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更新日記と小説(18禁)とたまに嘆き. 嫌いな方・興味のない方・間違っちゃった方はバックバック

2026

0206
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2008

0803
Vizard(74)
 

今にも駆け出さんばかりの浮き足だった足取りで先を行く怜迩の後を、一定の距 離を保ちつつ追いかける一哉だった。
約束でもしているのだろう。
急いで目的地へと向かっている怜迩は、前だけを必死に見つめ、背後など全く見向きもしない。
一哉は、そんな怜迩の姿にもう少し周囲に気をつけろと小言の一つでも言いたい気分だったが、まだ年端もいかない子供に言ったところで、理解できるわけでも、ましてや実践できるわけもないだろう。
容易にそれが想像つくため、一哉はそのことについて考えることを放棄して後を追いかけることに集中することにしたのだった。



一哉が妙な違和感を感じ始めたのは、いつからだろうか―。
自分以外にも、怜迩の後をつけている存在を感じたのだ。
それは、ともすれば見逃してしまいそうなほどの小さな違和感。
眉間に皺を寄せながら、足を止めて一応周囲に目を配ってみる。
しかし、これと言って怪しい人物も物陰も見えない。
気持ち悪さだけを感じながらも気のせいかと首を傾げた一哉だったが、再び足を動かして、怜迩の後を追うことを再開させた。

――一抹の不安を感じながらも…。





その後も一哉は、周囲に気を配りながらも少し離れた位置から怜迩の動向を見守り続けた。
だが、不安は一向に払拭されない。
それどころか一哉の身の内に積もっていくばかりのようだった。
1人になった自室で、椅子に深く腰掛けながら難しい顔をして考え込む。

気のせいかもしれない。
―だが、この不気味な不安感は何か?
素直に気のせいで片付けられない自分がいる―。
それは、長年の勘とも言えるべきものかもしれない。

考えに耽っていた一哉の耳に遠慮がちに扉をノックする音が聞こえてくる。
ふっと意識をそちらに向けると、一人でに扉が開いた。
そこから顔を出したのは、綾だった。
綾は、素早い身のこなしで室内に身を滑りこませると椅子に座っている一哉に近づいてくる。

「怜迩は?」
「さっき寝たわ」
「不貞腐れてた?」
「寝るまでずっと一哉は意地悪だって言ってたわよ」

つい数十分前までの息子の姿を思い出したのか、くすくすと声をあげて笑う綾に、一哉は苦笑を浮かべた。

「約束を守らなかった怜迩が悪い」

厳しいことを口にしながらも、顔には笑みが浮かべられているのだからその厳しさは表には出てこない。
寧ろ愛情がありありと表れている。そんな表情だった。

「あら、それじゃ仕方ないわね。でも、あれだけぐずぐず言うほど何をさせたの?」
「うーん。大したことはさせてはないと思うんだけどな…素振りを3倍にしただけだけどな」

さらりと恐ろしいことを口にした一哉に綾は一瞬、顔を凍りつかせた後、すぐに噴出した。
今日の一哉の予定には、夕方から剣道の稽古の時間が組まれていた。
しかし、遊びにすっかり夢中になってしまった一哉は、その時間も忘れて遊びすぎてしまい、その時間までには帰ると言ったのに帰ってこれなかった。
当然、「仕方ないですね」と笑って許す一哉ではなかった。
お仕置きとばかりに、その後の剣道の稽古中にいつもよりきつい練習メニューを課したのだった。
不平を言えば、怒られるだけでなく、更にペナルティがつくことを知っている怜迩は、態度では不満だということを表しつつも口には出さずにこなしていた。
しかし、最後の方は、半泣きになりながらではあったが―。

「それは、8歳の子にはきついんじゃない?ベッドに入ってすぐに寝付くのも仕方ないわね」
「これでしばらくは時間に遅れる事はないと思うけど…」

そう口にした一哉はどこか気がそぞろだ。
綾は、怪訝な顔つきで一哉の顔にぐいっと近づけるようにして覗き込んだ。
突如、視界いっぱいに広がる綾の不満そうな顔に彼は、おどろいたように目をぱちぱちを繰り返した。

「何?」
「難しい顔して何考えてるの?」
「あ、いや…。ちょっと気になることが…」

言葉を濁した一哉に更に不満そうに綾は顔をずいっと近づけた。

「何?」

知らないことがあることが許せないというように綾も一哉と同じように難しい顔をして2つの瞳を覗き込んだ。

「何って…何かはよくわからないけど」
「はっきりしないわね」
「はっきりしないんだから、仕方ないだろ」
「ぜんっぜんわかんない!」

ぷぅと頬を膨らませて言う彼女を横目で見ながらも一哉は、何と口にしたら良いか迷いあぐねていた。
考えるだけでも疲労感を感じていた一哉だった。

「何だかよくないことが起きそうなんだよな…」

としか言うことができなかった。
それだけで、綾に伝わるわけもなく…。
綾はますます眉間に深い皺を刻んでいく。

「良くないことってどんなことよ」

俄かに声音がきつくなってしまう。

「んー。わからない」
「何よ…」
「ただ、今日、変だったんだよな」
「今日?」

不満を口にしようとした綾の言葉は、ぽつりと語り始めた一哉の声によって遮られた。

「そう」
「今日って…」
「怜迩が遊びに出かけていったときだよ」
「何が変だったの?怜迩は、時間こそ破りはしたけど、いつもと何も変わらなかったじゃない」

数時間前のことを思い出しているのか、綾は一哉から視線を逸らして何もない空間を見つめた。

「そりゃそうだよ。何もなかったし…」
「じゃあ、いいじゃない」
「そうだったらいいんだけど。どうもな…」
「何がそんなに気になるの?」
「怜迩を追いかけている奴がいるかもしれない」

想像もしていなかった一哉の言葉に、綾は目を瞠って、一哉の顔を信じられないものでも見るかのような瞳で見つめた。

「それって…」
「まだ、憶測の段階だけど」

一哉は、綾を見返すわけでもなく、自分の両手を組み、その指を遊ばせながら淡々と応えた。
問う綾の声は、俄かに震えていた。

「何で?」
「理由までは、わからないけど。探せばいくらでもあるだろ」
「それは、そうかもしれないけど…」
「気のせいかもしれないけどね」

その言葉は、できればそうであって欲しいという一哉の思いが籠められた言葉だった。
誰かにこの不安を消して欲しかった――

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