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更新日記と小説(18禁)とたまに嘆き. 嫌いな方・興味のない方・間違っちゃった方はバックバック

2026

0322
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2007

0815
翌日、その日から始まった授業の中から、履修しようと考えていたものだけを受けると深岬は必要な道具を持って小島から教えられた体育館に来ていた。
昨日の部活の勧誘会で見かけた部員の姿が何人か見られる。
こういう時ほど入りにくい場所はないと思えるのは何故か―。
恐る恐る体育館の入り口から中を覗き込む、深岬の姿はどこか変質者を彷彿とさせる。

「深岬」

と後ろから声をかけられ思わず体をびくりと揺らしてしまったのもきっとその所為かもしれない。
驚いた所為もあってドキドキという胸を押さえながら後ろを振り返ると嬉しそうに笑う雪子の姿がある。
雪子は体育館の入り口で靴を脱いで、急いで駆け上がってくると深岬に近づいてきて、深岬の手を引いたまま中へと進んでいく。
深岬よりも体つきは小さいはずの雪子の強い力に引っ張られ深岬は自分と雪子に集まる視線に気付いていたが、掴まれた腕は離れることもなく、そのまま雪子の後を追うような形で彼女を追いかけた。

「あ、やっぱり来た」

と少し眦を下げたのは既に来ていた小島だった。
深岬はちょこんと頭を下げる。
そんな深岬の代わりに胸を張って答えるのが雪子だった。

「あったり前でしょ?」
「雪子は関係ねぇだろ。深岬ちゃんって経験者だったんだね?言ってくれれば良かったのに」

そう雪子に横槍を入れてきたのは、昨日も見た坂上という男だった。
身長は、深岬よりも若干高い程度で、どこか軟派な雰囲気のある男だった。
何も聞いてこなかったのはそっちだろと思いつつも、深岬は年長者相手に食ってかかることもできずに苦笑を顔に浮かべた。

「女の子に夢中で聞いてこなかったのはそっちでしょうが」
「可愛い女の子に声をかけないなんて、男がすたるでしょ?なぁリョウちゃん?」

雪子の怒ったような口調にも悪びれることなく小島に同意を求める坂上に雪子がさらに金きり声をあげたのは、間違いない。

「リョウちゃんがそんなことするわけないでしょ!」
「わっかんねぇかなぁ?」
「あっちに更衣室あるから着替えておいで」

怒り出した雪子と彼女をおちょくるように少し小バカにしたような坂上の言い合いはいつものことなのか、小島は少し離れた位置にある更衣室を示す。
言われるままに深岬が更衣室に向かい着替えを済ませて戻ってくると言い合いも収まっていた。
その後は、普通に練習に参加する深岬だったが、一年以上、高校の受験期間も含めると2年近く運動から遠ざかっていたために思うように動かない体をもてあましていた。
普通に練習メニューをこなしていく彼らもそんな深岬の様子に覚えがあるのか、あまり無理はするなというように声をかけてくれる。
時間が経つと5コマ組みと呼ばれる5コマ目の授業を終えてから練習に参加する者達も集まり、練習を続ける。
最後に、全体で集まったところで各人自己紹介をしてその日は終わった。
とは言っても、一気に名前を言われても深岬にそれを処理できるだけの能力はなく、なんとなく顔はつかめたものの名前は一致しなかった。

「深岬ー。ご飯行くでしょ?」

練習後に着替えていると雪子が声をかけてくる。
それに深岬は、顔を上げて、時計を確認する。
微妙な時間だった。
その時点で7時半。こちらを9時に出れたとしても家に帰りつくのは11時を過ぎる。
雪子が一年で下宿に切り替えたのは、この所為かと納得せざるを得ない。

「んー。帰るの遅くなるから…」
「なぁに言ってんの。1年の間はご飯おごられっぱなしよ~。行かなきゃ損でしょ」

それにうっと固まる深岬。
現金な話しだが、それは非情に魅力的だった。
がっしりと肩に雪子の腕を回されて、何だか嫌な予感がする深岬。

「それに、あんた忘れてないでしょうね?今日は、あんたの新歓」
「だから…その新歓って何よ?」

新歓、新歓と男達が言うのを聞いた深岬だったが、実質それが何をするものなのかは、深岬にはわからない。
雪子に聞くと妙に納得したように「あ、そっか」と頷いている。
肩に回っていた雪子の腕が外れたのを感じて、深岬はその隙に着替えを素早くすませてしまう。

「新入生歓迎会」
「あっそ。私一人しか新入生いないじゃん」
「あー、ウチの部、新しい子がくるたんびにやってんのよねー。ウチらん時もやってたよ。最初はびっくりしたけどねー」

とけたけた笑う他の女子部員を不思議そうな顔で見る深岬。
何じゃそりゃ―と。

「帰れなくなったら、雪子んち止まってけばいいよ~」
「ってか、いつも最後は雪子の家だし」

なんて軽く言いながら、先に着替え終わった女子部員達が出て行く。
残されたのは、まだジャージのままの雪子と着替えを片付けている深岬だけになった。

「何でそんなにやってるわけ?」
「んー?唯、口実にして飲みたいだけだよ」
「はぁ?」
「まぁ見てれば分かるって」

雪子の言葉に自分は完全な巻き添えじゃないかと一抹の不安を覚えつつ、しかし、仮にも主役となる人間を帰してくれる彼らではなく深岬は結局、母親に今日は泊まってくと入学して早3日目にしてそんな連絡をする羽目になった。
一体、何してるんだかと思った深岬だったが、まいっかと深く考えないようにした。
食事に行った後、一度解散して、家に帰る人間は家に帰り、もう一度集合となった。
練習に参加していたほとんどの者が、下宿している者だった。
深岬は当然雪子の家に連れていかれる。

「あー荷物適当においとけばいいから」

と言って案内されるままに深岬は入るが、まず玄関先にある台所に目が行く。
綺麗で問題はないのだが、そこに並んだ空の酒瓶や空き缶の数々に思わず引きつった笑みを浮かべる。
入ってこない深岬を不審に思って雪子が深岬を振り返る。

「どうかした?」
「な…何コレ…」
「あー酒瓶」
「見たらわかるわよ。何この量」
「この前の飲み会で出たゴミなんだけど、ゴミ捨てまだだから」

何てことないように言う雪子に思わず深岬は乾いた笑いを零した。
不思議そうな顔をして見てくる雪子に深岬は心の中でおかしいでしょ…、これ一回の量じゃないってばと言わずにはいられなかった。

「荷物置いたら行こうか?」
「あ、うん」

言われるままについていく深岬。
もう一度、玄関先に大量におかれた空き瓶、空き缶を見て寒気を覚える深岬だった。
これから起こることの恐ろしさを予感して――。
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