ちゃんいいの?」

急に野坂に声を掛けられて深岬は、はっとして野坂の顔を見る。
全員の視線を自分に感じる。

「あれ?深岬ちゃんも何かするの?」
「え…と。私は、いいです」

軽く手を振ってみせる。

「じゃ、着替えて行きましょうよ」

坂上の言葉に頷くようにして、深岬は付き合ってくれた野坂に礼を言うと望を手伝って倉庫内に片付けをするために向かう。

「深岬ちゃん、ごめんね」
「何が?」

倉庫に向かう途中で深岬よりも低い身長の望が深岬を見上げて言う。
惚けたような表情で聞き返す深岬に視線を戻しながら倉庫内に入って行く。

「野坂さんに見てもらうんじゃなかったの?」
「んーん。というか、野坂さんは望を見るためについてきてくれただけだし、私は別にいいよ」
「そうなの?」
「そうだよ。だから気にしないで」

片付けを素早く済ませると着替えをして体育館の外に出る。
いつもなら雪子にラケットとシューズを預けるのだが、今日は先に帰ってしまっている。
仕方ないと思いつつ持って帰るかとラケットを見つめる。

「どこ行きます?」
「どこにするか?」

野坂と坂上が行き先を決めている横で、麻美と望が他愛もない話をしている。

「深岬、深岬。それ家で預かろうか?」
「え?」
「いっつも雪子さん家に預けてるでしょ?家に持って帰るの大変じゃない?」
「いいの?ありがとう」

大学の近辺に住んでいる麻美の提案に深岬の顔が俄かに明るくなる。
願ってもないことだ。
深岬は、笑みを浮かべて礼を言うと預ける。

「じゃあ、置いてくるね。店決まったら教えてくれる?」
「分かった」

と手を振って麻美を見送る望と深岬。
麻美が一度荷物を置きに家に戻っていった直ぐ後に行き先が決まったのか坂上から声がかかる。



夕食を食べ終えて家に帰る途中だった。

「ご馳走様でした。お疲れさまです」
「おつかれー」

坂上と野坂に連れていかれた店先で別れる。
方向が一緒の麻美、野坂、坂上と別れて、望と連れたって駅までの道を歩く。
実家通いだが、大学の近辺に住んでいる望と深岬が駅まで並んで歩く。

「あのさ…深岬ちゃん」
「なぁに?」
「サカガミが気になるの?」
「え?」

思わず足が止まる深岬だった。
立ち止まって自転車を押しながら先を歩く望の後ろ姿を見送る。
歩みを止めた深岬を怪訝に思い深岬を振り返る。

「深岬ちゃん?」
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