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更新日記と小説(18禁)とたまに嘆き. 嫌いな方・興味のない方・間違っちゃった方はバックバック

2026

0322
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2008

0105
6月の後半から7月にかけて試合の日程が頻繁に組まれている。
深岬が入部して最初に参加した試合のようなほとんどお遊びの交流戦を含め、れっきとした公式戦も組まれている。
むしろこの時期は公式戦の方がより多い。

この時期になると授業も適度に力の抜けるものとそうでないものの判別もつく。
どの時間にいけば、体育館が自由に使用できるのかも既に把握済みだ。
下宿生の大半は、空き時間には自宅に帰ったりする。
学科内の深岬の友人である涼子もそんな1人だ。
自宅から通う深岬にそんな場所はない。
最初の頃は、涼子が「家にくる?」と声を掛けてくれて、彼女の言葉に甘えて涼子の部屋で空いている時間を過ごしたりしたものだったが、毎度毎度では流石にいくら友人であっても気が引けるというもの。
今では、そう言った空き時間は体育館で過ごすことの方が多くなった。
体育館が使えない日は、涼子と過ごしたり、一人で図書館に入り浸ったりして時間を潰している。

今日は、練習日でしかも4コマが空きの日だった。
これで部活がなければ、真っ直ぐ家に帰るところだが、そうもいかない。
深岬は、手にラケットを持って体育館に向かう。
体育館が空いているのはすでに知っている。
授業などで利用されていない限り、基本的に自由に使っていいとされているのだが、中に誰か先にいないか確認するときはいつも緊張する。

そっと中を確認するとラケットを振っている音が聞こえてきて、先客がいたのかと思いながら体育館内に入る。
明かりをつけていない体育館の中は、はっきり言って外の光があまり入ってこずに薄暗い。
明るいところから薄暗いところへ入ったため、少し目に違和感を感じつつも先客を確認する。
後ろ姿しか見えなかったが、深岬にとっては、それだけで十分だった。

「坂上さん…」

ラケットでシャトルを天井まで打ち上げていた坂上は、突如聞こえてきた小さな自分の名前を呼ぶ声に背後―体育館の入り口を振り返る。
深岬の姿を認めて笑いかけた。

「深岬ちゃんじゃん。何?練習しにきた?」
「空きコマで退屈だから、来たんですけど、坂上さんがいるなんて思いもしませんでした。よく、野坂さんとかには会うんですけどね」
「俺、ケッコー入り浸ってるよ」
「そうなんですか?」
「そうそう。丁度いいや、ゲームやろうぜ」

中に入って、手にしていたカバンを壁際の適当なところに置きながら坂上と会話を続ける。
ラケットをケースから取り出して、ガットをチェックしていると坂上からゲームを誘われて、断る理由もなかったので頷くとネットも張っていないコート内に入る。

「準備運動がてら最初は、打ち合いでいい?」
「はい、何でも」

坂上の言葉に深岬が頷くとすぐにシャトルが飛んでくる。
軽く打ち返しながら、会話を続ける。

「いつもこの時間いるんですか?」
「あー、いたりいなかったりかも」
「練習相手いないと詰まらなくありません?」
「まぁね。だから今日は助かったよー」

飛んでくるシャトルを打ち返す音と坂上の少し低めの声、深岬の高い声が他に誰もいない体育館内に響く。
最初は、会話とともに軽く打ち合いを続けていた深岬と坂上だが次第に互いに口数は少なくなっていき、ラケットを握る手に力が篭る。
目の色は真剣味を帯びていく。

風を切るような音。
ガットに打ち付ける小気味いい音。

深岬も坂上も2人が揃いも揃って負けず嫌いな所為か。
白熱していく空間。

「ああ!!」
「っし!」

深岬の悲鳴のような声と坂上がラケットを持たない手でガッツポーズをする。
床に落ちたシャトルをラケットで掬い上げるようにして反対の手で持ちながら、深岬は素直に喜びを表現する坂上の顔を見た。
清清しいまでの笑顔を深岬はまぶしく感じる。

「もうちょっと手加減してくださいよ…坂上さん強すぎるんだもん」
「いやいや。俺が負けるわけにはいかんでしょ?」

豪快に笑い飛ばす坂上に深岬は恨めしそうな視線を送る。
そんな視線すら楽しいのか坂上は未だに笑みを浮かべて額に浮かんだ汗を乱暴に拭いながら深岬に言う。

「もうちょっと腕、振り上げるようにしたらいいんでない?」
「腕?」
「そうそう」

アドバイスをしてくれる坂上に深岬はきょとんとして不思議そうな視線を送る。
「ん?」と聞き返すような仕草を坂上はしてみせる。
深岬は、動いたことによって熱くなった所為かそれともまた別の所為か原因は定かではないが、頬を染めたまま小さな声で「ありがとうございます」と言うと手にしたシャトルを軽くラケットで打った。



どれくらいの間そうしていただろうか。
気づけば練習時間が迫ってきており、人も集まってきていた。

「お前ら、電気ぐらいつけてやれよ」

呆れたように言う主将の久保田の姿に苦笑いを浮べて「すみません」という深岬と「めんどくさかったんすよ」という坂上に久保田も苦笑いを浮べる。

「じゃ、やめっか?」
「そうですね…あーあ、こんなことなら着替えてからすればよかった」
「ホントだなー」

何気なく言った深岬の言葉に反応するように言葉を返してくれる坂上。
一時間弱の間に酷使した腕を振り回すとカバンと着替えを持って更衣室に消える深岬。

「あんた。何で汗だく?」
「あれ。雪子いたんだ?んー坂上さんと遊んでたらいつの間にか本気になっちゃってさー」
「坂上と?」
「うん。そう、腕の振りが甘いって言われたけどね…」
「あーあいつ。人の悪いところ直すの得意だしね」
「そうなの?」
「しかも上級生とか関係なく。ずばずば言うのよー。また、それが的を得てるからイヤというか何というか…憎たらしい?」
「そーなんだ」

適当なロッカーの中に荷物を放り投げながら、雪子の話に気持ち半分で耳を傾けつつ手早く着替えを済ませる。
先に着替え終わっていた雪子と連れたって更衣室の外に出るともうほとんどの部員が集まっていた。
何となく深岬が坂上の姿を探すと坂上はもう既に他の誰かとシャトルを打ち合っている。
坂上と打ち合う麻美の姿を見つけた深岬の目はそこから離れなくなる。
下宿生の麻美は、家で着替えてから直接ここへ来たのだろう。
でなければ、更衣室で着替えていた自分と会うはずなのだから―。

決して坂上は自分の所有物ではないのに、何だか取られた気分でどこか落ち着かない。
妙にそわそわする。

「き…深岬」
「ぁ…ああ。何?」
「ぼうっとしてどうしたの?」
「何でもない」

はっと雪子の自分を呼ぶ声に目を見開くと間近に友人の顔があって驚く。
怪訝な顔をする雪子を誤魔化すと1年生の仕事であるネットを張るために雪子の傍を離れた深岬だった。
そのときも深岬は、敢えて坂上と麻美の姿を見ないようにして、もう既に動き始めている同級生を手伝うために走り寄っていった。
だが、気にしないように努めても気になっていたのは事実だった。

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