まさにそれは、阿鼻叫喚。地獄絵図。
そんな言葉がぴったりと当てはまるような光景だった。
明らかに引いている深岬をお置いて、騒ぐ姿はまさに本当に自分が口実に過ぎないと実感せざるを得ない。
「びっくりした?」
と声をかけてきたのは、深岬が記憶している範囲でこの集団の長である部長の男だった。
そんな彼もすっかり顔は真っ赤になって出来上がっている。
「ええ…まぁ」
「まぁ、俺も最初の時はびっくりしたんだよね~。っつーかここまでひどくなったの坂上や小島達の代が入ってきてからだよ」
それは、男の嘆きのようなものも含まれていたかもしれない。
そう言われて集団の中心にいる坂上、小島そして雪子の姿を見る。
騒ぎながら飲む坂上。
そんな坂上に飲まされる小島、そして雪子を煽る小島。
乗せられるままに飲む雪子。
周りからの声もあり酒に手をつける3人。周りを巻き添えにする3人。
どちらにせよ中心にいるのは、坂上、小島、雪子の3人だった。
友人の初めて見せる意外な姿に驚かずにはいられない。
横から話しかけてくる男に適当に相槌を打ちながら、3人を見ているとふと雪子と視線が合う。
ヤバイと思った時には遅かった。
雪子が駆け寄ってくると深岬の腕を掴んで輪の中央に引っ張っていく。
その後は、筆舌に尽くし難い光景しか残らなかった。
翌朝、雪子の部屋で目の覚めた深岬は自分の身を襲う想像を絶する吐き気と頭をかなづちで殴られたことなどないが、まるで殴られたようにがんがんと響く頭。
少し動かすだけで痛みを訴える。
まさに生ける屍。
「うぅ…」
「大丈夫かぁ?」
のたうち回りながら声を上げた声に返ってきたのは、低い男の声。
ばっと目を見開いて体を起こした深岬がそこに見たのは坂上で、にっと笑った顔を深岬に見せるのだが、深岬の頭は急に動いたことにガンガンと響く。
「あ…いたた」
「二日酔いだなぁ。こりゃ。雪子ー。深岬ちゃん目ぇ覚めたみたいだぞ」
「あ、起きた?」
坂上の声に、雪子が深岬の前に姿を見せる。
明らかに昨夜は、深岬より大量に酒を飲んでいた筈なのに全く二日酔いのふの字も見せることなくすっきりとした顔で現れる雪子によりいっそう深岬はげんなりとした表情を見せる。
おかしいだろ…と。
「水いる?」
という問いに、こくこくと頭を振ると雪子が水を差し出す。
それを黙ったまま、飲むとごんっと強い力でコップと叩きつけるように置くとじろりと雪子を見る。
彼女は楽しそうな顔をして深岬を見返す。
「おっかしいでしょ…。何アレ」
「ほれみろ。雪子、やりすぎだろ」
「あはは~ごめんねぇ」
「ごめんねじゃない!」
「まぁまぁ、深岬ちゃん。まだ寝てるヤツいるし」
「へ?」
声を荒げる深岬を落ち着かせるように坂上が雪子のベッドの上を示す。
深岬がふとそちらに向けると雪子のベッドの上を占領する大きな男を見て深岬は目を見開く。
「小島さん?」
坂上もそうだが、何故小島も雪子の家で寝ているのか。
深岬はいくら思い出そうとしても思い出せない。
「何でですか?」
痛む頭を抑えながら坂上に聞くと彼は、子供のような顔で笑う。
「寝ちゃった深岬ちゃん連れてきたの俺達だもん」
寝ていたのだから彼らが何故ここにいるのか覚えていなくて当然だった。
だが、聞かなければ良かったと思った深岬だった。
はぁああと大きく溜息をつく。
「ご迷惑おかけしました」
「リョウちゃんと2人で捕らえられた宇宙人みたいにして運んだんだぜ」
その姿を想像しては、何たる間抜けな姿かと少し後悔した。
自分から話を逸らそうとして雪子のベッドを占領している小島を見た。
「何で、小島さんが雪子のベッドを占領してるんですか?」
何気なく疑問を口にした深岬に坂上は悪がきのような笑みを浮かべて深岬を手招きをする。
首を傾げつつも坂上に近づくと声の量を下げて小さな声で雪子には聞こえないように言う。
「リョウちゃんと雪子いっつも一緒に寝るから」
と聞いて思わず深岬の顔が赤くなる。
この瞬間だけは、二日酔いの頭痛もむかむかも吹き飛ぶ。
歯をむき出しにして笑う坂上の顔を間近でまじまじと見る。
「2人は…?」
付き合っているのかという深岬の問いを皆まで言わずとも分かったのか坂上は首を振る。
首を振った坂上をまじまじと見返す。
一緒のベッドで寝ているということは、そうではないのかと深岬には不思議ではならない。
「雪子の一方通行」
「なるほど…」
「何が、なるほどよ!坂上!あんたもねぇ、深岬に余計なこと教えるんじゃないの!」
「余計なことじゃないだろ?知っておかなきゃな。なぁ?」
「深岬も頷くんじゃないの!」
いつの間にか2人の傍に来ていた雪子が、小さな声で話を続ける深岬と坂上に雪子の大きな声が響く。
それは、深岬の二日酔いにはかなり効く声で、深岬は顔を顰めた。
雪子の怒声にも全く悪びれる様子のない坂上が、深岬に同意を求める。思わず頷いた深岬に雪子の怒声がもう一度響く。
さすがにその大きな声は、眠っていた小島を起こしたのか深岬の起きた時同様変なうめき声を上げてのたうちまわる小島に3人の視線が同時に向く。
一番、早く動いたのは雪子で、いそいそとベッドサイドに近づくと小島に声をかけている。
「リョウちゃん。起きた?」
「ユキ……。水…」
寝ぼけた小島の言葉に雪子が彼のために水をとりにいく。
その姿は、坂上から教えられるまでもなく深岬に雪子が小島を好きだと教えている。そして、深岬は自分が最初に小島と雪子のやり取りを見た時に思った、考えが間違ってなかったことを知る。
雪子の動きを目で追いかけた後、坂上と顔を見合わせてお互いにどちらからともなく噴き出した。
声を上げて笑い出した深岬と坂上に気にすることもなく、甲斐甲斐しく小島の世話を焼く。
最初に、深岬と坂上の様子に気がついたのは、小島のほうだった。
「2人ともどうしたの?」
「何でもないって」
小島の不審な顔すらおかしく見えて、深岬は笑い続け、坂上が代わりに答える。
坂上の答えにも首をかしげながら、小島は大きく伸びをすると「腹減ったなぁ」と何気なく言う。
そんな小島を見て、とめどなく自由な人なのかもしれないと深岬は小島のことを思った。
そして、そんな小島が好きな雪子。
小島と雪子の関係を一番傍で見て、楽しんでいるのが自分の横で笑う坂上なのだと3人の関係を理解した深岬だった。
「どっか食べに行く?」
「深岬ちゃん。授業何コマから?」
「あ、今日は昼からです」
小島の希望を叶えるために、小島に聞き返す雪子。
放っておけば置いていかれそうな深岬に声をかけてくれるのは、坂上で。
深岬の中で、どこか人を揶揄して楽しむところがある男が一番周囲に目を配れるのではないかと思った。
深岬の答えに頷くと「よしっ」と大きな声を上げて立ち上がる。
「飯行くぞー。ファミレスでいっか?」
「いこいこ」
と朝のファミレスに向かって雪子の家を出た4人だった。
更新日記と小説(18禁)とたまに嘆き.
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