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更新日記と小説(18禁)とたまに嘆き. 嫌いな方・興味のない方・間違っちゃった方はバックバック

2026

0322
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2008

0114
いつもより早くついた深岬だったが、いつもと何ら変わらずに更衣室で着替えをしていると部屋に入るための唯一の扉が開く。
顔を覗かせたのは、雪子だったが、深岬の姿をそこに見つけて驚いたような声を出した。

「あれ、早いじゃん」
「うん。一本早い電車で来たから」

苦笑を浮かべて答える深岬の傍に寄ってくると雪子は、手にしていた深岬のラケットとシューズを差し出す。

「はい。ラケットね。でも、丁度良かった」
「ありがと。丁度いいって何が?」

深岬の荷物が置かれたロッカーの横に同じように荷物を置くと着替えながら雪子が安心したような声で言うのだが、深岬には訳がわからない。
聞き返した深岬に、軽く「ちょっと待って」と雪子は答える。
深岬は、雪子が着替え終わるのを待っていると雪子が深岬の手を引いて更衣室の隅置いてあるベンチのところまで連れて行く。
雪子に手を引かれるまま、ベンチに雪子と並んで座る。

「深岬。ちょっと話があるんだけど?」
「何?どうかした?」

真剣な顔でいつもより声を抑えて言う雪子に不安めいたものを感じずにはいられない。

「あ、別にあんたは直接関係ないからそんな構えないでよ」

雪子にそう言われたところで彼女の表情からは、とてもじゃないが気をぬくことはできなかった。
直感的に何かよくないことのような気がした。

「あのさ…今。ウチラ幹部の間で1年生の話が出ててね」

雪子は、深岬に直接関係ないとは言ったが、1年生という言葉を聞いた瞬間、関係ないとは言い切れなかった。
どきりとする深岬を置いて、雪子の話はどんどん進んでいく。

「え…」
「夏休み入ってもきちんときてるのって深岬と望だけでしょ」

その問いには、一応事実だから頷いておくが、フォローするわけではないが、一応他の1年生についても触れておく。

「そりゃあそうだけど、他にも来てるのはいるじゃん」
「あんた達に比べたら全然少ないじゃない。それに全く来てないのもいるじゃん。それで結構、皆ぴりぴりしてるんだよね」

誰がと問うまでもなかった。
それに雪子の全くきてないという言葉に脳裏に、幹部交代の日に深岬にしばらく行かないと深岬に公言し、その言葉通り一度も練習に来ていない麻美の姿が思い浮かぶ。
勿論、練習に来ていないのは、麻美だけでないが、深岬の脳裏に浮かんだのは麻美だった。

「坂上さん?」

恐る恐ると言った感じで聞く深岬に、雪子は苦笑を浮かべた。

「坂上だけじゃなくてリョウちゃんもなんだかんだで不機嫌だし…。坂上は飲み会とかでキレてるから予想はつくだろうけど、それでさ…坂上なんかもう練習来ないやつは登録から消すとか息巻いちゃって」
「それで?」
「そんな横暴なこといくらウチラだってやるのはまずいじゃん。それでとりあえず1年生にどういうつもりなのか話を聞こうという方向になってるんだよね」
「そうなんだ?話ってそれだけ?」
「いやね。話し合いするとなった時に練習に参加してるあんたや望は完全に対象から外れるわけじゃん?だから、出ても出なくても…」
「出るよ」
「え?」

雪子の言葉を遮って、出るという言葉を口にした深岬に雪子は、きょとんとした顔で深岬を見返した。

「だって私自身は違ったとしても同じ学年のことだもん。出ないっていうのは、変だと思う。望はどうかはわからないけど、少なくとも私は、出る。それって決定事項?」
「ううん。話し合ってる途中」
「そ。なら、もし決まったら私にも連絡頂戴」
「分かった」





数日後、雪子の言葉通り深岬に連絡が入ってきた。
指定された時間に体育館に入ると既に集まっていた同じ学年の部員がいて、一瞬ここはいつも練習している体育館かと違和感を感じる。
夕方で、他の部活も練習を終えて引き上げた後なのか他の部活の人間はいなかった。
言葉少なに集まる同じ学年の部員は、どんよりとした雰囲気をかもし出していた。
メールには、きちんと明言はされてはいなかったものの、雰囲気から肌で感じるのだろう。
それは、2年生が表れるとさらに加速していった。
難しく険しい顔をした2年生と不安な表情を隠そうともしない1年生。
一つの大きな輪を作って座っていたのだが、2年生はお互いに顔を合わせることなく顔を俯けたまま黙ったまま。
1年生は、何も言い出さない上級生に言い様の知れない不安を感じて互いに目配せしあう。
それがしばらく続いた後、最初に口火を切ったのは、主将の役職につく小島だった。

「今日集まってもらったのは別に怒るために呼び出したのではなくて…」

いつもより重々しい小島の口調に1年生の体に緊張が走る。
小島の言葉を皮切りにして、次々に2年生が口を開く。

「人それぞれ思ってることがあったらそれを聞きたいと思って…」
「俺達の学年のやり方が気に食わないんだったら言ってもらってもいいし」
「辞めたいっていうならこの場で言って貰ってもいいし、言い難いなら、後ででもウチラの学年の誰か1人にでも言ってもらったらいいから」
「一番困るのは、中途半端な態度なんだよ…」

声を荒げて言う者は誰もいない。
だから余計にクルものがある。
これなら、ガツンと怒られるほうがまだ後味が良かったかもしれないのでは、と思う深岬。
静かに訴えるように告げられる言葉に居心地の悪さすら感じる。

2年生の言葉を聞きながら、深岬は、罪悪感めいたものを感じていた。
胸を張って、練習に参加していたとは言いにくい。
自分が練習に来ていたのは、一重に坂上の存在が大きい。
麻美のように、部以外のところで繋がっていられるほど親しくもない。
この場だけが、深岬と坂上を繋ぐものだった。
もし、坂上がいなければ自分もここに呼び出された練習に来ない同学年の部員と一緒だったと思った。
好きな相手に認められたい、近くにいたい一身で参加している自分の動機は不純すぎる…。
2年生の言葉をぼんやりと聞きながら深岬は、自分は一体何やってるんだろうと考えていた。



誰の言葉だったかもう定かではないが―。

「幹部の学年が全員来てるわけでもないから、そこまで強くは言わないけどさ、来年新しく1年生が入ってきたときのことを考えた時に今の1年生の部活に対する姿勢は、その子達にも悪影響を与える可能性があるんだってこと分かって。部に対する姿勢は人それぞれだけど、後に引くようなことはしないで欲しい」

そう言われて、深岬は少なからず傷ついた。
まるで、お前達には期待していない。だから、他の人間には迷惑をかけるなと言われているように感じた…。
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