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更新日記と小説(18禁)とたまに嘆き. 嫌いな方・興味のない方・間違っちゃった方はバックバック

2026

0322
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2007

0812
自宅のある県から、隣の県にある大学まで2時間近く電車に揺られる。
これから4年間、毎日この時間が続くのかと思うと進藤 深岬の気分は少しばかり憂鬱になる。
眠くなる目を擦りながら、大学の最寄り駅で降りて大学に向かう。
周りを見渡せば、自分と同じようにスーツ姿の新入生と思しき者達が複数大学に向かって歩いている。
流れに逆らうことなく深岬は、大学までの道のりを歩いた。
その日は、大学の入学式の日だった。
まるで、あわせたかのように大学内の敷地に入れば桜の花が満開で咲き乱れていた。
入学式の前に学科でのガイダンスがあったので、指定された教室に向かう。
この日、深岬は大学の工学部の電気工学科に入学した。
周囲を見回すと一人で目的の場所に向かっている者もいれば、親子連れもいたり、何が愉しいのだろうかきゃあきゃあと愉しそうな声をあげて友人達と数人で向かう者達も見える。
スーツにリュックという一風おかしな格好の者も居れば、明らかに高校卒業したばっかりじゃないだろうと疑いたくなる老け込んだ者もいる。

そんな中を深岬は一人で歩いていた。
パンツスーツに身を包んで、いつもはスニーカーしか履かないというのに低めのヒールを履いて歩く。
なれないヒールの靴を窮屈に感じ、バックストラップにすれる足はこの時点でもうすでに悲鳴をあげていた。
浪人した末に合格した大学。
浪人した時点で、深岬は両親、特に家計を預かる母親から自宅から通える国立しかダメだと言われて、条件に合うこの大学を選んだ。
勿論、二時間近くかかるとは言え、自宅から通えない距離ではないから一人暮らしなんてさせてもらえない。
実を言うと自宅のある県内には、国立大学があったのだが、とても自分のレベルでは合格なんて無理だった。結果、遠くても確実に合格できるところを選択したのだ。
とは言っても、一浪した末の“確実”だったのだが―。

電気工学科の指定された教室に入ると学生証を渡されて時間がくるまで座って待つように言われる。
既に何人か集まってきているクラスメートとなる者達の姿を観察する。
覚悟はしていたが、見事に男ばかりでげんなりしてくる。
工学部に在籍すると逆ハーレムだとか言って、文系の女の子達に羨ましがられたりすることもあるが、決してそんないいものではない。
これが見目のいい男達に囲まれるならば、彼女達の言うとおりかもしれないが、事実は時に残酷だ。
そんな風に思える男子など、ほんの一握り。
100人いたとして、そんな人間10人いれば良い程度だ。
しかも、男達は、小さくて可愛い―少し頼りないくらいの女の子が好きだったりするから、ずばずば物を言ってしまい、標準より身長も少し高くて決して可愛い部類には入らない自分など眼中にないのだ。
寄ってくるのは、明らかに飢えてますというような男。
勉学―特に、単位取得のために、学科内の友人は必須だ。
だが、そんなものできるのかと思いながら深岬はぼんやりと考えながら窓際の後ろの席で窓から見えるスーツ姿の新入生を観察していた。

「よろしく」

と声を掛けられて深岬は、ふと顔をそちらに向ける。
声を掛けられて無視が出来るほど、非常識な人間でもなく、明らかに自分に掛けられた声だと分かっていたからだ。
振り返った深岬の目に映ったのは、まさに男の理想を描いたような女で。
にっこりと笑みを浮かべながら、名前を告げる彼女の顔を可愛い子だなぁと思いながら見ていた。
彼女の名は、鈴木 涼子。
深岬のクラスメートで、深岬以外の唯一の女子生徒だった。
こうなれば、2人の距離が近くなるのは当然のことで、学科で一緒にいるのは当然のことだった。
深岬も名前を告げたりして、簡単な自己紹介をしている内に、やがて担任と呼んで好いものかどうなのかは定かではないが、そんな感じの教授が一人入ってきた長々と話を続けた後、入学式の会場に移動することになった。

涼子と2人で並んで向かう間にも、深岬は自分達の歩く道の横いっぱいに広がるようにして並んだ部員勧誘を目的とする上級生達の姿に少々度肝を抜かれてしまう。
高校にもこの時期には、部員勧誘が盛んだった。かくいう深岬も中・高の2、3年の頃には勧誘活動に参加したりもした。
けれどもその比ではないのだ。
皆一様に、どの部活か分かるような格好をして、ビラを配る。
一度、ビラを手にしたが最後、次々にビラが乗せられていくものだからキリがない。
心得ている者は、最初っからポケットに手を入れたり、決して渡すスキを与えない。
入学式会場の椅子に座る頃には、新入生達は既に山のようなビラを手にしているかそれか全く何も持っていないかのどちらかに別れる。
深岬も涼子も圧倒されてしまい気付けば山のようなビラを手にしていた。
同じものも数枚ある。
困ったようにお互いの顔を見合わせて、苦笑を浮かべる他なかった。
また、帰りも同じだった。
往復して、邪魔になったビラをそこら辺に捨てて帰るわけにも行かずに深岬は、ご丁寧にも全て持ち帰った。
一人暮らしをしているという涼子と途中まで一緒に帰り、また2時間近く電車に揺られて帰る。
これからの毎日の繰り返しの始まりだった。

家に帰るころには、疲れ、履きなれない靴を履いた所為でできた靴擦れが悪化していてその痛みに顔を顰めずにはいられなかった。

「ただいま」
「あら、お帰り。どうしたの?難しい顔をして」
「靴擦れが痛いだけ」
「普段、履きなれてないからかしら」
「多分ね」

と適当な会話をしながら家の中に入るとそこら辺にカバンを放り投げた。
その拍子に、渡されたビラがばらばらっと床に散らばる。
チッと舌打ちしながら深岬は、散らばったものをかき集めながらそのビラに目を落とす。

「何それ?」

母親が興味津々な顔をしながら覗きこんでくる。

「何でもない。部活の勧誘」
「あ、そ。何かやるの?」
「…わかんない」

とあやふやな返事を返しながら、深岬はぺらぺらとそのビラを何枚か見てみる。
母親は、もう既に興味を逸していたのか、台所に入っていくと夕食の準備を始めていた。
学科では、あまり友達は期待できなさそうだった。
高校、浪人時代と勉強漬けだったこともあり、大学に入ったら目一杯遊んで、楽しい4年間にしたいと心に決めていた。
もちろん、彼氏も欲しい。
となると、手っ取り早く交友関係を広げるなら部活・サークルだろう。
そう思いながら、ビラに目を落としていた深岬だった。
彼女の目にふと止まったのが、バドミントンの部活のビラだった。
中高と惰性で続けて、浪人時代は離れてたスポーツ。
1年間何も運動をしてこなかった所為か、体はたるんでいる。
部活で汗を流せば当然、体は引き締まるし、友達も増える。
6年間続けていただけに初心者というわけでもない。
道具も探せば部屋の押入れのどこかには、あるだろう。
ブランクがあるとは言っても勘もすぐに取り戻せるはずだ。自分にとって部活として選択するにはうってつけのスポーツではないだろうか。
どんな部活かは、わからないけどいいだろうと思ってバドミントン部のビラだけを抜き取ると他は全てゴミ箱に捨てた。

明日も一応学校に行くことになっていた。
今日は、ビラを配っていただけだったが、明日は各部活の紹介があるようだった。
何人かの部員がそこには、いるはずだった。一度見てみようと思いながら、2階にある自分の部屋へと駆け上がる。
勉強よりも何よりも、部活・遊び・恋に期待を膨らませていた深岬だった。


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